【45歳のじゆう帖】嘘っていけないこと?
ビューティライターAYANA
嘘がつけない性格は立派なのか
嘘はつかないに越したことはない、とずっと思っている節があります。
それはなぜか。私の性格に起因しています。私はとても単純な性格をしていて、さらに忘れっぽいため、嘘をついてしまったこと自体を忘れてしまう危険性があるのです。そうすると話の辻褄が合わなくなり、嘘が機能しないばかりか信用をなくしてしまう。誰かに迷惑をかけることもあるかもしれない。それが怖いのです。
それで寡黙ならまだ救われるのですが、小さな頃から、思ったことをすぐに口に出してしまうほうでした。例えば「今日のごはん美味しいね」と「今日のごはん全然おいしくないね」を同じ温度で口にしてしまう。
後者は言い方に配慮するとか、そもそも言う必要ってあるの?など考慮の余地がある発言ですが、そういったことについて問題視する素地がありませんでした。
この性質、本当に褒められたものではありません。素直であることは長所にも短所にもなるということを理解したのは、社会人になってからだったと思います。使い方を間違えれば「失礼な人」「空気の読めない人」「気の利かない人」になりやすい。
会社員の頃はよく「それは正論だ」と言われては「正論の何が悪いんだろう?」と思っていました。正しいのだから、いいじゃないかと。
ものには言い方があるし、必ずしも言う必要があるわけではない、少しずつ現場で(傷つきながら)学んで生きてきたような感覚があります。
私の不用意な物言いで、不穏な空気になったことや、嫌な気持ちになった人の存在が、きっとたくさんありました。
「嘘は罪」と教えるアーユルヴェーダ
もちろん、誠実であることには大きな価値があると思っています。
インドの生命科学アーユルヴェーダの教えに「ラサヤナ」というものがあります。これは「長寿法」みたいなもので、薬草のラサヤナと行動のラサヤナがあります。
薬草は、それぞれの体質や生活習慣にあわせて処方されるもの。でも、それをしっかり服用しても、行動のラサヤナが伴っていないと効果は半減するとされます。では行動のラサヤナとは何か。これは日々の心がけのようなものです。具体的には以下のように記されています。
・常に正直であり、真実を語る
・他人を傷つけず、思いやりをもって接する
・優しい話し方をする
・休息と活動のバランスがとれた規則的な生活
・過度な緊張や怒りから解放される
・決して無理をせず、穏やかで平和的である
・自己本位にならない
・行儀を良くする
・物事をシンプルにする
・暴力に訴えない
・清潔にする
・飲酒や性行為にふけらない
・こころから尊敬すべき人を尊敬する
・定期的な寄付をする(知識、食物なども含む)
・瞑想を実践する
・パンチャカルマ(健康のためのトリートメントのようなものです)を受ける
・何かをする際に、正しい時、場所、量をよく知る
・年長者や高い知恵を持った人に仕える
これらは非常にまっとうなことであると理解できます。アーユルヴェーダでは特に嘘をつくことは大きな罪であると定義されているように感じますが、これは私にとってとても嬉しいことでした。
そうか、嘘をつかないほうが偉いんだ、私にはその素地があるのだからラッキーだな、と思えたんですね。この「行動のラサヤナ」はずっとスマホにメモ書きしていて、機種変更しても必ずデータを移して大切にしています。
ひとつひとつを、一緒に考えていく
最近、小学1年生の息子が少し嘘をつくようになってきました。
といっても可愛い嘘です。たとえば動画を1本見たら終わりにしてね、と約束したのにそれ以上見てしまう。私は別室で他のことをしていて、いちいち監視はしていないので、その状況で小学校1年生、ましてや次の話のサムネイルなどが出てきてしまう状況で、切り上げられるほうが稀有だと思います。
見てしまうことについては私の監督不行き届きとしか言えませんが、私が様子を見に行くと、急いで電源を消して「1本しか見てない」と言う。
あるいは宿題をやりたくないから「今日はやっていかなくても大丈夫だよ」などと言う。そんなレベルの嘘です。
ちょくちょくこのような状況に直面することが増え、そのたびに嘘をつくのはやめて欲しいと言うは言うのですが、なぜ嘘がいけないのかということについて、明瞭に説明できない自分を自覚するようになりました。
これまでも息子には「嘘をつかないでほしい、私は嘘をつくのが好きではない」と言ってきました。でもそれって結局、自分(私)の性格に嘘をつくことがフィットしないから、嘘を好まないだけなのでは?と考えると、そんな気がしてしまうのです。
もちろん、人を騙して陥れるのはよくないことですし、自分を偽るのは自分のためになりません。ですが、それを大きく「嘘」とまとめてしまっていいのか。とても難しい問題です。
美しい嘘というものもありますし、その嘘が物事を解決することだってあります(アーユルヴェーダの教えには反してしまいますが)。嘘をすべて排除することが善、のように教えるのはどうなのか。
「嘘はダメ」という概念を持つとき、自分ひとりなら「私はこういう人間だから」で済みますが、それを息子に説明する段になると、それが好みの押し付けのように感じられてしまうのです。
嘘がもたらす悲劇を、具体的な例とともに説明しながら「あなたはどう思う?」と一緒に考えるのが、きっと理想だなとは思っています。まだそういう話をするには少し早いので、今のところは「私は嘘を好まない」という好みベースで訴える段階ではあるのですが。
【写真】本多康司
AYANA
ビューティライター。コラム、エッセイ、取材執筆、ブランドカタログなど、美容を切り口とした執筆業。過去に携わった化粧品メーカーにおける商品企画開発・店舗開発等の経験を活かし、ブランディング、商品開発などにも関わる。instagram:@tw0lipswithfang http://www.ayana.tokyo/
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