【もっと雑貨のはなしをしよう】灯りって、愛だと思った。日用品愛好家が選んだLEDキャンドル
渡辺平日
「部屋が真っ暗だとよく眠れなくて」
まわりでこんなことを言っている人はいませんか? なにを隠そう、僕もその一人です。情けない話ですが、眠るときに灯りがないと不安になります。
なぜ心細くなるんだろう? 記憶をたどってみると、小学生のころの経験が原因のように思います。
……ある晴れた休日、僕は祖父母の家に遊びに来ていました。夕飯までに帰る予定でしたが、なにかの事情で親が迎えに来れなくなって、急きょ泊まることになったんですね。
最初はワクワクでした。けれど、夜が近づくにつれ、だんだんと心細くなってきて。
個人商店も無いような田舎だから、日が落ちると外はもう真っ暗。その暗さって半端なものではなく、玄関から一歩踏み出した瞬間に、全身が闇に飲み込まれるような錯覚におちいるほどでした。
その暗闇のなかで、ワタナベ少年は、一人で寂しく布団に潜り込むわけです。もちろんスマホとかは無いから、できることといえば考え事くらい。
僕は寝床で想像を膨らますのが好きな子どもでしたが、そんな状況ではちっとも楽しめないし、30分ごとに振り子時計がボーンボーンと鳴るしで、けっきょく一睡もできませんでした(そのときの感覚はまだ残っていて、それはときおり、僕の心をヒヤリとさせます)。
おそらくですが、この経験のせいで、僕は照明なしでは眠れない体となってしまったのです。
大人になってから、いろいろと試してみた結果、キャンドルがいちばんリラックスできることに気付きました。ということで最近はキャンドルを愛用していましたが、これだと寝る前に消さないとなんですよね。
うとうとしてきたタイミングでやおら起き出してキャンドルを消しに行くのって、なんとなく間が抜けてるし、冬だと寒くて目が冴えちゃったりする。うーむ。LEDなら安全だけど、情緒がないしなあ。
こんなふうに一人で楽しく悩んでいるときに出会ったのが、今回取り上げる3D LEDキャンドルです。
正直、パッケージから取り出したときは「えーと、これで大丈夫なのかな?」と思いました。たしかに表面はキャンドルそっくりだけど、「火」はいかにも作り物っぽくて、むむむという感じ。
ところが、電源を入れたらこれがビックリ。命を吹き込まれたかのように「火」がゆらゆらと動き出し、親密な光を放ちはじめたのです。ははあ、なるほど。この動きはたしかに3Dだ。
ただ動くだけじゃなくて、光の強さが微妙に変わっていくのも実にリアル。そうそう。火ってこういうふうに瞬くのよね。これはもう、遠目には本物のキャンドルにしか見えません。
あくまでも個人的な感覚ですが、寝室の照明として使う場合、明るさはちょうどいい具合です。6畳の部屋だったらひとつでぼんやりと照らせます。お酒を飲んだりするならもう一個あるとよりグッド。
あっ、でも、枕元に置くとすこし眩しいかもしれません。あれこれと試してみて、いちばん居心地のいい距離を探していきましょう。
個人的に注目してほしいのが「4時間タイマー」という機能。毎日、4時間だけ点灯するモードで、オンにしている限りはずっとその動作を繰り返します。たとえば18時にスイッチオンしたら、18時から22時の間は点灯し、それ以外は消灯……といった具合に働いてくれます。
最初は「これってなんなんだろう?」と思いましたが、使ってみるとこれがけっこう便利でした。
僕は20時から光りだすようにしていて、点灯したら仕事をストップするようにしています。こうすると、「20時になったから仕事をやめて、遅くとも24時には寝ようね」と優しくうながしてくれてる気がして、けっこう和みます。
ほかのシーンですと、取材や打ち合わせとかで帰るのが遅くなったときに、キャンドルが灯っているのを見るとホッとしますね。ちょっと大げさかもしれませんが「出迎えられてるなあ」と感じます。
正直なところ、タイマーの精度がそこまで良くないみたいで、日によって早くなったり遅くなったりしますが、これも愛嬌があって気に入っています。「おっ、今日は早いな!」みたいな。それから、「悪いけどまだ19時半だからあと30分仕事するね」と心のなかで思ったりするわけです。
なんというか、彼(あるいは彼女)とは「いい関係」を築けている気がしますね。
つい先日もこういうことがありました。仕事やプライベートのことで頭がいっぱいになって、気晴らしにウォーキングをしたのですが、ぜんぜん気分が晴れない。お腹も空いてるし、「もうめちゃくちゃだあ」と思いながら玄関を開けたら、キャンドルが優しく灯っていて……。
それでなんとなくホッとして、すぐにシャワーを浴びたら、さっきまでのモヤモヤがどこかに消え去っていました。もちろんなにかが解決したわけじゃありません。でも、きっと大丈夫だなと僕は感じたのです。
最後に、それで思い出した話をひとつさせてください。
僕はむかしから勉強が大嫌いで、自宅では机に2時間以上座った記憶がありません。高校2年生までは騙し騙しでなんとかやってきたのですが、3年生にもなるとそうはいってられません。
それでも僕は机に向かいたくなくて、夕飯後に家を抜け出し、友人と海を見に行ったり、コンビニでシュークリームを買って食べたりしていました。そうこうしているうちに、帰るのはけっこう遅くなっちゃうわけです。
当然、両親とはめちゃくちゃ喧嘩しました。それでも、夜中まで外灯を点けて、帰りを待っててくれたんですね。
そんなことが何度かあって、さすがの僕も「これはいかんな」と心を入れ替えました。それから遅まきながら勉強をはじめ、なんとか大学に進学。いろいろあっていまに至ります。
いったい、あの「灯り」がなかったらどうなっていたんだろう? 折に触れて、そんなことをしみじみと考えます。
それにしたって、あれほど勉強が嫌いだった人間が、いまでは机にかじりついてお話を考えているだなんて、あのころの自分が知ったらビックリするだろうな(先生が聞いたらイスから転げ落ちちゃうかもしれない)。
……もしかしたらむかし、寝床でたくさん想像を膨らませたのが、いい訓練になったのかも?
本日登場したアイテム
【イラスト】イチハラ マコ
【写真】渡辺平日
渡辺平日
日用品愛好家。海の見える小さな町で生まれ育ちました。毎日が平日のつもりで、日夜せっせと文章を書いています。趣味は町歩きと物件探しと民話収集。そういう話題が耳に入ると、反応して振り返ります。主な寄稿先は『LaLa Begin』『和樂web』『goodroom journal』など。Twitterアカウントは@wtnbhijt。
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