【エッセイラジオ】第39夜:山本 ふみこさんのエッセイ「ゾロ目」(読み手 スタッフ鈴木)
編集スタッフ 鈴木
今日も1日おつかれさまでした。
皆さんこんばんは。日曜日の20時、いかがお過ごしでしょうか?
週末でリフレッシュされた方や、明日からの一週間に備えて気持ちを整えている方、思い思いの時間が流れていることと思います。
そんな誰もがほっと一息つきたい時間に「おつかれさま」の気持ちを込めて、「エッセイラジオ」をお届けします。
思うようにいかなかった昼間の出来事や、いつも心の端に引っかかっている悩み事など。生活していると日々色々とありますが、このラジオを聴いているその時間だけは、一旦それらを手放して、ゆったりと声に身を任せていただけたら幸いです。
今夜のエッセイの書き手は、随筆家の山本ふみこさん。読み手は、当店スタッフの鈴木です。
ではさっそく、今夜のエッセイの世界へ、どうぞいってらっしゃいませ。
ゾロ目
山本 ふみこ
ある日。
2階の夫の仕事場の掃除をしていました。
この部屋は通りに面していて、
ときどき、おもての音が飛びこんできます。
小学校の通学路で、ひとと自転車の通り路です。
「がんばってね がんばってね がんばってね」
歌うような声が聞こえてきました。
床をごしごし拭く手を止めたまま、
わたしときたら坐りこんでいます。
窓の下をそっと覗くと、
保育園の子どもたちの行列が見えました。
「はい、がんばりますっ」
そう云って立ち上がり、
わたしは掃除をつづけます。
頑張るということばを好きかどうか
なんてことは、どうでもよろしい……。
ありがとう、すっかり勇気づけられて、
しゃんとしました。
ある日。
仕事先からの帰り道、
少しばかりくたびれて歩いていました。
「あ」
真っ赤な夕焼けです。
夕焼けが「お疲れさん」と
声をかけてくれているようで、
思わず涙ぐんでしまいました。
ある日。
ふと時計に目をやると、「22 : 22」。
なんてうれしい……。
わたしは数字の「2」とゾロ目が
大好きなのです。
「きっと、いいことあるな」
とうかれています。
子どもたちの歌も夕焼けも「22 : 22」も、
わたしに向けられたものではないことは
わかっていますとも。
わかっているけれども、
メッセージや褒美を受け取るような
気持ちになるのです。
こういうことで自分を持ち上げ持ち上げ
(いえ、持ち上げてもらいながら)
やってきました。
受け取るだけでなく、
手渡せたならいいのにな、と
最近考えるようになっています。
しっかり分別してゴミを出す。
すれ違う相手に道を譲る。
落し物を拾って届ける。
お店のひとに「ありがとう」を云う。
何でもないように見えるこうした事ごとも、
ひとつひとつ、誰かさんへのメッセージに
なってゆくのじゃないでしょうか。ね。
いかがでしたか?
ほんの数分ではありますが、心の緊張がほどけたり、すうっと眠りに入るきっかけとなれたなら、これほど嬉しいことはありません。
次回の配信も、どうぞ楽しみにしていてくださいね。
エッセイラジオを通して、このささやかなエールが届きますように。それでは、おやすみなさい。
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