【インテリアの楽しみ方】第4話:古道具の選び方やメンテナンス、リメイクについて
ライター 長谷川未緒
アンティークセレクトショップ「REFACTORY antiques」店主・渡邉優太さんに、古道具を取り入れて自分らしいインテリアを楽しむ方法について伺っている本シリーズ。
第1話では、お店を訪問し、古道具の選び方や、使い方のヒントを。第2話では、自由に楽しむ家具選びやプチ模様替えの仕方、好きなスペース作りや植物の楽しみを。第3話では、気に入らないポイントを改善する工夫や、インテリアを素敵に見せる間接照明の使い方、雑貨の楽しみなどを聞きました。
つづく第4話では、いまの暮らしに合わせて古道具を使う方法や、DIYで実現する好みの部屋づくりなどをご紹介します。
気に入った古道具を使い勝手よくするアイデア
「このテーブル、何か気がつきませんか」と渡邉さんに聞かれ、よく見てみると、テーブルの脚が……。
渡邉さん:
「デザインは好きなのですが、高さが足りなかったので、脚の下端に古材をつけてリメイクしたんです。古道具はこうして自分用にカスタムすることも多いですね」
渡邉さん:
「古いものには、ときどき使っている人が直した跡があります。大切に使い続けていたのだろうな、と感じ、引き継いでいこうという気持ちになりますし、使い続けたいと思えるだけの良さをより日常的に感じられる気がします。
カスタム2021としては、横揺れするので、アイアンで揺れないように止める予定です」
▲アイアンでカスタムしたテーブルの写真を、取材後渡邉さんが送ってくださいました。
第1話で見せてもらったカウンタースツールもそうでしたが、購入時に相談したり、DIYで調整したりして自分サイズにお直しできれば、いまとは規格のちがうものも多い古道具を愛用できます。
古道具はこだわりすぎずに選ぶこと自体を楽しむといい
▲蚤の市で求めた絵を古材で自作した額に入れて。
いまの自分にフィットした暮らしができる空間を、古道具を取り入れながら上手に楽しみたい。そう思ってお店に足を運ぶ場合に、必要なことはなんでしょう?
渡邉さん:
「お店は広さも天井高もあることが多いので、お店で見たときと家に置いたときの印象は違います。ですから、家の広さや置きたいスペースなどは測っておき、メジャーを持っていくと、具体的に置いたところをイメージしやすいと思います」
とはいえ、具体的に探しているものがあり、そのイメージや寸法に引っ張られると、気に留まるような物を見落としてしまうかもしれない、とも。
▲足置きをDIYしたスツール。
渡邉さん:
「探しものがあったとしても、まずは自分のフォルダの中にリストをしまっておいて、何も考えずにものを観察し、選ぶ行為自体を楽しんいただければと思っています。
そうして心に留まる好きなものと出会えれば、そのサイズや使い勝手に合わせた使い方を自分なりに模索して使う楽しさもあります。
意外とそういうものが末永く使い続けられるものだったりしますよ」
気になる古道具のメンテナンスは、買ったお店で教えてもらうのがいい、とのこと。木の素材や仕上げの種類によって必要なお手入れが違うからです。
渡邉さん:
「エアコンによる乾燥や、夏場の湿気、日の当たり具合など、ちょっとした環境の変化に気持ちを傾けて、プロに確認してみてください。
あまり神経質にならずに使ってほしいと思いますが、脚のぐらつきや、扉の開け閉めの不具合は、そのまま無理して使うと破損の一途をたどります。買った店に相談して安定させたり、滑りをよくしたりしたほうがいいですね」
床と壁がポイント。DIYで理想の部屋に
淡いグレーの壁に、さまざまな雑貨が飾られた作り棚、味のあるスーツケースと、洋書に登場しそうな寝室は、もとは会議室のようだった味気ない部屋をDIYでリフォームしたのだとか。とくに大きく変えたのは、床と壁です。
渡邉さん:
「土足で入る部屋の床をイメージして、フローリングは無垢材加工の板をわざと荒く削り、白っぽいオイルで拭いて仕上げました。削られた中だけ白いオイルが残って、海外の山小屋のかすれた床のようなイメージに。ふだんは嫌がられることが多い節も、表情に個性があるのでわざと残しています」
渡邉さん:
「壁の色は、自然光がやわらかく当たったときに自然な色に見えるグレーに調整しました。
マットな質感が好きなのですが、つや消しで塗装すると汚れがつきやすくなるので、見た目はマットに近いけれど、見た目には感じない程度の艶加減を調整しました」
壁や家具のペンキ塗りは、挑戦しようと思う人も多いのではないでしょうか。そんなときに、気をつけたいのは、見本と実際の違いだと言います。
渡邉さん:
「小さな色見本で見ていたときと、空間に塗ったときの印象はかなり違います。何度もくり返すうちにイメージできるようになっていくのですが、素材に合わせた塗料選びも含めて、プロのアドバイスを受けて、道筋を作ってもらうのもいいと思います」
何もないところから理想通りに仕上げていくのは難しいので、専門家に相談に乗ってもらいつつ、できないところはお願いし、できるところは自分でやる。そんな方法なら、はじめてでも、理想通りの部屋づくりが実現できそうです。
古道具の魅力は、ときを重ねた跡
たっぷりと見せていただいた最後、古道具の魅力について、伺いました。
渡邉さん:
「たとえば自分の大工道具は、それでないとしっくりこない馴染みの良さがあります。買った当初はよそよそしく、感覚を確かめるような具合ですが、時間とともに自分の考えの延長になってくれるような、それが手元にあることで精神的な安心感が生まれてきます。
暮らしに寄り添ってきた家具や雑貨も同じことが言えると思います。
手間ひまかけて作られたことがうかがえたり、作り手の意思や個性が反映されていたりと、使われていた背景とともに、つくられた背景も感じ取ることができるものは、古い、新しいを問わず、魅力を感じます」
ヴィンテージの家具や雑貨は、こういうものがほしいと思っても出会えない可能性がある代わりに、予期しない形で迎えることができる運命の出会いもあります。
作り手の思いや大事に使われてきた歴史があるものを、自分なりの使い方で楽しみ、居心地のいい家にいる時間が好きになるようなインテリアに整えられたら、素敵です。そして大切に使ったあとは、次代に引き継いでいければ、そんな思いが生まれました。
(おわり)
【写真】MEGUMI(4枚目以外)
もくじ
渡邉優太
大学卒業後、「ザ・コンランショップ」やインテリア内装業、古道具の修理等を経て、2012年アンティークセレクトショップ「REFACTORY antiques」をオープン。国内外から古道具を買い付け、修理、販売をするほか、個人宅や店舗、施設等のリフォームや空間デザインなども行う。Instagram(@refactory_antiques)。3/27〜28、4/17〜18「森と湖のマルシェ」(飯能メッツァヴィレッジ)参加
ライター 長谷川未緒
東京外国語大学卒。出版社勤務を経て、フリーランスに。おもに、暮らしまわりの雑誌、書籍のほか、児童書の編集・執筆を手がける。リトルプレス[UCAUCA]の編集も。ともに暮らす2匹の猫のおなかに、もふっと顔をうずめるのが好き。
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