【でこぼこ道の常備薬】後編:自然と「らしく」なってしまう姿は、かっこ悪いけれどかっこいい。(スタッフ青木)

文筆家 土門蘭

人に頼るまでもないけれど、なんだかちょっと調子が悪かったり、気分が晴れなかったりすることってありますよね。
そんな時に常備薬のように心の支えとなる、「あの人の言葉」や「あの人の姿」についてうかがう『でこぼこ道の常備薬』。クラシコムスタッフ・青木さんのお話の後編です。

ラジオ「チャポンと行こう!」やリトルプレスなどで度々話題にあがるほど、「ぬいぐるみ好き」な青木さん。心の「友達」についてうかがった前編に続き、今回は青木さんの大好きなぬいぐるみの話題からスタートしました。

ところであなたにも、こんな「友達」はいらっしゃいますか?

 

「ありがとう」って
ずっと言っているだけかもしれない

土門:
「話が通じる人がここにいる、私の『友達』にしてしまおう」という考え方、とても素敵ですね。青木さんはぬいぐるみがお好きだそうですが、ぬいぐるみもそういう「友達」ですか?

青木:
ぬいぐるみはずっとそういう「友達」ですね(笑)。この考え方は子供の時からあって、親が心配していたくらいで。ちょっと恥ずかしいんですけど……。

あ、でもね。以前、会社のメンバーとzoomで話している時に、私のぬいぐるみが画面に映ったことがあるんですよ。「よしべさん(青木さんの愛称)、何かおしゃべりさせてみてください」って冗談で言われたんですけど、その時初めて「あ、私、この人たちに何かを言わせたことがないな」ってことに気がついたんです。
「友達」だと思っているけれど、この人たちとおしゃべりをしたことがない。それなら私は、この人たちと何をしているんだろう?って考えてみたら「ありがとう」ってずっと言っているだけだったんですよね。

土門:
へえー、「ありがとう」ですか!

青木:
そう。目に入るたびに「今日もかわいくてありがとう」ってお礼を言っているんです。
夫にその発見を話したら、「それは神様との付き合い方だね」って言われました(笑)。でも確かに、神社にお参りするときって、何かをお願いするというより「今日も無事に生きております。ありがとうございます」って言ってるなって思って。

「そうか、この人たちは『友達』じゃなくて『神様』なのかもしれない。私は小さい時からこの人たちを『神様』にしていたのかもしれない」って気づいたんですよね。植物も一緒です。「うわあ、今日もめちゃ元気だね。ありがとう」って、つい感謝してしまう。

土門:
すごいなぁ……。言葉を交わすというより、言葉じゃないものを受け取っているんでしょうか。

青木:
何を受け取っているんでしょうね? 自然にやっているので、分析できていなくて恥ずかしいんですけど(笑)。でも、出会った時にはすでにわかっているんですよ。この子はうちに来たらすごくかわいがられるぞ〜って。まあ、私がかわいがるんですけどね(笑)。

ああ、だから「かわいい」をもらっているんでしょうね。かわいいと元気になるし、かわいいと気持ちも凪になる。たくさん「かわいい」を浴びたいって思いますね。

 

「全身全霊僕でありたい」

青木:
それと同じ理由で、実は私にとっては、子供も夫も「神様」なんですよ。彼らもわたしにとって、「かわいい」ものなんですよね。

土門:
えっ、お子さんも旦那さんも「神様」?

青木:
息子は今思春期で、憎たらしいことも言うし、「うるせえ」なんて言われる日もあるんですけど、私の記憶が改ざんされてしまうのか、毎日かわいかったことしか思い出せなくて。とんちんかんなかわいい動き方なんかしているのを見ると、「かわいいなぁ、ありがとう」って思っちゃう(笑)。こういう成長も全部見せてもらえてありがたいな、役得だなって。夫も夫ですごくおもしろい人なので、一緒にいてくれてありがたいなって思います。
……この気持ちは何でしょうね?

土門:
コミュニケーション云々というよりも、存在に感謝しているって感じでしょうか。単純に「お日様が当たって気持ち良いな、ありがたいな」って太陽に感謝する感じで。

青木:
なるほど……そうかもしれないですね。
私は子供と夫がいるおかげで、美しい人間でいようって気持ちになっているような気がします。自分が汚くなりそうっていう時に、「ああ、でもこの姿をこの人たちに見せたくないな」って思って、恥ずかしくないように振舞う。そういう行動の指針になっているような気がしますね。

土門:
それは確かに「神様」ですね。

青木:
幼い子供を育てている時、「こんなに自分をまるっと受け入れてもらったことってあったかな」って思ったことがあるんですよ。そういう信心っぽさが、根底にあるのかもしれないな。

土門:
旦那さんもそうですか?

青木:
夫は、自分の変なところや至らないところを重々承知している上で、そこを隠すことなくコミュニケーションをとる人なんですね。服を着ているのに、ずっと心は丸裸みたいな……。

結婚して1年くらい経ったころ、NHKの『ジャム・ザ・ハウスネイル』っていうクレイアニメが大好きでよく観ていたんですが、エンディング曲がこんな歌詞なんですよ。

「猫が猫であるように 犬が犬であるように 全身全霊 僕でありたい」ハイポジ『僕でありたい』

その曲を聴いた時に「ああ、うちの夫はまさに『全身全霊僕』であろうとしている人だな」って思ったんです。その時の印象が、今でもずっと変わらないんですね。

それぞれに「らしさ」があって、「らしく」あろうとしているわけではないのに、自然と「らしく」なってしまっている姿は、かっこ悪いけれどかっこいい。この曲からはそんなことを感じて、今でも時々思い出す曲ですね。

土門:
そういう「らしく」あることの素敵さを、ぬいぐるみや、旦那さんやお子さんに感じるのでしょうか。

青木:
はい。「らしく」ある、きれいでかわいい人やものが大好きだから、私もそうありたい。きれいな存在でありたいなって思います。

 

「『僕』は『僕』でいいのかも」と
気づかせてくれた友達たち

土門:
青木さんにとっての「きれい」とか「かわいい」ってきっと、「僕が僕である」ことなんですね。

青木:
うん、今のところ、そうだと思います。自分が凸凹だってわかっているんだけど、この自分でなんとかやっておりますっていうのが美しいかなって。

でも、生まれたままのなんちゃくれ(名古屋弁で「生半可」)というのとはまた違うんですよね。出しっ放しは美しくない。夫も心は丸裸なんだけど、全部素のまま出しているっていうよりは、自分なりに「僕」を編集して、受け取ってもらいやすくしている。子供も子供なりに、日々アップデートしている。そういう姿を見ていると、気持ちを正されるような気がしますね。

土門:
お話をうかがっていて、青木さんがこれまで得てきた出会いはすべて、「『僕』は『僕』でいいのかも」と気づかせてくれたものだったんじゃないかなと思いました。

青木:
ああ、そうかもしれません。基本的に私も「僕が僕である」ことをよしとしていなかったんでしょうね。このままではいけないっていうか、このままの自分では何だか生きづらいっていつも思っていましたから。でも、21歳のときに高山さんの本に出会って、「そのままの柔らかな心で生きていても大丈夫」って言われたような気がして。

土門:
それ以来、そう感じさせてくれる人が、青木さんにとっての「友達」だったり「神様」なのかもしれません。

青木:
そうですね。そういう存在が、自分の心の中にはたくさんいます。

心に響いた本の著者も、「かわいい」をくれるぬいぐるみも、毎日そばにいる家族も、「友達」であり「神様」のような存在と話す青木さん。普段使う「友達」や「神様」の定義とは少しちがいますが、青木さんのお話を聞きながら、自分にとってもそういう存在がいるかな、いたらいいな、と思いを巡らせました。

生活様式や環境の変化で、心が疲れたり揺れたりしがちな今日このごろ。
そんな時こそ一旦立ち止まって、自分の中にある「常備薬」のチェックをしてみると、改めて大切な何かが見つかるかもしれません。

(おわり)

photo:滝沢育絵

もくじ

 

土門蘭

1985年広島生まれ。小説家。京都在住。小説、短歌、エッセイなどの文芸作品や、インタビュー記事を執筆する。著書に歌画集『100年後あなたもわたしもいない日に』、インタビュー集『経営者の孤独。』、小説『戦争と五人の女』がある。

 


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