【タイムトラベラーなふたり】後編:正しさよりも、なぜそれをしたいのか。システムでも「動機」が大切(廣瀬 × 緑川)

ライター 長谷川賢人

ふだんはせわしなく、仕事と向き合うクラシコムのスタッフたち。ゆっくり、じっくりと、お互いのこれまでを振り返って話す時間は……実はそれほど多くありません。

でも、あらためて話してみると、人となりがもっとわかったり、新鮮な発見が得られたりするもの。そこで、スタッフ同士でインタビュー(というより、おしゃべり?)してみる機会を持ってみることにしました。

今回は、当店のサイトづくりやショップのシステムなどを形づくる「テクノロジーグループ」の廣瀬と、オリジナル商品をつくる「PB開発グループ」でも主にアパレルを担当する緑川が登場。

エンジニアとアパレルという、一見すると重なりが無さそうなふたり。でも、話していくうちに「誰かとものをつくる」ために大切にしていることや、そのために準備していることなど、意外な共通点が見えてきました。

その一つが、目の前の仕事を「今」だけではなく、「過去」から学び、常に「未来」とつなげながら考えること。そんな“タイムトラベラーなふたり”ですが、クラシコムで働いていくなかで、あらためて自身に「変わったこと、変わらないこと」もあるのでしょうか?

後編は緑川が主に聞き手となって、廣瀬に色々と質問してみました。
前編を読む

 

演劇青年、エンジニアになる

緑川:
昔からプログラミングやエンジニアリングに興味があって、今の仕事をしているんですか?

廣瀬:
それが全然違っていて、ずっと演劇をやっていたんです。高校で入った演劇部がすごく楽しくて、「将来は演劇で食べていこう」と志していました。出演もしていましたが、僕としては脚本を書いたり、演出をしたりするほうがメインで。

緑川:
演劇! それがどうして、エンジニアの道に?

廣瀬:
小学校6年生のときに、祖父からパソコンを買ってもらっていて。父が自分のホームページを作っていたのを見て、僕自身も作れるように勉強を始めていました。それで知識があったので、大学生のときに関わっていた劇団のホームページの更新係を務めたんです。結局、演劇では僕としては花が開かず、一区切りして地元へ戻って働くことに決めました。

演劇漬けの毎日で、自分に何ができるだろう……と思ったときに「ホームページが作れる」と思い出したんです。地元に未経験でもアルバイトができるホームページ制作会社を見つけて、そこで働きながら技術を学んでいったのが、僕のエンジニアとしての始まりです。だから「エンジニアになろう!」と思った瞬間って、一度もなくて。

緑川:
そうして働くうちに、だんだんと自分の仕事としても確立していったんですね。

廣瀬:
そうですね。仕事は楽しいと思えましたし、劇団でホームページの更新係をしていたときから「インターネットってすごい!」とは感じていて。僕が所属していたアマチュア劇団でも広い世界に何かを発信して、チケットを買う申し込みフォームも用意できる。インターネットで世の中が便利に、何かがもっと良くなっていく感覚がありました。

 

社内エンジニアだからこそ、できる仕事がしたい

緑川:
テクノロジーグループのみなさんって、お客様が触れるお店のところから、私たちが仕事を進めるためのシステムなど、ほんとうにさまざま携わっていますよね。

廣瀬:
緑川さんたちが商品を作る役割なら、僕らは「北欧、暮らしの道具店」の店舗を作る役割と言ってもいいかもしれないです。ウェブサイトやアプリはもちろん、購入した商品がお客様に届くまでのシステムも改善しています。他にも、緑川さんが言ってくれたように、クラシコム社内で使うシステム作りも仕事の一つですね。

つい最近までは、商品を置く倉庫との連携システムを改修していました。クラシコム社内の人も、倉庫ではたらく人も、どういうふうに業務を進めているのかを知りながら、全体設計を含めて「よりよい形」にしていくような仕事です。1年がかりで出来上がり、ようやく一段落した気持ちでした。

緑川:
私たちだと商品を無事に発売して、お客様からの反響でひと心地つくこともあるんです。システムって毎日使われるもので、さらに長い目で見ないといけませんよね。廣瀬さんたちの仕事だと何かを公開した後も続いていくから、「やりがい」みたいなことって、どういうときに感じることが多いですか?

廣瀬:
一番わかりやすいのは、お客様が喜んでくれることであったり、「アプリが使いやすいです」なんて感想は素直に嬉しかったりします。社内システムにしても「便利になった」という声が聞けるとよかったな、と感じます。個人的な考えとしては、クラシコム社員のエンジニアとして、「社内にいるからこそできること」をやれたときですかね。

業界的にもよくあるケースが、発注主が作ってほしいシステムなどを、外注先が依頼どおりに作って納品する、という進め方です。そうではなくて、社内からの求めにも社員エンジニアだからこそ「もっと良い方法があるはず」とか、「このシステムを使えば実現できそう」とか、こちらから提案もしたい。

「システムやプログラムで何ができるか」を一番に知っているのは自分たちのはずですから。僕はそれができているとき、クラシコムで働いている意味が得られると感じるんです。

 

自分の考えを言葉にして伝える、という日常

緑川:
いつも、業務やシステムの改善のスピードがすごく速くて驚かされます。産休で1年間、お休みして戻ってきた人が「まるで浦島太郎のよう」と笑っていて(笑)。

廣瀬:
それができるのは、業務やシステムを変えることに、みんなの抵抗感が無いからなんです。

緑川:
たしかに! みんなが前向きでないと難しいですよね。

廣瀬:
業務やシステムを変えることについて、最も大変なのは「変えたくない人を説得すること」だと思っています。プログラムを書くより、よほど難しいでしょう。でも、クラシコムだと僕らが「こんなふうに変えたい」と提案すると前向きに捉えてくれて、スケジュールや内容について建設的な話ができる。これまで働いてきた環境からしても驚きますよ。

僕らとしても、受け入れてくれることに対して、できる限りのことをしないといけないな、という気持ちも湧きます。

緑川:
アパレル業界も、FAXで注文書を流したり、電話ありきのコミュニケーションだったり、インターネット以前からのやり取りが結構続いているんですよね。

それこそクラシコムに入社して、一人一台のパソコンが支給されて、さまざまなシステムがある環境に、私も最初の1カ月は頭が沸騰しそうでした! でも、何かわからないことがあっても、みんなが優しく教えてくれたんです。

それに、たとえばシステムを改修するようなときも、ただ「変わります」だけでなく、「こういった理由で今後の展開が見越されるから変えます」と丁寧に説明してくれる。システムだけでなくて、会社の方針や事業などにも通じていて、だから受け入れやすいのかな、と思ってます。

廣瀬:
個々で働いている社員も、考えを説明したり、必要なものを提案したりと、ちゃんと自分の言葉で伝えるようにしていますよね。

緑川:
そうそう。みんなそれぞれに考えを持っている会社だなって。

廣瀬:
僕自身も何かしらの「主張」を持って仕事をしていたいタイプです。これまではそれが邪魔になる場面も経験してきました。クラシコムでは、主張が必ず通るわけではないけれど、考えを持っていること、自分はこうすべきだと思っていることを相手に投げかけて、ディスカッションして進めていける。邪魔どころか必要なもので、僕には居心地がいいなぁ、と。

緑川:
うんうん。それは私も同じタイプかもしれないです。

廣瀬:
社内を「なんとなく」で押し切れる空気が全くないというか(笑)。だから、しっかり整理も説明もしなければいけないし、そういうカルチャーが浸透している気がします。

 

システムでも「動機」が大切

廣瀬:
商品作りにしろ、システムのことにしろ、クラシコムでは「なぜ、そう思ったの?」と絶対に聞かれませんか?

緑川:
わかります。商品は特に「動機」が重視されますし、製作中でもよく立ち返ってみますね。

廣瀬:
緑川さんの「動機」の話を聞いて、僕も似たところがあると思いました。僕は特に、長期間にわたるプロジェクトを担当することが多いんです。そこで最初に「このプロジェクトを通して何を実現したいのか」を書き出してまとめているのですが、進行中にすごく役立ちます。技術的な要素で迷ったときも、「そもそも」に立ち返ると判断もしやすくなります。

緑川:
書き出すようにしたのは、何かきっかけがあったんですか?

廣瀬:
テクノロジーグループとしてメンバーが増えてきたとき、「クラシコムで僕は何ができるだろう」と考え始めた頃があって。ある時、グループの勉強会で、僕は「北欧、暮らしの道具店として商品をお届けするだけでなく、様々な領域に今後は事業を広げていくと思う。それらの広がりに付いていけるだけのシステムを目指そう」と考えを発表したんです。

それまでエンジニアたちの会話は「技術的な正しさ」を前提にすることが多かったのですが、クラシコムでは「動機」が前提にあって、そのための技術を考える、というふうにしたほうが、全体に知らせるのを含めて話が通りやすいこともわかってきました。

もっとも、僕は「主張」を持って仕事してきたタイプだったのですが、入社以前にはその話をする場面がなかったというか。きっと知らず知らずのうちに、「主張」や「動機」の話をしないような態度が身についちゃっていたんだと思います。

 

世の中を少しでも良いところにしたい

緑川:
ひとりのエンジニアとして、これからクラシコムでやってみたいことって、ありますか?

廣瀬:
直したいところもいっぱいあるのですが……この会社の面白いところって、社内のシステムも含めて、全て自分たちで開発しているところにもあるんです。今はまだ社外のサービスなどを活用している部分もあるのですが、そのあたりまで自前の開発にできたら、より面白くなるかもしれません。

緑川:
たとえば、どんなことですか。

廣瀬:
北欧、暮らしの道具店でお買い物をしたときの決済機能は、社外サービスを使っていて、そこも自分たちで作っちゃう。「クラシコムペイ」みたいなものができたとしたら、お客様に提供できることの幅も広がると思うんです。現時点では夢のまた夢くらいに難しいことなんですが、「クラシコムがやれることを増やしていきたい」とは今後も考えるでしょう。

緑川:
演劇青年だった廣瀬さんに、タイムスリップして今の姿を見せたら驚くかもしれませんね(笑)。

廣瀬:
でも、今日話していて感じたんですが、昔と通じるところもありました。僕は「世の中がもっと少しでも良いところになればいいな」という気持ちで演劇に携わって、お芝居を書いていたんです。インターネットの素晴らしさを知って、仕事がエンジニアになった今も、自分の作るもので少しでも世の中を便利にしたり、良くしたりしたい。

北欧、暮らしの道具店は「便利」なサイトに留まらなくて、誰かの心を落ち着けたり、より良くなる明日を感じられたりする場所でありたいと願っています。そこに携われていることは、僕が演劇に励んでいた気持ちの延長線上に、確かにある仕事なのだと思います。

 

(おわり)

【写真】川村恵理
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