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【店長の今日のエッセイ】平日の朝いちばんに、不意打ちすぎて泣いた日のこと。
店長 佐藤
▲梅雨のなか休みで晴れたある日に役員会議を散歩しながらしました。たまにはいいかも?
平日の朝いちばんに、泣いた日のこと。
「今までよくがんばってきたね」。
人生のなかで自分のことを見てくれていた誰かから、こんな言葉を掛けてもらう回数って一体どのくらいあるのだろう。
例えば、子どもの頃にはそれが節目のようなタイミングでわりと定期的にあったように思う。
習いごとで練習を頑張って発表会を無事に成功させられたとき。
小学校を6年間通い終えた卒業式の日。
どんな結果だろうと受験勉強が終わって進路が決まったとき。
「今までよくがんばったね」「よくやったよ」「おつかれさま」。自然と周りからそんな言葉をたくさん掛けてもらった記憶が蘇る。
社会に出て、仕事に限らずプライベートでも明確な責任を負う人生になると徐々に分かりやすい「区切り」の機会が減ってくる。それは責任を全うする「区切り」が訪れるスパンが子どもの頃よりもずっとずっと長いからなんじゃないかと思う。
さらに言えば、自分のこれまでを振り返ってみても、その最中に「今までよくがんばってきたね」という言葉を掛けてもらいたいと願うような余裕すらなかったように思う。
その日は突然、訪れた。
ある朝いつものように会社に行くと、朝一番はなんのアポイントも入ってなかったはずが「◎◎さんと名乗られる方がいらっしゃってます。佐藤さんと青木さん(私の兄でクラシコムの代表)にお会いしたいとのことで」とスタッフが席に呼びに来た。
わたしと兄はふたりで顔を見合わせて「はて?◎◎さん、来社の約束も入ってないし。どなただろう??あ、あの方かも、この方かも」とふたりで思案した。
オフィスの玄関に出て行く。ちょっとだけ、おそるおそる……。
そこに立っていた方と顔を合わせた瞬間「おおお!!!」となり、その数秒後にはその場で抱き合うことになる。
兄とわたし、ふたりだけで会社を創業し「北欧、暮らしの道具店」という店をオープンしてまだ間もなかった頃に、当時のオフィスのすぐ近所にあったご飯屋さんのオーナーの女性だったのだ。
兄妹ふたりからスタートして、アルバイトスタッフが2人仲間入りし、そのあと2名の社員を雇用するようになるまでの最初の数年間。
私たち兄妹はほぼ毎日そのご飯屋さんにお昼を食べに行っていたし、当時のスタッフも時折行っていたんじゃないかと思う。
そのオーナーの女性は私たちの母親と同世代で、私たち兄妹とまったく同じ年齢の娘さんが二人いらっしゃることもあり、当時本当によくしていただいた。
そんな方と、なんと、今のクラシコムのオフィスの玄関先で、おおよそ9年ぶりの再会ということになる。本当に思いがけない出来事だった。
その日は突然のことでもあり、ゆっくり話す時間がほとんどなかったのだけれど、たしか20分くらいだったかな、兄とわたし、その女性の3人でオフィスのカフェスペースでお互いの近況報告を手短かにすることに。
彼女はご飯屋さんを閉めたあと、単身海外にわたって、あたらしいチャレンジをしてあたらしい仕事に就き活躍されているらしい。親子ほどに年下の仕事仲間と毎日喧々諤々議論しながらも、あたらしい使命感に出会って生き生きとされている様子がぐんぐん伝わってきた。
人生の先をゆく先輩として、なんて希望のある話だろうか。と、しみじみ思う。
彼女は最後にわたしをまっすぐに見て、こんな言葉を掛けてくれた。
「お兄ちゃんとふたりで、ここまでよくがんばってきたね」
「突然来るのが失礼なのは承知だったのだけれど、一時帰国した機会に、どうしてもお兄ちゃんとあなたにひと言おめでとうが言いたかったのよ」と。
彼女が言ってくれている「おめでとう」は会社や店を続けてこられたことに対してだと、すぐに分かった。
兄は社長なんて言ってられなくて出荷や入庫作業から経理から店番からなんでもやっていた頃。わたしも店長とは名乗っていたものの仕入れから撮影からお客様対応から梱包やラッピングまでやっていた頃を知っている人だから、あの状態から「続けてこられた」こと、あの地点からクラシコムに仲間入りしてくれるスタッフが増えて色々な取り組みができるようになったことを、どこか親のような気持ちで喜んでくれているように見えた。
「お兄ちゃんとふたりで、ここまでよくがんばってきたね」と言われたとき、あまりにその言葉が不意打ちで、期待したこともなかった言葉だっただけに、わたしは涙があふれてきてしまいティッシュで目頭をおさえた。
そして、決してふたりでここまでがんばってきたのではないからこそ涙があふれてしまったと思う。
すでに退職をしたスタッフも含めて一緒に店づくりに励んでくれるスタッフ、「北欧、暮らしの道具店」を好きでいてくださるたくさんのお客さま、取引先や外部から支援してくださる方々。もちろん、家族もそうだ。
こんなことを書くとホント綺麗ごとみたいな感じになっちゃいそうだが、彼女に「よくがんばってきたね」と言ってもらったことでそういうもろもろが一瞬のうちにわたしの頭と心のなかでグルグルと駆け巡ったのだった。
なにが終わったわけでも、会社がひと区切りついている段階にいるわけでもないが、それでも彼女が掛けてくれたたったひと言がわたしには予期していなかった「区切り」となった。13年間、走ってきてよかったなと純粋に嬉しかったから。
大人になってからの「区切り」は、こんなふうに本人にとっては不意なタイミングで訪れるものなのかもしれない。
人生のある地点で関わりをもって、そのあと疎遠になってしまう人がいる。
だけれど、またある地点で再び関わりを持てる日がきたら、その人だから掛けられる言葉があることを知った。
会社の上司でもない、なにかと心配が先に立ってしまう親でもない、その独特の関わり方と記憶を共有している人だからこそ掛けられると沁み入る言葉が。
わたしもこの先の人生で、彼女の側の立場になることがあったなら。「今までよくがんばってきたね」と優しくまっすぐに声を掛けられる人になりたい。
▼サイトに店長コラムを書いたのが4月以来となってしまいました。インスタグラムのほうは日々更新中です。フォローしていただけたら嬉しいです。
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