【おしゃれな人】第2話:シンプルだけれどナチュラルすぎない、大人な着こなし。(CHICU+CHICU5/31デザイナー山中とみこさん)
ライター 長谷川未緒
「おしゃれな人」と聞いて、ぱっと思い浮かんだ「CHICU+CHICU5/31(ちくちくさんじゅういちぶんのご)」のデザイナーで主宰の山中とみこさん。
シンプルだけど個性的で、かわいらしさと格好よさを併せ持つ山中さんに、大人のおしゃれについて、伺っています。
前回は、たくさん失敗しながら自分らしいテイストを見つけるヒントや、自分のことを客観的に捉えることの大切さなどを聞きました。
続く第2話では、バッグや靴も含めたトータルコーディネート、ファッションのマンネリを打破する小物遣いのポイントなどを、見せてもらいます。
重ね着は体型をカバーしてくれる?
山中さんのワードローブのほとんどを占めるのが、リネンやコットンなどの肌触りのよい天然素材で、ゆったりしたシルエット、色は白や黒、紺などのベーシックなものが定番です。
山中さん
「夏はワンピースや、シャツにスカートやパンツを合わせてさっとストールを巻くことが多いですね」
山中さん
「春と秋はそこにベストを合わせたり、ワンピースの下にパンツを穿いたりして、重ね着を楽しみます。重ね着すると太って見えると思うかもしれませんが、コーディネートで遊べるところがおもしろいですし、体が立体的に見えるので、かえって体型カバーにもなっておすすめです。
そして冬にプラスするニットは、黄色などのビビットなカラーもたまに取り入れていますよ」
シンプルな分、ナチュラルテイストになりすぎないよう、革靴やバッグまで含め、トータルで着たときの全体のバランスや色味、素材の組み合わせなどには気を使っているといいます。
ボリュームのある服には、ボリュームのある靴とかばんを。
▲tokizakiとのコラボ革バッグ、キクチジュンコさんの柿渋染、キソノイオとのコラボリュックなど、愛用のバッグ。
山中さん
「ボリュームのあるパンツやスカートが多いので、足元はトリッペンのどかっとした靴を、わざとワンサイズ大きい物を履いて、バランスをとっています。バッグも小ぶりなものよりは、大きなバッグを手持ちしたり、斜めがけしたりして、愛用しています。
また、白なら白、黒なら黒のワントーンの装いをすることが多いのですが、同じ白でもコットンのTシャツにシルクのカシュクールといった異素材を重ね着して素材の良さを引き立て合ったり、短い丈のトップスにたっぷりしたボトムスを組み合わせて、バランスの妙を楽しんだりしています」
ストールも1年に1枚ずつ購入したものがグラデーションで揃っていて、服に合わせてコーディネートするそう。
山中さん
「denのリネンストールを愛用しています。白い服には白、黒い服には柿渋染の茶を合わせることが多いですが、夏から秋にかけては白い服に茶を合わせることも。
帽子もそうですが、気に入ったものは色違いで持っておくと、組み合わせで変化を楽しめます」
小物で遊んで、マンネリ知らず。
自分のスタイルがあって、それでいて、いつも新鮮に見えて、遊び心がある山中さんのおしゃれ。
そういう装いにあこがれるものの、自分がいちばん素敵に見える(と思われる)服を定番化したのに、いつのまにか飽きてしまった苦い経験がある人は、私だけではないはず。
好きな服をマンネリを感じることなく、いつもうれしい気持ちで着続けるには、どうしたらいいのでしょう。
山中さん
「服に新鮮味を与えるには、小物でアレンジするのが簡単です。私がよく使うのは、ブローチです。
ギャップがあったほうがおもしろいので、黒い服が多くなる冬は、胸元に真っ黄色のブローチをつけてアクセントにしたり、天然素材のシャツには、無機質な存在感のあるアルミ素材のブローチで、お互いを引き立て合ったり」
山中さん
「いま思いついたんだけれど、エンブレムのようなブローチを胸元じゃなくてパンツのウエストにつけるのも、変化があって、いいかもしれませんね」
ボックスにみっしりとつまったおもしろいデザインのブローチを次々に見せてくれながら、新しい使い方まで考えてくれた山中さん。ふだんから小物遣いを楽しんでおられる様子が、よく伝わってきます。
愛用するのは、ご本人曰く「おもちゃみたいな」ものなのだそう。
山中さん
「宝石を使ったジュエリーよりも、遊び心のあるユニークなものに惹かれるのは、昔からですね。
素材も、アルミとか布とか、ビーズなどチープなものが好きなんです。今日つけているこのブレスレットも500円でした。いい大人が、と呆れられるかもしれませんが、私は好きでつけています」
私は丸襟が子どもっぽいとは、思わない。
山中さん
「自分が心地よく着られるものや好きなもの、いいなと思ったものは、年齢にとらわれずに、どんどん身につけていいと思っています。
たとえば私は首のつまった丸襟のシャツが好きなんです。子どもっぽいといわれることもあるんですけれど、好きだから着ています。首のあいた服より、似合うと思いますし。
好きなもの、似合うものは年齢に関係ないので、何歳になったらこういうものを身につけなくちゃ、なんて決めつけなくていいと思っています」
▲古いテントの生地を使って作ったパンツはお気に入りの一着。ハトメにテントのなごりが。
年齢にとらわれないことで、おしゃれはますます楽しくなる、と山中さん。実際、若い人のファッションを取り入れることもしょっちゅうあるのだとか。
「次男のお嫁さんがおしゃれな人で、ファッションの趣味も合うんですよ。
このあいだ、かっこいいサスペンダーをしていたから、私もほしい、といって、お揃いを買ってきてもらったんです。渋谷のパルコで買ったものだと聞きました。
年齢にかかわらず、周りや、雑誌、インターネット、街なかなど、素敵な人にはいつもアンテナを張って、おしゃれをインプットするようにしています」
小物遣いでギャップを楽しみ、何歳になっても好きなものは好きという姿勢を貫くこと、そして周囲に目を向けてアップデートも怠らないこと。山中さんが、ずっとおしゃれを楽しんでこられたことがよく伝わってきました。
続く第3話では、何十年ぶりかでジーンズをはくようになった話や、素敵なシルバーヘアなどについて、伺います。
【写真】大森忠明
もくじ
山中とみこ
1954年生まれ。専業主婦、古道具屋店主、小学校の特別支援学級の補助職員などを経て、2003年49歳のときに大人の普段着のレーベル「CHICU+CHICU5/31(ちくちくさんじゅういちぶんのご)をスタート。著書に『時を重ねて、自由に暮らす』(エクスナレッジ)がある。インスタグラムアカウント@chicuchicu315
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