【ご機嫌でいるために】第2話:いつでもフラットな気持ちになれる、頼もしい定番

ライター 木下美和

大人になって憧れるのは、年齢にとらわれず「こうありたい」「これが好き」という純粋な気持ちが表情や佇まいに表れている人。

今回は、そんな憧れの姿を地で行くような、東京・四谷のカフェ「MOON mica takahashi COFFEE SALON」の店主・高橋美賀(たかはし みか)さんを訪ね、全3回にわたりお話を伺っています。

第2話では、高橋さんが愛してやまない暮らしの中の定番を見せてもらいました。

第1話

 

汚れたって構わない。「白エプロン」と「白ブラウス」を着続けるのは

高橋さんといえば、こなれたエプロン姿が印象的。特に白いコットンのエプロンは何着も持っていて、なかには20代の頃から使い続けているものもあるのだとか。

高橋さん:
「このエプロンは、当時勤めていた『キャトル・セゾン』のフランス出張で出会ったもので、現地の市場でよく使われている業務用なんです。若い人からおじいちゃんまでこのエプロンを付けていて、それがとってもかっこよくて。

生地がとにかく丈夫で、使い始めて20年近く経つけど全然へたれないし、使えば使うほど体に馴染んできます。1着じゃ足りなくてオリジナルで作っちゃったくらい、手放せないものですね」

高橋さん:
「エプロンに限らず、“白”は身につけると気持ちがパキっと引き締まるのでお店に立つ時に着ることが多いですね。この白いブラウスも何年も着続けているお気に入りの1着。仕事柄、コーヒーの染みなんてしょっちゅう付くけど、洗えば落ちるし、やっぱり素材と縫製がいいものって繰り返し洗っても型崩れしないんですよね」

おろしたての白でも、くたびれた白でもない。高橋さんのこなれた白の着こなしには、ものへの愛情がにじみ出ているようです。

 

40代になってからは、本当に欲しいものを年に12着だけ

高橋さんが“定番”と呼ぶのは、「10年飽きずに使い続けられるもの」。20代、30代といろんな服を試してきたなかで、40代からは特にその基準を重視するようになったと話します。

高橋さん:
「たとえばリネンは使っていくうちにヘリンボーンの織り柄が浮き立って新品の時よりかっこよくなったり、革はツヤやシワが増して味が出たり、飽きるタイミングがなかなかこない。

だから定番の服を買う時は、色・形・素材を吟味して、本当に気に入ったものを年に12着だけ。……ごくたまに予定外の衝動買いをすることもありますが(笑)。素材や縫製がいいものはそれなりにいいお値段するので、たとえ破れたり穴が開いたりしても、可能な限りお直しして使い続けます」

 ▲剥がれたつま先部分を修理して10年履き続けているストラップシューズ

▲昨年新たに高橋さんのワードローブに定番入りした、シルクリネン素材のセットアップ

 

がんばった自分へのご褒美は、憧れのジュエリー

ここ数年は新しい定番のルールも。それは、年に一度、仕事をがんばった自分への“ご褒美ジュエリー”を買うこと。

高橋さん:
「お店を開くまでの約3年間は、開業資金を貯めるために服も小物もほとんど買わず、かなり倹約していました。なので、無事オープンして1周年を迎えた時、“自分、よくがんばった!”と、憧れのブランドのリングを思い切って買いました。昨年の2周年のときはピアスを買って。

私にとってはものすごーく高価なものなので、一生もの。この先も仕事をがんばって、節目に一つひとつゆっくり集めていけたらいいなと思っています」

 ▲写真上から、「マリーエレーヌドゥタイヤック」のムーンストーンのリングとハートモチーフのピアス。さりげないかわいらしさがお気に入りだそう

 

元気をくれる花、気持ちをリセットできる香り

服や日用品以外にも、高橋さんが大切にしている暮らしの定番=欠かせないものが、「花を飾る」ことと「香りを楽しむ」こと。特に色とりどりの花が出回るこれからの時期は、近所の花屋さんをのぞくのが楽しみなのだとか。

高橋さん:
「自宅でもお店でも、花を絶やさないようにしています。一輪あるだけで気分が華やぎますよね。いつも開店前に『あーかわいい〜』って独り言をつぶやきながら生けています(笑)」

香りのアイテムで愛用しているのはキャンドル、お香、ポプリなどさまざま。お店では朝と夜、その日の気分で使うものを選び、空間に香りをまとわせます。

高橋さん:
「疲れた時や気分を一新したい時は、好きな香りで自分を癒してあげるようにしています。お店はいろんな人が出入りするので、空間を浄化するというか、いつもの状態にリセットする意味でもなくてはならないもの。

最近のお気に入りは、『LO(ロー)』というイギリスのフレグランスキャンドル。すごく自然ないい香りで、外箱から中身までデザインも美しくて。少しずつ集めて楽しんでいます」

▲写真奥から、「LO(ロー)」のキャンドル、「サンタマリアノヴェッラ」のポプリ、「アスティエドヴィラット」のお香、「hibi」のお香スティック。天然由来の精油やハーブなど自然で上品な香りが高橋さんの好み

▲ハンドクリームも香り付きのものを愛用。お気に入りの「パニエデサンス」(左・中央)と「イソップ」(右)のハンドクリーム

いつもフラットな心で物事を楽しめるように、身につけるものやそばに置くものを選ぶ。高橋さんにとって定番とは、長く使えることと同じくらい、“自分のご機嫌をつくるもの”という視点を大切にしているのが伝わってきます。

続く第3話では、そんな高橋さんが40歳からのニュースタンダードとして楽しむ「ファッションとメイク」、そして日々大切にしている「あまやかしの時間」について、たっぷりと語ってもらいます。

(つづく)

 

【写真】佐々木里菜

 

もくじ

 

高橋美賀

東京・四谷にあるコーヒーとお菓子のお店「MOON mica takahashi COFFEE SALON」店主。ハンドドリップで淹れるコーヒーと生クリームたっぷりのプリンをはじめとした手作りおやつが楽しめる。昨年は自粛期間中にオリジナルプロダクトの通信販売や、まるでお店に居るかのような雰囲気が味わえるYouTubeチャンネルをスタート。さらに2021年からはコーヒー教室などのオンラインサロンを順次展開予定。

Instagram@micatakahashi

 

ライター 木下美和

編集・ライター。生活、ものづくり、地域にまつわる雑誌やwebを中心にインタビューやレポート記事を手がける。趣味は演劇鑑賞と郷土銘菓さがし。

 


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