【食器棚ものがたり】:昭和モダンな2LDK、古今東西の器を見せる収納で(vol.7 福本敦子さん・BENさん)

【食器棚ものがたり】:昭和モダンな2LDK、古今東西の器を見せる収納で(vol.7 福本敦子さん・BENさん)

編集スタッフ 津田

きょうは、どの器で食べようか? 食器棚を覗いて、器を選ぶのは、愉しい時間。

この読み物は、食器棚と器を訪ね歩く連載です。どんな家にもあるけど、どこにも同じものはない。そんな食器棚と器と収納を見せてもらいながら、おしゃべりしたことを、小さなコラムにしてお届けします。

今回は、美容コラムニストの福本敦子(ふくもと・あつこ)さんと、パートナーのBEN(ベン)さんにお会いしてきました。


昭和モダンな築41年の集合住宅で二人暮らし

都心へアクセスのいい静かな住宅街。築41年の昭和モダンな集合住宅の1階に、二人が一緒に暮らし始めたのは2024年末のこと。

市松模様の床、L字型のキッチン、美しい蔦の塀。長い間、丁寧に住まれてきたことがわかる家。おたがい一人暮らしの家を出て、ここで二人暮らしをスタートさせました。

家探しのことを尋ねると、内見したのは一軒のみで、一歩足を踏み入れた瞬間、敦子さんは「ここだ」と直感したと言います。

敦子さん:
「私はわりと即決派で、あれこれ比較するよりも、直感で選ぶことが多いんです。熊が、じーっと狙いを定めて、泳いでる鮭をバシッと狩るような感じ(笑)

1階なので、地に足がつくと言いますか、気持ち的に落ち着けたし、庭に大きな木があって、夏は木漏れ日もきれいだろうなって。

大家さんが、なるべく建てた当時のまま、大事に住み続けてくれる入居者を探していたようで、その価値観も素敵だと思いました。古いので水回りなど気になるところもあるけれど、気に入っています」


生活の中心に「キッチン」があります

この住まいに移ってから、二人の生活にも変化がありました。

敦子さん:
「キッチンが家の中心にあるつくりなので、生活においても『食べること』が中心になってきたように思います。以前の家よりスペースが広くて、使い勝手もよくなりました。

一人暮らしのときは仕事が忙しくて外食に頼ることも多かったけれど、今はほとんど自炊です」

BENさんは、飲食の仕事をしていて器や道具も大好き。

プロの腕前をもつ彼が家で作るのは、ヨーロッパの素朴な家庭料理や、中華やアジアンといった多国籍料理が多く、先日は牛テールから出汁をとってフォーを作ったそう。一方の敦子さんは和食を担当しています。

BENさん:
「朝食は二人で食べて、夕食はそれぞれで済ませることが多いです。仕事柄、どうしても帰宅が遅くなってしまうので。

料理は何でも作るけれど、和食の味付けは、ちょっとまだむずかしいんですよね。出汁を引いて、素材を生かすような料理は、彼女が上手でお願いしています」

料理も家事も、双方が担当しますが、キッチンや食器棚のしつらえは「彼に任せている」と敦子さん。

敦子さん:
「入居時、まっさきに冷蔵庫の上のディスプレイをしていたのを見て、性格が真逆なんだなと思いました。私は、明日すぐに使うものを出すなど、絶対に必要なことからやるタイプ(笑)

でも、わかるんです。私もコスメが好きで、見せ方や収納を考えるのは楽しい。家を居心地よくしたいというのは共通だし、彼のセンスも好きなので、ここはもうお任せします、と」


無印良品のユニットシェルフを食器棚に

食器棚は、無印良品のステンレスユニットシェルフです。

BENさんが一人暮らしの時に、キッチンカウンターとして並べて使っていたものを、天井の高さに合わせてパーツを買い足し、組み直しました。

BENさん:
「ステンレスは清潔感がありますし、見た目もフラットで主張しすぎず、器自体を引き立ててくれます。

買いやすい価格で、よく "ファーストファニチャー(最初に買う家具)" と言われるけど、品質が高いので、想像以上に長く使えますよね。もしかしたら私より寿命が長いかもしれない。

ライフスタイルの変化に合わせて、形を変えられる自由さも気に入っています」

▲ゴム紐は落下防止のためにBENさんが自分で付けたもの

目に留まったのは、二人暮らしにしてはたくさんあるミニグラス。どれも可愛くて、一点ものや外国のものも多いのでしょうか。きらっと光が透ける様子も美しいです。

BENさん:
「細長いのはポルトガルで買ったポートワイン用のグラス。カラフルなベネチアングラスは、イタリアの思い出。こっちのは、中目黒のSMLというお店で見つけた作家さんのものです。

使い方ですか? うーん、日本酒を飲むときに使うことが多いかなぁ。でもきっと思い出です。ひとつひとつに記憶があるので『どれにしようかな?』と選ぶのも楽しいです」


蚤の市、骨董屋、二人の器をミックスして

▲高円寺にある〈古民具 誠屋〉はBENさんの好きな店。中央の菱形皿、青い蕎麦猪口、その右の絵付皿はそこで見つけた。

二人が朝食でよく使う器を見せてもらうと、和から洋まで、年代もさまざまです。

グリーン系の絵皿は、敦子さんがパリの蚤の市で買ったもの。民藝のものや、骨董屋で掘り出したものは、BENさんのもの。二人の愛用してきた器をミックスして使っているそう。

敦子さん:
「二人の好みが違うのでどうかな?と心配していたけど、おにぎりも、パンも、意外とどれにでも似合うんですよ。

友人が泊まりに来たときは、大きめの絵皿に、五穀米でつくったおにぎりをのせて出しました。

菱形のお皿は、彼が行きつけの骨董屋で見つけて、これには和食が多いかもしれません。西京焼きとか、ごま和えとか。

最近よく使っているのは、インテリアデザイナーの友人からもらった深皿(写真奥)です。山田洋次さんの作品で、淡いピンクの色合いが素敵。彼が作る豆の煮込みやサラダにぴったりなんです」

ちょっと不思議な柄のプレートは、BENさんの祖母が使っていたもの。

BENさん:
「イギリスのリッジウェイ・ポタリーの1970年代くらいのもので、このポップな柄には、ミッドセンチュリーらしい、当時のアートっぽさがありますよね。

私たちは朝食にトーストとアボカド、卵を乗せてワンプレートにしたりしています。

イギリスの家族から引き継いだものといえば、カトラリーもそう。古いものですが、今も十分に美しい。彼女も気に入ってくれて、二人の生活で使い続けられるのが嬉しいです」

▲家族の食事を大切にするイギリスでは、結婚や誕生のお祝いにシルバーのカトラリーを贈る習慣があるのだそう。


思い出やストーリーがあるものと暮らしたい

塩壺やツール立ても、民藝の器を使っていて、沖縄旅行で見つけたお箸は「見た目が好きだし使いやすいので揃えました」とBENさん。布のしつらえも素敵です。

あらためて見渡すと、ピッチャーや大皿が家の中にいくつも飾られていることに気づきます。

BENさん:
「家を飾ることで、少しずつ自分のhome(ホーム)にしている感覚というのでしょうか。

人を家に招く文化が根付いているイギリスでは、家を飾ることは、自分を紹介することと同じような意味があるんです。家族の歴史とか、パーソナリティとか。

でも、たとえ人を招く機会が少なくても、自分が何にインスパイアされるのか、何を大切に生きているか、日々確認できる場所にしておきたいと思うんです」

BENさん:
「大事なのは、自分にとっての "アート" と暮らすこと。だって、好きなものに囲まれていると、大切なことを思い出させてくれるでしょう?」

たとえば、二人で旅をした日々、仕事をがんばったあの頃の自分、友人が記念日を祝ってくれた歓び。BENさんも、イギリスの家族や友人に、よく器をプレゼントするのだそう。小ぶりな蕎麦猪口は、エスプレッソに合うと喜ばれるのだとか。

目に見えないものを、器に託して。食器棚には、持ち主の選んできたものと、その人生が詰まっているのだと思いました。


【写真】木村文平

 

※記事に登場したアイテムは、全て私物です。過去に購入されたものをご紹介しているので、現在手に入らないものもございます。どうぞご理解、ご了承いただけると幸いです。


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福本 敦子

美容コラムニスト。オーガニックに精通した知識と、ライフスタイルに寄り添った独自の美容論「#敦子スメ」が「読んだ瞬間試したくなる」と、著名人やエディターをはじめ各方面から反響を呼ぶ。著書に「今より全部良くなりたい (光文社)」ほか。

Podcast: 福本敦子のきくこすめ

Instagram: @uoza_26

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