【あのひとの子育て】田中千絵さん〈前編〉反抗期は成長期。悩みは尽きないけれど、笑っていたい

ライター 片田理恵

子育てに正解はないといいます。でも新米のお父さんお母さんにとって、不安はまさにそこ。自分を形作ってきたものを子どもにどう伝えるのか。正直、わかりませんよね。だって正解がないんですから。

だから私たちはさまざまなお仕事をされているお父さんお母さんに聞いて見ることにしました。だれかのようにではなく、自分らしい子育てを楽しんでいる〝あのひと〟に。

連載第15回は、デザイナー・田中千絵(たなかちえ)さんをお迎えして、前後編でお届けします。今回は取材をオンラインで行い、写真は田中さんご本人から提供いただきました。

 

子育ても、心持ちや姿勢ひとつでおもしろくできるはず

書籍の装丁からペーパークラフトまで、さまざまなジャンルでデザインの仕事を手がける田中千絵さん。著書『紙と日々、』では、紙が持つ表情や美しさを生かした新たな楽しみ方を提案しました。

プライベートではふたりの息子さんの子育て真っ最中。映像関係のお仕事をされているご主人と17歳の長男、13歳の次男と4人で暮らす毎日について、お話を伺います。

田中さん:
「オンラインミーティングを使ったことがなかったので、この取材の前に家族で予行練習をしたんです。4人それぞれがスマホやノートパソコンを持って別々の部屋に行って、オンライン団欒(笑)。楽しかったですよ。使い方を確認すればいいだけなので、もちろん事務的に済ませることもできるんです。だけどそれだとつまらないから。

私、たいていのことは、心持ちや姿勢ひとつでおもしろくできるような気がするんですね。効率はよくなかったとしても、楽しく取り組むことで徒労感を少なくゴールに向かうことができるんじゃないか、って。それは子育ても同じです」

 

ユーモアを忘れず、日常を楽しめる人になってほしいから

子どもたちを自身が主催するワークショップにアシスタントとして連れていったり、自宅では日ごろから一緒におやつを作るなど、田中さんの子育ては一言でいうなら「参加型」。なんとも楽しそうな日常をインタビューやSNSで公開しています。

田中さん:
「せっかくひとつの家族のメンバーとして一緒に過ごしているんだから、一緒におもしろがりたいし、一緒に楽しみたいんです。それは将来ひとり立ちする時に向けて、子どもに伝えていきたいことでもありますね。自分なりのユーモアを持って、できる限りの工夫を凝らして、なんでもない日を楽しめる人になってほしいから。

そのためには、日常をちょっとしたイベントに仕立てることってすごく有効だと思います。たとえば、パペット(手を入れて操れるぬいぐるみ)を使って話しかける。私の言葉をパペットに代弁してもらうことで、直接だといいにくいこともオブラートにくるんで伝えられるんです。『わ!そろそろお風呂に入ってみちゃう!?』とか(笑)」

 

『お母さんはなんにもわかってない!』と言われて

さまざまな形で親子のコミュニケーションをとろうと努めてきた田中さん。ですがやはり、子育ての悩みが尽きることはないといいます。現在は次男の反抗期に苦慮しているとのこと。

田中さん:
「手芸や料理が大好きでなんでも一緒に楽しんでいた息子が、こんなに変わるの?というくらいの変化がありました。私への言葉もきつくなって、以前は『お母さんてなんでも知ってるね!』だったのが、『お母さんはなんにもわかってない!』になり、さらには『お母さんあっち行って!』になる。覚悟はしていたけれど、これはやっぱりショックでしたね。

中学生になるとだんだん社会的なつながりもできてきますし、誰とどんなふうにつきあっているのか、どんなことをして過ごしているのかが、親にはわからなくなってくるじゃないですか。それは当たり前だし、自立に一歩近づいたという意味では喜ばしいことだと思うんです。

でも、理屈ではそうとわかっていても、態度や言葉の変化が激しい時期だからこそ余計に親も不安になってしまう。黙って見守ってやれずに、つい口を出してぶつかってしまう。そのたびにどうすればいいのかと悩みますね」

 

「第三者の存在」が心を軽くしてくれました

確かに、子どもの成長という急激な変化は、受け止める親の戸惑いも大きいもの。田中さんはそのショックをどんなふうに乗り越えようとしているのでしょうか。訊ねると、2種類のメモを見せてくれました。ひとつは次男が通う学校のスクールカウンセラーさんと面談をした時のメモ。もうひとつは次男の生活記録で、行動や話したこと、睡眠時間が記入されています。

田中さん:
「私にとっては『家庭外の第三者の存在』がとても大きかったです。特にスクールカウンセラーの先生と出会えたことはありがたかったですね。今は担任の先生とスクールカウンセラーさんと3人でタッグを組んで問題や悩みを共有し、定期的に話を聞いていただくようにしています。言葉にすることで、私自身もその時々の状況を冷静に把握できるようになりましたね。

反抗期は成長期。心と体の変化に子ども自身がついていけないからイライラするし、緊張が取れないから不調も出てくる。そういったメカニズムをひとつひとつ教えていただきながら、だからこういうふうになっちゃったんだなとか、じゃあこうしたらよかったかもということを学んでいます。

近ごろは少しずつ様子が落ち着いてきたこともあり、今は『睡眠が取れていて、しっかり食べていれば、それでいいんだ!』と私自身が思えるようになって、ずいぶん気が楽になりました。

きっと、こうやって新しい関係性に移行していくんでしょうね。子ども本人だけでなく、親も『子ども時代の親だった自分』を手放していくというか。それには『あきらめる』のではなくて、『信じる』ことが大切なのかなと思います」

 

できるなら、ほほえみを絶やさない菩薩のように

▲田中さんが紙粘土で作った「菩薩かあさん」。ゴム手袋とエプロンを身につけて、口元にはやさしいほほえみが。

田中さんには、折に触れ思い起こすようにしている言葉があるといいます。それは「菩薩」。何事にも動じず、余計な口を出さず、いつもほほえみを絶やさない菩薩のように、息子と向き合い見守りたいという意味が込められているそう。

田中さん:
「これもカウンセラーの先生に教えていただきました。子どもと同じ土俵に上がっていって、あれこれうるさくいっても伝わらない。だから今はお母さん、菩薩の境地でいきましょうといってくださって。

すごく難しいですよ。できなくて反省してばかり。でも、できるだけそうしたいと思っています。だからイラっとするようなことがあると、『菩薩、菩薩』と呟いて、自分の気持ちを落ち着けるようにしたり。

悩みは尽きないけれど、前を向いて毎日を続けていきたいし、できるだけいつも笑っていたい。私にとっては、それを思い出させてくれる大切な言葉なんです」

続く後編では、子育てのヒントになった自身の子ども時代、そして当時受け取った思いを今度は息子さんにどう伝えていこうとしているかということについて、お話を伺います。

 
後編はこちら

 
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【写真】田中千絵、平本泰淳(プロフィール)

 

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田中千絵

デザイナー。武蔵野美術大学造形学部空間演出デザイン学科卒業。在学中から伯父・田中一光のもとでデザインを学ぶ。グラフィックデザイン、プロダクトデザイン、書籍の装丁など幅広く活動中。オンラインストアにてグッズや書籍も販売している。

 

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ライター 片田理恵

編集者、ライター。大学卒業後、出版社勤務と出産と移住を経てフリー。執筆媒体は「nice things」「天然生活」「あてら」など。クラシコムではリトルプレス「オトナのおしゃべりノオト」も担当。

 


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