【雑貨のはなしをしよう】この一枚が「食卓の風景」を変える。〈KINTO〉のプレイスマット

渡辺平日

この時期になると、一人暮らしをはじめたころのことを思い出します。独り立ちを機に自炊をがんばりたいと思い、キッチン用品や調味料を一通り購入。レシピ本を読みながらせっせと料理にはげんでいました。

でも、すぐに壁にぶつかってしまって……。味は悪くないのに、なぜかおいしそうに見えないのです。お皿を変えてみたり盛り付けを工夫したりと、あれこれ手を打ったもののうまくいかず。

そんなある日。「なんでこんなにおいしそうに見えるんだろう」とカフェのランチを観察しているとき、あることに気付きました。

「そうか、トレーがポイントなんだ!」

僕はそれまで料理を机にそのまま並べていました。いまならよく分かりますが、トレーなしで食器をきれいに配置するのってかなりむずかしいです。

無造作に置くのではなく、かごやプレートで「ゾーニング」する……。前に「雑貨の居場所をつくること」の大切さについてお話ししましたね。たぶん、料理にも同じことが言えるのではないでしょうか。

さて、ひとくちにトレーといってもその種類はいろいろ。そこで今回は「最初の一枚」にぴったりなアイテムを紹介したいと思います。

 

お手入れ簡単で、どんな料理にも合わせやすい

僕のおすすめはテーブルウェアブランド〈KINTO〉のプレイスマットです。素材には軽くて丈夫なプライウッド(圧縮成型合板)を採用。木の風合いを楽しみつつ、気軽に扱うことができるのが魅力です。

無駄のないミニマルなデザインも特徴のひとつ。和食や洋食はもちろん、中華、カフェメニューなど、あらゆる料理に対応してくれますよ。

ところで、その「ミニマルなデザイン」はどこから生まれているのでしょうか? せっかくなのでちょっと掘り下げてみましょう。

カフェやレストランで使用されているトレーの多くは、アメリカの学食などで使用されているものをお手本にしています。ぜひコーヒーチェーンのトレーを観察してみてください。プレイスマットと比べ、フチの傾斜が大きいことに気がつくはずです。

なぜ大きくしているのかというと、トレーとトレーの間に隙間を作るためなんですね。隙間があれば積み上げた状態でも取り出しやすいし、乾燥時間が短くなるというメリットも生まれます。

多くの人が利用する場所であれば合理的ですが、「家庭」で使うならばどうでしょう? 何十枚も重ねることもないし、薄いほうが収納しやすいですよね。じゃあ、思い切って削ってしまおう。

……そんな発想からスタートしたプロダクトだから、ここまでスッキリとしたデザインに仕上がっているのです。うーん。実に奥深い。ちなみに、ちゃんと指が入るくらいの傾斜はあるので持ち運びもしやすいですよ。

 

まずは「一台」からはじめてみませんか

このアイテムのもうひとつの魅力は、バリエーションが豊富ということ。

トレーはSとL、多くても3サイズ展開のものが主流です。一方、このプレイスマットは5サイズも用意されていて、幅広いニーズに対応してくれます(北欧、暮らしの道具店ではそのなかの4種類を取り扱っています)。

これだけ多いとまた迷ってしまいますね。個人的には「MとL」の組み合わせをおすすめしています。このセットであればほぼすべての料理に対応できますよ。

ひとつだけ気をつけていただきたいのは、少なくともトレーに関しては「大は小を兼ねない」こと。たとえば小皿とカップをLサイズに載せたらスカスカな印象になりますし、持ち運びづらくなります。できれば2種類以上は用意するのがベターです。

とはいえ、ものがしっかりしているので値段も決して安くはありません。まずは小さいもので試してみて、納得してから買い足すのも手だと思います。実際に使いながらゆっくり考えてみてくださいね(紙をトレーの形でカットすると大きさをイメージしやすいですよ)。

料理が花で、食器が花瓶だとすると、トレーはそれを飾る台のようなものだと捉えています。

もちろん、花と花瓶だけでも素敵にアレンジできます。でも、もし物足りなく思うのであればぜひ「台」にもこだわってみてください。きっと料理が、そして、日々の暮らしが楽しくなるはずです。

 

本日登場したアイテム

【イラスト】イチハラ マコ
【写真】クラシコム

 


渡辺平日

日用品愛好家。海の見える小さな町で生まれ育ちました。毎日が平日のつもりで、日夜せっせと文章を書いています。趣味は町歩きと物件探しと民話収集。そういう話題が耳に入ると、反応して振り返ります。主な寄稿先は『LaLa Begin』『和樂web』『goodroom journal』など。Twitterアカウントは@wtnbhijt

 


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