【45歳のじゆう帖】変化するコンディションとつきあうこと
ビューティライターAYANA
見えていたはずのものが見えなくなった
いやあ、参りました。ここ最近、てきめん視力が落ちてしまったんです。もともと目はいいほうで、視力検査は基本的に1.5。若い頃から心身に不調が多い私ですが、目だけはいいんだよねとアピールしていたものです。それがどうしたことでしょうか。
45歳になり、老眼もごまかせなくなってきたのですが、深刻なのは遠くのものが見えない症状のほう。
道を歩いていて、あの看板の文字も読めない、あの時計の文字盤も読めないと愕然。先日かなり久々に映画館へ足を運んだのですが、後方の席で観賞したところ、画面の鮮明さに欠けることに気づいてしまいました。視界がいつも少し泣いているみたいにぼんやりとしています。
私のアイデンティティだった視力がいとも簡単に消え去ってしまったショックは想像以上に大きく、毎日朝起きて「今日も見えない」と落胆してしまいます。
きっと少しずつ視力は衰えていたのでしょうが、ある日突然気づくこの感じ、30歳のとき「これが肌のたるみか!」と鏡の中の自分に対して愕然としたのを思い出させます。
「疲れやすさ」も年齢とともに変わる
目のことに限らず、若い時には当たり前にあったものが、ある日突然なくなってしまう。そんな変化を実感することが増えました。そして、これからもどんどん増えていくのでしょう。それに対してどう向き合うか……、これから磨いていく価値のある術という気がします。
たとえば、仕事も育児も家事もなにひとつ満足にできず、そんな自分に落ち込んでしまう頻度が、去年あたりからぐっと高くなりました。
そうなるのは大抵夜の時間帯で、圧倒的に疲れているんです。その証拠に一晩寝ると、すっきりポジティブまではいかなくても、もう少し頑張ってみようかなと考え直したりできる場合が多いです。
若い時も体力はなかったですし、いつも疲れていた記憶があるのですが、だるくて眠くてめんどくさい、それを言うこと自体に勢いがありました(今思うと)。でも今の疲れって、突然抜き打ちで来るものって感じです。
登場頻度も高くて、昼に1回、夜に1回みたいな。そして一度きてしまうともう太刀打ちできない。「だる〜い!」とか言う元気も残ってない。
そうなると、一旦眠らないとどうにもリセットできず、人間として機能するのが難しい状態になってしまいます。そのくせ意識は大人だから、何もかも投げ出して疲れという沼にずぶずぶハマることが許せないというのでしょうか。
ご飯の支度をしたり、子どもをお風呂に入れたり、メールを返したりしなければならないと気ばかり焦るんです。
受け入れることから、少しずつ
どうしたって疲れてしまうのだということや、もう目が衰えてしまっているということを、受け入れるのはこんなに大変なのか、と思います。
そうじゃなかったのが当たり前だから、このネガティブな状態はいっときのことかもしれない、とつい期待してしまう。
そんな自分にひとしきり嘆いた後は、変化への対処法を楽しく練っていきたいものだな、と思います。
なかなか割り切れないですけれど、それでも折り合いをつけていきたい。そしてそれを「あきらめ」と呼びたくないという気持ちがどこかにあります。
先日、86歳になられた上皇后美智子さまが、以前のようにピアノを弾くことが難しくなってしまったことに対し「できていたのにできなくなったことは “お返し” したもの」と表現されていた、という話を聞きました。
思わず背筋が伸びたものです。人は何かを所有しているわけではなく、生きることを通して自分のなかにいろいろなものを出たり入ったりさせているだけなのかもしれない、と思います。
この「自分」だってそもそも借りものなのです。あまりいろいろなことに執着せず、変化を楽しめる気心を育みたいものだなと反省してしまいました。
また私は「等価交換」という概念をどこかで信じていて、手放したぶんだけ受け入れるものがある、と思っています。変化にともなう「不便」をどう工夫していくか、その体験を得られるというのもひとつ、豊かなことであるのかもしれません。
【写真】本多康司
AYANA
ビューティライター。コラム、エッセイ、取材執筆、ブランドカタログなど、美容を切り口とした執筆業。過去に携わった化粧品メーカーにおける商品企画開発・店舗開発等の経験を活かし、ブランディング、商品開発などにも関わる。instagram:@tw0lipswithfang http://www.ayana.tokyo/
AYANAさんに参加してもらい開発した
KURASHI&Trips PUBLISHING
メイクアップシリーズ
AYANAさんも立ち会って制作した
スタッフのメイク体験
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