【ゼロからのふたり】後編:紆余曲折のバックボーンが、ちょっとずつ繋がって(佐藤 × 高山)

ライター 長谷川賢人

ふだんはせわしなく、仕事と向き合うクラシコムのスタッフたち。ゆっくり、じっくりと、お互いのこれまでを振り返って話す時間は……実はそれほど多くありません。

でも、あらためて話してみると、人となりがもっとわかったり、新鮮な発見が得られたりするもの。そこで、スタッフ同士でインタビュー(というより、おしゃべり?)してみる機会を持ってみることにしました。

オリジナル商品をつくる「PB開発グループ」のスタッフ佐藤と、BRAND NOTEなど企業とのタイアップ企画をプロデュースする「事業開発グループ」のスタッフ高山が登場。

実は、それぞれのグループがクラシコムのなかで立ち上がったときに入社し、自分たちの仕事を一つずつ作り上げていった共通点を持っています。今ではマネージャーを務めている、そんな “ゼロからのふたり”のおしゃべり、後編は高山が入社するまでの日々からはじまります。

前編を読む

 

夢中になっていたことを、一度は仕事にしてみよう

佐藤:
社内でのお祝い事や集まりとか、いろんなところで高山さんは率先して動いちゃう人だと感じるんです。ムードを作ってくれるというか。

高山:
そういう役回りも必要ですよ(笑)。

佐藤:
きっと、これまでのクラシコムには、ちょっといなかったタイプなんだろうなって。生まれも育ちも、大学も関西でしたよね。どういう経緯で入社することになったんですか?

高山:
クラシコムは4社目なんです。新卒で務めたのは大阪の不動産会社だったんですけど、入社する前にリーマンショックが起き、入社式で社長から「ここからは困難が待つ冬の時代だ」なんて言われて。

佐藤:
入ったばかりなのに!(笑)

高山:
営業職でしたが、だんだんと「もっと自分が好きなことをやりたいな」と考えたとき、学生時代にずっとアルバイトしていた​​、音楽をたっぷりかけて踊るナイトクラブが浮かんできました。

「一度はしっかり働いてみてもいいかもしれない」と運営会社へ転職しました。音楽イベントの企画や興行と、店長業務もしてみたり、半年間は「本場で修行してこい」とロンドンで遊学的に語学学校とクラブ漬けの日々を送ってみたり。

佐藤:
イベントの企画……今のプランニングのお仕事に、すこしつながってきましたね。

 

自分たちで作ったコンテンツの価値を発揮できる仕事って?

高山:
その大阪のクラブが諸事情で閉店が決まって、転職活動でそれこそ広告代理店なども受けたのですが、もっと自分たちで作ったコンテンツが価値を発揮できる仕事がしたい、と思うようになっていって。

そこで、元オーナーの知り合い伝てに「東京で人を探している」と誘われたのが、10代20代で子育て奮闘中のママ、当時は “ギャルママ” という系統だった方たちを対象にしたイベントの仕事でした。イベントの企画はできる、あとはママの気持ちを理解していければできるかな、と思ったんです。

佐藤:
大事にしたかったコンテンツの部分がギャルママなわけですね。

高山:
そうそう! それで、入社してみたら実は編集プロダクションやウェブ制作も営む会社で。その会社は、ギャル文化の代名詞ともいえる雑誌を請負で制作していたのですが、読者であるギャルたちがママになって卒業してしまうと「その人たちに寄り添える雑誌が無い」と考えて、ギャルママ向け雑誌を立ち上げたりしていました。

さらに、つながりができたギャルママ読者モデルの事務所的な機能を持ったり、読者コミュニティをつくって企業向けのイベントをしたり。

佐藤:
メインの読者はギャルママですけれど、対象だけを変えてみると、クラシコムの仕事にだんだんと近づいているのを感じます……!

高山:
そこで僕は北海道から福岡まで、1年間通してキャラバンしていくギャルママ読者イベントの企画と運営をしていたのですが、本当にたくさんのママたちが参加してくれました。ギャルママ同士でつながりたい、子どもが楽しめる場に行きたい、親子で楽しい思い出をつくりたい……みたいに、みんな秘めた思いがそれぞれにあって。

だから、子どもが楽しめるコンテンツも用意しましたし、それこそ地域連携が鍵になるので企業や行政も巻き込んだり。各地域に点在するギャルママサークルに連絡して、子連れでも安心できるカラオケのパーティールームに集まってもらい一致団結したり(笑)。実行委員会にもギャルママに加わってもらって、一緒にイベントをつくりあげてもらえるようにもしましたね。

でも、次第に時代の変化もあって、会社としてもイベント事業が難しくなっていって。ただ、コンテンツを作る企画力や編集力はありますから、それを活かして企業向けコンテンツを作るように変わっていったんです。

 

ありがとうと言われる広告、のはじまり

佐藤:
その企業向けコンテンツでクラシコムと出会った、とか?

高山:
ほぼそんな感じです。ざっくり言うと、僕らが運営しているメディアに、クラシコムが求人情報を載せたいという問い合わせをもらって。そこから青木(代表)さんとつながったんですね。

その後に、クラシコムが広告事業を始めようとするタイミングで、青木さんと何度か食事をしながら広告への考えを話しあったりするうちに、声をかけてもらって入社を決めました。

佐藤:
何が決め手になったんですか?

高山:
その頃から「ありがとう、と言われる広告をやりたい」という青木さんの考えは一貫していて、それに純粋にワクワクしました。だから、今でもクライアントと実施するいろいろなお取り組みの根幹は変わっていないんですね。

ただ、「北欧、暮らしの道具店」にまつわるカルチャーや世界観に向き合ってきたわけではないから、「僕みたいなバックボーンを持つ人が入社してほんとに大丈夫ですか?」とは15回ぐらい聞きました(笑)。でも、青木さんとしても「そういう人が必要な時期だ」と考えていた時期だったみたいです。今思うと、本当にそういうゼロからの状態で始まったほうが、自分には向いていたかもしれないですね。

佐藤:
私もゼロからの立ち上げだったので共感しちゃうのですが、カルチャーも含めてわかっていかないといけないなら、なおさら大変だったんじゃないですか?

高山:
ギャルママのときも、距離が近い読者たちからリアルな声を受け止めたり、話し合ったりしていくと「人と成り」がわかっていくもので。クラシコムスタッフは多くが元読者なのでそこは、かなり助かりました。会社としても、意外にみんなワイワイするのが好きだし、それこそ僕みたいな盛り上げ役も受け入れてくれるくらいだから嬉しかったです(笑)。

入社前に聞いた「大丈夫ですか?」みたいなギャップはほとんど感じなかったけれど、仕事としては、なんとなく構想をまとめた資料があるだけで、「やるべき予定」は何もない状態。だから、考えて動くしかなかったんです。

まずは前職でつながっていた広告やクリエイティブ業界の人と、青木さんを伴って1ヶ月半くらいは会いに行きまくりました。青木さんが構想を話して、僕がその話を頭に入れつつ……みたいな。必死でした。

佐藤:
私にとってのバブーシュみたいに、初期で印象に残っている仕事ってあります?

高山:
BRAND NOTEでキヤノンさんとお取り組みした「Canon EOS M10編」ですね。原宿で「Canon EOS M10」のイベントを開催していたところにお客さんとして参加しながら、「当店とも親和性が高いと思うんです」なんてその場にいた社員さんと名刺交換して繋がりを作って……うちでも実施が決まったときは嬉しかったなぁ。

そのあたりから仕事の進め方も含めて、僕という存在の実態が社内になんとなく見せられたんじゃないかと思います。

佐藤:
高山さんのパーソナリティとして、やっぱり「巻き込み力」があるなぁってあらためて思いますよ。

高山:
なるほどなぁ。自分としては「盛り上げ役を務める」みたいなことも含めて、その場における “役割” を意識している感じが強いのかも。クラブで働いていたのが大きくて、音楽があって、DJやVJが回して、お客さまやスタッフがいて、それぞれが噛み合って「ここが最高の空間!」と思えるときが一番楽しかったから、染み付いているんだと思います。

佐藤:
そう言われると、よりわかる気がします。良い意味で、高山さんの中に「いろんな高山さん」が居て、それらを使い分けているようなイメージです。素敵なバランスですね。

 

バランス感覚と、自己開示がしやすい環境

佐藤:
チームメンバーとのコミュニケーション、まだまだうまくできなくて悩みますね。

高山:
佐藤さんも僕も、それぞれのグループでマネージャーになって、戸惑うこともあるじゃないですか。

佐藤:
そうですねぇ……。

高山:
マネジメントも大変なことがあるはずなんですけど、そういう経験ができるのは、自分としてはありがたいって最近は思っています。僕は前職まで、ずっと「個としてのスキル」を高めて、もっと良い企画ができるプランナーになりたい、とばかり考えていたんです。でも、今の立場になってみると、それこそ自分の役割はそこになくて。

佐藤:
(前編で話した)事業と自分の認識を切り分けて考えると、という部分でもありますよね。

高山:
あとは、スタッフには「素直な人が多いな」って感じるんです。自己開示がしやすい人、というか……。

佐藤:
あぁ、わかります。私はあんまり得意なほうではないんですけど……。

高山:
いや、僕もです(笑)。日々起きた良かったことや困りごと、それこそ「今こんなことが不安です」ということも正直に言ってくれて。青木さんや店長の佐藤さんも含めて、自分のことを率直にみんなとシェアしやすいのは、クラシコムの特徴かもしれない。

佐藤:
全体会議で各チームの担当者が発表をするときも、みんな自分の “小話” みたいなことを持っていて、それを聞いたりできるのもいいですよね。自己開示しやすい環境というのは、本当にそうかも。

 

クラシコムで学んだブランドの作り方を、言葉にしたい

佐藤:
私も聞かれたので聞き返してみると、高山さんが「これからやってみたいこと」って、ありますか?

高山:
「北欧、暮らしの道具店」として実践してきたブランドの作り方を体系化してみたいんです。それを言葉にできれば、いろんな企業にとっても何か参考にしていただける要素があるはず。それを元に、新しい事業をつくることもできるかもしれないですしね。

立ち位置的にも営業の観点的にも僕の役割だと思いますし、今後に発展する可能性があるなと思いつつ。

佐藤:
クラシコムのことを参考にしたい、という企業の方々からも需要もありそう!

高山:
中からの見え方と、外からの見え方って違うものですからね。チームメンバーとの雑談で何の気なしに言ったら、みんなが反応して「それは絶対に必要です!」って。そこから個人ミーティングで「最後に聞きたいことあります?」と聞くと、「高山さんはいつ取り掛かるんですか?」なんて迫られるように(笑)。今すぐは難しいけれど、挑みたいですね。

(おわり)

【写真】川村恵理

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