【器と暮らす】後編:木工やガラスの器のお手入れ方法

編集スタッフ 寿山

大切な器を慈しむように、お手入れできる人になれたらと、プロに扱い方を教わっている本特集。

第1話では、器の店「夏椿」の店主、恵藤文(えとうあや)さんに、陶磁器の扱い方について教わりました。2話では、引きつづき恵藤さんに木やガラスの器の扱いについて、伺います。


第1話

 

木の器は、サラダを作ればお手入れになる?

木の器を持ってはいるけれど、あまりメンテナンスが出来ていないわたし寿山。どうお手入れしたらいいのでしょうか?

恵藤さん:
「だいたい作家さんの器は天然のオイルで塗装されたものが多くて、たまにオイルを塗りなおす必要があります。

ただ、私はめんどくさがりなので、例えば木のボウルなら葉野菜をたっぷり入れてオリーブオイルで和えれば、じわっとオイルが染みてお手入れにもなると考えています」

▲よくサラダを和える木のボウル。オイルが満遍なくしみて色が深みを増し、艶も出ている

恵藤さん:
「小さな器であれば、オイルで和えたサラダを盛り付けたら、同じようにオイルがじわっと染みてお手入れが不要ですよ。

そうやって何回かオイルを浸透させていくと、何を盛り付けてもシミになりにくくなります。もちろん、一晩とか放置したらシミになることはあると思うので気をつけてくださいね」

 

白木のものは、たまに拭くだけ

何も塗られていない、白木のものはどうしたらいいのでしょうか?

恵藤さん:
「右は新品で、左は私が8年ほど使ったもの。たまに拭くくらいで特別に手入れなどしていませんが、経年変化で色艶が変わるし、よく持つところだけ色が濃くなったりと、変化が面白いですよ。

白木のものは、基本的に器としては使いません。

トレイとして使ったり、小物やドライフラワーを飾ったり。もし食べ物を載せたければ、自分でオイルを塗ればいいだけ。クルミ油とかアマニ油とか、スーパーで手に入る乾性油で大丈夫です」

※乾性油とは乾燥性が高く、空気中で徐々に酸化して固まる油のこと

 

憧れるけど「漆器」には手が出せません!

▲右が新品で左が7年使ったもの。徐々に艶がまし、漆が透けてきて、下地の木の質感を感じられるようになるそう

憧れはあるけれど、なかなか普段づかい出来ない漆器。実際のところ、どう扱って、どう手入れしたらいいのでしょうか?

恵藤さん:
「あまり神経質にならなくても大丈夫、ほかの食器と同じように食器用洗剤で洗えます。私は柔らかいスポンジを使っていますが、ゴシゴシと力を入れては洗わずに、最後にクロスで拭き上げます。

気をつけるべき点は、作家さんいわく『人の手だと思って扱ってください』だそう。冷凍庫や冷蔵庫に入れるのはダメだし、熱湯につけるのもNG。熱々のものを入れた直後に冷たい水をかけるなど、温度差にも弱いです。

しばらく使わないときは、とくにしっかり乾かしてからしまいます」

▲布から作られる乾漆とよばれる塗り物。左が5年、右が14年使ったもの。使うほどやや布目が浮き出て面白い表情に

恵藤さん:
「それから漆器には、ベースが木のものと布のものと、2種類あります。

布のものなら、冷蔵庫に入れても大丈夫。私はたまに使うお重に、残りものを詰めて冷蔵庫に入れるなどしています。

木のものは割れの原因になるので、冷蔵庫には入れられません。パッと見では区別がつかないかもしれないので、買うときに確認してみてください」

 

もしカビや黒ずみができてしまったら……

漆が塗ってあるものも、オイル塗装のものも、とにかく木の器は「しっかり乾かす」ことがポイントだそう。

恵藤さん:
「水分が残っていると、カビや黒ずみの原因になるので、ちゃんと乾かすようにしてください。とくにお櫃や曲げわっぱなど、白木のものは注意が必要。もし黒ずんでしまったら、サンドペーパーで擦るという手もあります。

ただ、削ることになるので、色や風合いがそこだけ変わってしまうのが気になるという方も。小さい範囲で試しながらやってみてください」

 

ガラスは「水垢」と「ライン」に気を付ける

陶磁器のものは自然乾燥させると話す恵藤さん。ガラスは水垢がつくので、しっかり拭きあげるそう。

恵藤さん:
「とくに透明なものは水垢が気になるので、拭いてからしまうようにしています。

花瓶などは、いつも同じところまで水を入れていると、そこだけ削れて線がついてしまうことも。気にならない方はいいと思うのですが、水差しなども、水を注ぐ量を少しずつ変えると線がつきませんよ」

大切に思えば思うほど、出番がへっていたわが家の一軍の器たち。間違った扱いをして、汚すのもダメにするのも怖かったのです。

そんな私に「使わないと、自分のものになりませんよ」と話してくれた恵藤さん。洋服と同じで、あれこれ試して自分になじませるのが一番ですよと。

確かに飾っていては、自分がどう使いたいか分からないやと、週末だけ使っていた一軍たちを、こわごわ普段づかいし始めました。ハレとケのめりはりも好きですが、常にハレの器が1つでも、傍にあるのは悪くないものです。

 

【写真】神ノ川智早

 

もくじ

 

恵藤文

東京生まれ。青山のインテリアショップで雑貨仕入れを担当。作家と共同でつくるオリジナルグッズなどを手がけた。器と雑貨の店「KOHORO」の店舗立ち上げを経て、2009年には自身の店「夏椿」をオープン。2018年には鎌倉へ店舗を移し、月ごとに企画展やイベントを開催している。http://www.natsutsubaki.com


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