【おしゃれな人】第3話:何歳になってもおしゃれが好き。だから迷うこともある。(「mon Sakata」店主・坂田敏子さん)

編集スタッフ 奥村

東京・目白の洋服店「mon Sakata(モン サカタ)」店主の坂田敏子(さかた としこ)さん。

一見おしゃれな彼女ですが、装いのモットーは「目立たないこと」。それでもどこか垢抜けて見える秘けつが知りたいと、お話を聞きに行きました。

定番の服を新鮮に着るコツを伺った第2話に続き、今回はアクセサリや小物。シンプルな装いを引き立たせる、お気に入りのアイテムを拝見します。

 

身につけても疲れない、アクセサリ選び

▲(左から)『mon Sakata』のネックレス(ヒモコ)、作家・ますみえりこさんのネックレス、作家・itoatsukoさんの指輪とピアス(安全ピンを通して、ブローチにリメイク)

「最近、あまりアクセサリはしなくなったの」という坂田さん。年齢を重ねるにつれ、少しずつアイテム選びにも変化が出てきたといいます。

坂田さん:
「ジュエリーはほとんどつけません。ネックレスは好きだけれど、あまり重たいものは肩が凝るようになってしまって。

だから最近は、糸や布素材の軽いネックレスを選ぶようになりました。これならつけていても肩がこらないですし、二連にしてみたり、腕に巻けばブレスレット代わりにもできて、薄手のトップスとも相性がいいんです」

 

軽やかでも存在感のある、ブローチや巻物をアクセントに

▲左上2つは岩田美智子さんのマグネット(ピンをつけてブローチにリメイク)、中央左は佐藤千香子さん、右は小関郁子さん、左下は吉沢小枝さん、右下は坂野友紀さん

中でも特に愛用しているのはブローチ。軽やかで体への負担もなく、つける場所を変えれば日によっていろいろな楽しみ方ができるからだそう。

一見落ち着いた色合いでも、マスキングテープのあしらわれたものや、糸やレースのモチーフなど、ふと目に止まる個性的なデザインが特徴。

さらに、マグネットやピアスなど元々は別の用途だったものも、ピンをつけてブローチにリメイクするなど、坂田さんらしい楽しみ方もポイントです」

▲「mon Sakata」オリジナルのスヌードは、麻とシルクのタック編みで一年中つけやすい素材感

ストールやスヌードを首回りに巻くのも、坂田さんの定番。「mon Sakata」でもオリジナルの巻物をいくつも揃えています。

どれもごく細い糸で編まれているので、冬はもちろん夏の首元にも重たくなくつけられるから、ネックレス代わりのアクセントとして重宝するそう。

洋服がネイビーなど暗い色の時は、イエローのスヌードを巻いたりと、差し色アイテムとしても活躍します。

 

荷物をたくさん持ち歩いても、疲れないバッグに

▲デザインがお気に入りの黒レザーバッグ(左)と、最近使っているmon Sakataの布バッグ2点(中、右)

荷物は多め派の坂田さん。昔から大きなトートバッグで出かけることが多かったそう。

坂田さん:
普段は黒いレザーバッグを愛用しています。一見シンプルだけどアシンメトリなデザインで、肩に掛けたときの形がおもしろくて気に入っているの。

でも、最近はレザーの重さが負担になってきたので、軽やかな布バッグをサブとして持ち歩くように。(写真真ん中の)トートバッグは、知人の画家に描いてもらった図柄をテキスタイルにしたものです」

坂田さん:
「リバーシブルで、柄のある面と裏地の白い面、どちらでも使えるからいろんな格好に合わせられるの。落ち着いた色の服を着ていても、軽やかに見えるので気に入っています。

これならたくさん持ち歩いていても疲れないから、最近はコットントートも愛用するようになりました」

 

歳を重ねてからも、スニーカーを履きこなすコツ

▲左上から時計回りに『ムーンスター』、夫の麻素材のイタリア製スニーカー、靴職人をめざしていた友人が手がけた革のスリッポン、ベルギーブランドの革のスニーカー

坂田さん:
「動きやすさが大事なので、靴は昔からローヒールです。最近は手持ちの服にも合わせやすいデザインのものが増えたから、スニーカーをよく履くようになりました。

『ムーンスター』のスニーカーは、元は真っ白だったけれど、秋になって足元を暗くしたくなったから、黒い染料で染めてみたんです。ラフな格好には、この方がなじむ気がしています。

ベルギーのスニーカーは、ひもの結び方を交差させずに平行にしてみました。こうやって自分にとって履きやすいデザインに変えたり、自分流に楽しむのが好きです」

 

いまでも毎朝、着ていくものに悩んでいます

自分のスタイルを持ちながら、年齢の変化に合わせて、それを更新させていく坂田さん。そのセンスには迷いがないように感じられます。

けれど、「実はいつも迷っている」という彼女。撮影中も、これでいいかしら。こっちの方が合うかも?と何度も着替え、鏡の前で悩む姿が印象的でした。

坂田さん:
「今だって、毎朝着ていくものに迷いますよ。出掛ける時間が迫っているのに決まらなくて、諦めて昨日と同じ服を着ていくことだってあるの。これでいいって気持ちが落ち着く格好になれたら、ようやくさあお出かけ、です。

服のデザインもそうです。この仕事を初めて40年以上経つけれど、未だに知らないことがたくさんあるんだなって気づくばかり。行き止まりはなくて、だから楽しくて、続けてこられたのかもしれません」

取材の終盤、店頭に並ぶカラフルなニットを眺めながら「いつか、あれの赤色を買おうと思っているんです。でも、一枚で着る勇気がまだ出なくて」とぽつりとこぼした坂田さん。

目立たないのが好きだけれど、赤いニットも着てみたい。憧れのひとにも、そのどちらの感情もあると知ったら、なんだか少しほっとしました。

きっと誰にとっても、おしゃれって「ありのまま」と「背伸び」の間を行ったり来たりすること。

そのはざまで悩んだ分だけ、自分に合う服がわかってきて、それが “センス” になるのかもしれません。

だからわたしも、シンプルな服が好きな自分にだって自信をもとう。「mon Sakata」のドアを開けて外に出ながら、少しだけ清々しい気分になっていることに気づきました。

(おわり)

【写真】川原崎宣喜


もくじ

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坂田 敏子

1947年生まれ。出産後の子ども服作りをきっかけに、1977年、東京・目白に「mon Sakata」(モンサカタ)をオープン。自身がデザインした服を販売。全国のギャラリーにて展示会も行っている。夫は「古道具坂田」の坂田和實さん。http://monsakata.com

 


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