【青葉家のテーブル 特別インタビュー】「まるで親戚のよう」リク・めいこ・ソラオが語る、ドラマと映画のはなし
ライター 藤沢あかり
6月18日(金)、いよいよ公開となる劇場版『青葉家のテーブル』
映画ではオリジナルストーリーとして展開されますが、YouTubeで好評配信中のドラマ版『青葉家のテーブル』を観ることで、その世界をさらに深く楽しんでいただけるはず。
ドラマ版で描かれるのは、日常の小さな物語。青葉家というひとつ屋根の下で暮らす、リク、めいこ、ソラオは、家族のようで家族でない、不思議な関係の3人です。だれもがちょっと個性的、そして愛すべき魅力にあふれています。
そんな3人を演じているのが、忍成修吾さん、久保陽香さん、寄川歌太さん。劇場版の公開を控えた今、改めて青葉家の魅力と見どころを3人に語っていただきました。
▲左手前から、リク役の寄川歌太さん、めいこ役の久保陽香さん、ソラオ役の忍成修吾さん。
——『青葉家のテーブル』、映画の完成おめでとうございます。今日は「青葉家」の一員として暮らした日々を振り返りながら、いろいろお話できたらと思います。
初めてこの『青葉家のテーブル』というドラマに触れたときは、どんなお気持ちでしたか?
忍成修吾(ソラオ・以下忍成):
「最初に読んだときは、ほっこりするお話に見えて、登場人物の関係性が実は複雑で、なんだかおもしろいなと思いました。シングルマザーと息子、母親の女友達に、その恋人ですもんね」
久保陽香(めいこ・以下久保):
「初めて台本を読んだあと、事務所の人に『私、これ好き!』ってメッセージを送ったのを今でも覚えています。目を閉じると、いろいろな情景が浮かぶようで、すごくわくわくしました」
寄川歌太(リク・以下寄川):
「僕はウェブドラマってあまりなじみがなくて。でも台本を読んでみると、『北欧、暮らしの道具店』のみなさんたちが作り上げてきた雰囲気が、台本に映し出されているのを感じました。そこに、監督さんのワードセンスというか、一人一人の役柄に合わせた空気が合わさり生まれているんだなぁと。
ひさしぶりの演技だったのですが、緊張しながらも撮影現場がすごくほっこりしていて、それも印象に残っています」
久保:
「青葉家の現場は、すごく穏やかなんですよね。誰もイライラせず、おおらかな空気があるんです」
(一同うなずく)
忍成:
「そうそう、焦ることはあっても、イライラはない。映画の現場はそれなりにバタバタしましたが、みんな優しそうに焦っていました(笑)」
——それぞれ個性的な役柄ですが、みなさんどのように役作りをされたのでしょうか。
忍成:
「ソラオは、ちょっと抜けているというか独特のリズムの人。でも優しい、やわらかい印象だなと思いました。演じるのも肩の力を入れずにできるので、やりやすかったです。それに、青葉家の現場に入っていくと、あの空気感があるので、自然と自分もソラオの雰囲気になれましたね。
最初に気をつけたのは、リクとの距離感です。めいことは大人同士ですが、リクにとっては、お母さんの友達の恋人が転がり込んでくるわけじゃないですか。ベランダをつたって窓から部屋に入ってくるようなぶっ飛んだ行動もあって、それってどんな関係性なのかな、って。僕は男兄弟がいなかったので、その年頃だったらどんなふうにソラオを受け入れていたんだろうと考えました」
久保:
「めいこは、私から見てもかっこいいな、こんな友達がいたらなと思える憧れのような存在です。芯があって、でもやわらかくて、みんなのなかにふわっと溶け込めるような存在を出せたらと思いました。あとは、型にはまらないキャラクターだから、のびのびできたらいいなって。
スタッフさんたちが、めいこっぽい髪型やメイク、ネイル、ファッションをたくさん提案してくださったんです。だから現場に行くとだんだんスイッチが入り、一緒にめいこをつくっていけたこともありがたかったです」
▲4話目でめいこが履いているのは、アボカド柄の靴下。こんな小さなところにも ”めいこらしさ” が。
——めいこは関西弁も印象的でした。久保さんご自身も関西ご出身だそうですね。
久保:
「はい。でも実は、最初の設定では、関西弁ではなかったんです。読み合わせの時に、なにかめいこにキャラをもたせたいねって話していたんですが、ポロっと出てしまった関西弁を、西田尚美さんが『それ、いいじゃん!』って。ありがたいことに、その一言で決まった感じでした」
寄川:
「僕も関西出身なので、リクがめちゃくちゃよくしゃべるキャラクターだったら、絶対めいこに釣られていたと思います(笑)。
初めて演じたときは、リクが僕のひとつ年下で。リクは音楽に対してのめり込んでいるのですが、僕にとっては演技がそういう存在です。だからジャンルは違っても、好きなものに対する行動の仕方とか、感情表現とか、リクに共感できるところがたくさんありました。
リクは、どこかみんなに甘えているところがあります。誰かを頼ろうとしたり、人に何か言われてから行動したり、僕にもちょっとそういう似た面があるのかもしれないですね」
——ドラマ4話のなかで、印象に残っているシーンや、特にお気に入りだという場面があればぜひ聞かせてください。
忍成:
「一番は、1話でリクと踊るところかな。夜に窓から忍び込むシーンのなかですが、そこで2人の関係性や、ソラオの性格、人間性などいろいろな面が表れていると思うし、すごく好きですね」
久保:
「お料理が印象的ですが、インテリアも実は毎回少しずつ変わっていて、見るたびに新しい発見があるんです。
私のお気に入りのシーンは、2話の、めいこがソラオに恋する瞬間。短歌が出てくるんですが、もう台本からキュンキュンしちゃって。
それから、1話目の春子さん(西田尚美さん)との掛け合いに出てくる、『くらしきらりら』という言葉がほんとうにお気に入りです。たった一言だけれど、すごくきれいだし、すてきで、それだけでいろいろなことが伝わってくるような。ふとしたときに思い出したり、口に出したりするくらい好きな言葉です」
▲2話目ではめいことソラオが暮らす部屋のシーンも。リビングとはまた違ったインテリアにもご注目。
——「青葉家のテーブル」は、食卓シーンも見どころのひとつですよね。
忍成:
「3話目の撮影で、生姜焼きを食べすぎちゃったことがあったなぁ。カットの声をもらってすぐ、もりもり食べていたら、しまった、まだ使うんだった、生姜焼き足りないぞ、って。あ、食べちゃいました、みたいな(笑)」
久保:
「2話目の山盛りサンドイッチのシーンは、みんなが口々においしかった〜って戻ってくるから、私も食べたい!ってお願いしちゃいました。お持ち帰りにも包んでもらったくらい!」
寄川:
「僕は2話目で、ソラオと一緒にフライを作っているシーンが印象的です。青葉家で、唯一僕がちゃんと作っているシーンかなぁ。普段あまりやったことがないので、箸で具材を持って卵につけて、というのがなかなかうまくできなくて苦戦したからよく覚えています。ソラオとの仲の良さも感じられるシーンです」
忍成:
「食べ物といえば、これはリクが嫌がるかもしれないけど……ツルーン!の卵のシーンも最高だったよね(笑)」
久保:
「そう! 私も卵を思い出してた!」
寄川:
「あれか〜! 朝ごはんのシーンで卵かけご飯が出てくるんです。僕は、卵を先に溶くよりもご飯の上に直接パカッってやるスタイルがいいなと思って。でも、ご飯がすごくきれいな山型に盛られていたんですよね……。パカッとやった瞬間、卵がテーブルの上にツルーンとスライディングしていきました(笑)」
久保:
「漫画みたいだったよね、映像が残ってたらいいのにって思うくらい!」
——4話を通じて、みなさんの現場の空気がなじんでいく様子が伝わってきます。久しぶりに映画で顔を合わされて、いかがでしたか?
忍成:
「僕は、親戚に会うような気分でしたね。久しぶりだし、ちょっとずつみんな年齢も違っていて、久しぶり〜最近どうしてたの?みたいな。リクなんて、お前おっきくなったなー!って。ほんとうに親戚が集まったみたいな感じでした」
寄川:
「僕、最初の頃に忍成さんに、『実はファンで……サインお願いします』って伝えていたんですよ。緊張からのスタートでしたが、4人で食卓を囲むシーンが多いので、カメラが回っていないときも自然とみんなでしゃべっていて、いつの間にか近所のお兄さんみたいな存在になっていました。映画の話を聞いたときにも、『またみんなに会えるんだ』って、僕も親戚みたいな気持ちでしたね」
久保:
「映画も、相変わらずおだやかな空気でしたよね。やっぱりこの青葉家の空気は変わらないなぁと思いました。映画のときはケータリングも豚汁だったり焼き鳥だったり、いろいろとおいしいものを準備していただいて、それもうれしかったです」
——ドラマと映画、それぞれに魅力がありながらも、みなさんの変わらない愛情を感じられてうれしいです。最後に、これから初めて『青葉家』に出会うという方、そして映画を楽しみにしてくださっている方たちへ向けてメッセージをお願いします。
忍成:
「ドラマは、疲れて帰った時なんかになんとなく付けてみたら、実は引力が強い。その世界観に浸らせてくれる作品だと思います。すごくいい時間をつくってくれる作品だと思うので、自分のスイッチを切り替えたいようなとき、何度でも観てほしいですね。
映画は、もうとにかく青春って感じです。普遍的な若い子たちのエネルギーが詰まった群像劇で、自分自身の過去につながる懐かしい気持ちもありますし、今見ても感動できます。若い人から、懐かしんで振り返りたい人まで、どの世代が見てもその時代を思い出して共感できるし、キラキラしている。それって、すごいなと思います。
個人的には、ソラオがたくさんキッチンに立っているので、ちょっと注目してみてください」
久保:
「『青葉家のテーブル』は、その時々の自分に寄り添ってくれる作品だと感じています。前に観たときは気に留めなかったのに、次に観た時にはすごく響く言葉があるんです。忍成さんがおっしゃっていたように、ほっとしたい、安心したい、癒されたいと思うときに、ふとつけているだけで心地のいい作品なので、ぜひ観ていただきたいです。
映画は、試写のあと思わず佐藤さん(店長)にハグしちゃったんです。うわー、よかったー!って。懐かしさやしあわせ、わくわく感、そういうのがいっぱい沸いてきて、ポンと出てくる言葉にすごく救われる感じもあって。帰り道も、すごく軽い心になっていました。思わず親にも、『公開されたら観てね』って、すぐ連絡しちゃったくらい。私たちの親世代の人にもぜひ観てほしいですね」
寄川:
「これまでの青葉家は4人で雰囲気をつくってきたので、台本を読んだときは新しいキャラクターが入ってどんなふうになるんだろう、僕もしっかり青葉家の雰囲気を出していかなくちゃ、って少し緊張していたんです。でも実際に始まってみると、やっぱり青葉家は青葉家。いい意味で変わりませんでした。
ドラマも何度も観たくなるような作品だから、映画もきっと、繰り返し観たくなると思います。
あとは僕が、ドラマの頃よりちょっと大人になっているので、そのあたりも観ていただけましたらうれしいです(笑)」
ドラマ『青葉家のテーブル』
全4話はこちらからご覧になれます
映画は6/18(金)〜全国劇場にて公開!
特別パンフレット付き前売り券がまもなく発売予定です。数に限りがありますので、ぜひお早めにチェックしてくださいね。
映画『青葉家のテーブル』
公式ホームページ
【写真】木村文平
【ヘアメイク】タケダナオコ
【スタイリスト】樽山リナ
【衣装協力】
〈忍成修吾さん〉
シャツ¥24,200、パンツ¥22,000/ともにフランネルソル(ブルーム&ブランチ)、中に着たTシャツ¥ 11,550/フィルメランジェ、メガネ¥64,900/ミスター ライト(コンティニュエ)、スリッポン¥43,780/トウキョウ サンダル(ザ ブーツ ショップ)
〈久保陽香さん〉
ブラウス¥16,500、パンツ¥12,100/ともにノンブルアンペール、イヤリング¥6,050、バングル¥5,280/ラピエサージュ
〈寄川歌太さん〉
スウェット¥ 30,800/フィルメランジェ、中に着たTシャツ¥8,800、パンツ¥19,800/ヴェリテクール、スニーカー/スタイリスト私物
問い合わせ先
フィルメランジェ https://filmelange.com/
ヴェリテクール http://veritecoeur.com/
ブルーム&ブランチ青山 Tel: 03-6892-2014
ザ ブーツ ショップ http://craftbank.net/tokyosandals/
コンティニュエ Tel: 03-3792-8978
ノンブルアンペール http://www.rolladex.co.jp/nombreimpair/
ラピエサージュ http://www.rolladex.c.jp/rapiecage/
忍成修吾
1981年生まれ、千葉県出身。主な出演作に、映画『本気のしるし』『VIDEOPHOBIA』『シライサン』(20)、ドラマ『人生が楽しくなる幸せの法則』(19)『ぴぷる〜AIと結婚生活はじめました〜』(20)『レッドアイズ』(21)、舞台『迷子の時間-語る室2020-』など
久保陽香
1987年生まれ、兵庫県出身。主な出演作に、映画『たまゆら』『見栄を張る』(18)『くだまつの三姉妹』(19)、ドラマ『CHEAT〜詐欺師の皆さん、ご注意ください〜』『Stand By You』(19)『呪怨 呪いの家』『妖怪人間ベラ』(20)など。旅番組『はるさんぽ。』でメイン旅人として出演。
寄川歌太
2004年生まれ、大阪府出身。2010年、歌舞伎 平成中村座の出演をきっかけに俳優活動を開始。主な出演作に、映画『たぶん』『滑走路』(20)、ドラマ『宮本武蔵』『ボーダーライン』(14)『死役所』(19)など。21年に映画『燃えよ剣』の公開を控えている。
藤沢あかり(ライター)
編集者、ライター。大学卒業後、文房具や雑貨の商品企画を経て、雑貨・インテリア誌の編集者に。出産を機にフリーとなり、現在はインテリアや雑貨、子育てや食など暮らしまわりの記事やインタビューを中心に編集・執筆を手がける。
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