第13回 いよいよ新スタッフ登場

デザイナー 村田

■◇◇■ 第13回 「いよいよ新スタッフ登場!」 ■◇◇■

今週は、おにぎりカフェに新しいスタッフが登場したお話です。

おにぎりカフェを初めて3ヶ月。カフェもランチタイムになると一人では
キツくなってきた。
一日の中のほんの2時間余り。
嵐のようにやってきて嵐のように去って行くあのランチアワー。

ちゃんとお給料を払っていくには到底無理で、友達に頼もうにも頼めない。
どうにかならないかと思っていた頃、丁度カフェのオーナーの後輩が遊びに来た。

彼は23才でなかなかのイケメン君。
アーティスティックで抽象的なイラストを描くのが上手。
音楽はエレクトロニカとスカが好きでいつも音楽に合わせて体が揺れている。
彼もまた今どきのストックホルムッ子である。

当時オーナーはもう一つカフェを経営していて、彼はそのもう一つのカフェで
働いていた。
オーナーからおにぎりカフェの話を聞き、こっちの方が面白そうということで
様子を見に来たそうだ。

日本にとても興味があり特に日本食を学びたかったらしく、初めて来た時は
かなりの質問攻めにあった。
ああだのこうだの説明するよりも作ってしまった方が手っ取り早いと思い、
どうせ暇だったしお米を炊くところから始めることにした。

「はじめチョロチョロなかパッパ、赤子泣いても蓋取るな」なーんて言われても
分かんないよね、などと言いながら火加減の調節と蓋を決して最後まで開けては
いけないんだということを説明。

そんな事を言っている横から、グツグツと煮え始めた鍋の蓋を開けて中を覗く彼。
アホかっ〜!

ご飯が炊きあがるのを待っている間に中身の下ごしらえ。
初回なのでまずはおにぎりカフェ定番のサーモンと昆布と梅干し。

サーモンは簡単に塩こしょうしてバターでこんがり焼き色がつくまでソテー。

昆布は、すし飯を炊くときに使う昆布で作る。
こちらも経済的に得意のお手製。醤油、酒、みりん、砂糖、鰹節を入れて煮込み、
仕上げに白ごまを混ぜる。

梅干しは日本食の店で売っているものをそのまま使用。さすがにこれは作れない。

とっても好奇心旺盛の彼は、一つ一つの具を舌でしっかり確認するように丁寧な
手つきでつまんでいた。
そして一口食べるごとにいちいち「うんめーっ」と日本語だったら聞こえるんだろうなぁと
思わせるような反応をちゃんと私に見せてくれた。

スウェーデン人は一般的に反応が薄い。
素晴らしい景色を見ても、おいしいご飯を食べても、八百屋で大サービスして
もらっても、あまり良い反応が返ってこない。

本人は嬉しいんだろうけど、わりとクールにすかしてしまったりする。
肥大なオーバーリアクションも如何なもんかと思うけど、想像以上に反応が悪いと、
リアクションがわりと大きい私は隣でついつい「えーっ」と唸ってしまう。

なので、彼の非常に気持ちの良い反応には思わず私もニッコリ。
いやらしくない、素直でまっすぐな反応にうっとり。
カワイイって得だ。

まだメインのおにぎりに入ってないのに既に彼は興奮状態。
貴重な海苔だっていうのにぱりぱりと一枚ペロリと食べてしまった。

そうこうしているうちに、ご飯は蒸らしも終わり、完成。

早速おにぎり作りに取りかかる。
炊きたてでまだまだ熱いご飯を冷ましながら握っていく。

最初は大きくなりすぎたり具が上手く中に入り込めなかったりして悪戦苦闘して
いたけれど、やはりもともと手先が器用なのか意外とすぐにコツを掴んだ。

「私よりも上手いんじゃないの。」

なーんて言っちゃったら調子に乗って、今度はお寿司が作りたいと言い出した。
こうなったら勢いで作っちゃえ、といきなり難易度の高いオムレツロールを作る事に。

卵を割り、砂糖、塩、牛乳少々、粉末だし少々入れてかき混ぜ、ふんわり厚めの
薄焼き卵を作る。
巻き簀の上にラップを敷きその上に先ほど作った卵を置く。
卵が破けないようにそぉっと酢飯を薄く広げ、キュウリ、アサツキ、アボガド、
わさびと醤油とマヨネーズで和えたツナ、そしてパプリカを並べる。

さあ、ここからが難関。

巻き簀の手前を優しく丁寧にそっと、しかし手早くまず真ん中辺りまで持ってゆき
中身ごと手前にググッと引く。
そこで力が入りすぎると卵は破けるしアボガドもニョキっと元気に飛び出して
来るから用心。

飛び出した具は横から押し戻しながら更にまた一巻き。
そぉっとやりすぎても切ったときに崩れてしまうので適度にしっかり巻くのが
上手く作るコツ。
これがまた焦ると難しいんだな。
そのまま最後まで巻いたらしばらく巻き簀ごと置いておくと形が馴染んで切りやすい。

初めての体験で緊張していたのか彼の手が小刻みに震えているのが分かった。
でも非常に繊細な手つきできれいに作り上げてしまったのだ。

お見事!拍手!これには私も驚いた。

「えっ、ていうか実はあまり難しくないんじゃ。。。」

と一瞬疑ったが、他の人に作らせても全く上手にいかなかったから彼には才能が
あったのだ。

結局彼は、その日から既におにぎりカフェで働く決意をし、お給料が微々たるもの
でも、お昼ご飯と技さえ得られれば良いと大喜び。
かえって私の方が申し訳なく気が引けてしまった。

突然の力強い相棒の誕生にその時は動揺の色を隠せなかったが、あっけらかんと
嬉しそうに色々と日本の事を聞いてくる彼を見ているうちに、私ももっともっと
頑張ろうという気になってきた。

彼と次の日の時間を決めて別れた後、店を閉め家に帰った辺りからじわじわと
喜びが込み上がってきて、その日の夜はあまり眠れなかったのを覚えてる。

人との出会いは素晴らしい。
きっかけなんて何だって良いんだ、良い奴に出会えればそれで。

その後、彼は暫くの間一緒に働いて色んな話もした。
すごく優しくて気が利いて良く働いてくれた。
カフェに友達から貰ったというソファや大きな観葉植物も持ってきてくれた。
しかし、約2ヶ月後、福祉関係の仕事をする為に勉強したいと言って、カフェでは
働けなくなり辞めてしまった。

出現も突然だったけど、最後もあっけなく突然いなくなってしまった。

今頃はもう資格でもとってしっかり働いているのだろう。
優しかったからな、きっと良いヘルパーにでもなっていることであろう。

短い期間だったけど、気持ち的にずっと楽になったし、彼の持ってきてくれた
ソファのおかげでランチ以外でもお茶をしにゆっくりのんびりしていくお客様も増えた。
本当に彼には感謝の気持ちで一杯である。

ありがとう。

来週は、スウェーデンの伝統スイーツ「プリンセスケーキ」とおにぎりカフェでの
スイーツについてお話しします。

甘〜いお話となりそうです。どうぞお楽しみに!

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