【はたらきかたシリーズ】デザイナーで2児の母・田中千絵さん 第1話:笑顔がたえない、仕事と子育ての考え方
編集スタッフ 長谷川
聞き手・文 スタッフ長谷川、写真 飯田えりか
僕は、田中家の息子になってみたいと思っていました。
働くことは、人生で大きな時間を占めるだけでなく、暮らしのかたちを決めるもの。自分が望むあり方を見つめるために、特集「その『働きかた』が知りたい。」では、さまざまな方の「仕事」や「働きかた」をお聞きして、ヒントをもらってきました。
vol.1:保育園の園長先生、ミュージシャンの齋藤紘良さん
vol.2:神楽坂の書店「かもめブックス」の柳下恭平さん
vol.3:求人サイト「日本仕事百貨」代表のナカムラケンタさん
シリーズ第4回に伺ったのは、デザイナー、イラストレーター、文筆家と幅広く活躍される田中千絵さん。中学1年生と小学3年生の息子さんを育てるお母さんでもあります。
今回、田中千絵さんにお話を聞いた理由は、僕が「田中家の息子になってみたい!」と思っていたからです。
僕と田中千絵さんの出会いは数年前。以前に勤めていた紙の会社で「8月の海と山を感じる紙」といったように、「毎月、季節にちなんだ10枚の紙を田中千絵さんに選んでもらう企画」でご一緒したときのことです。
毎月、アトリエを訪れては、すてきな紙の提案に盛り上がりつつ、田中千絵さんの朗らかさに元気をいただいていました。
そして、デザイナーの仕事を精力的に続ける一方で、お話やブログなどのはしばしで顔をのぞかせる、自由闊達に見える暮らし方や、子どもたちとのふれあい方も印象に残っていました。
「このお母さんのもとで育ったら、僕はぜんぜん違う大人になったのかも!」と。
そこで今回、この連載の担当が決まったとき、自分のモノサシをしっかり持って、暮らしを形作っている田中千絵さんのことが、すぐに頭に浮かびました。
田中千絵さんは、どんなスケジュールで暮らして、どんな意識をもってお仕事をして、どんな子育ての工夫をして、どんなことを考えているのかを聞いてみたくなったのです。
▲田中千絵さんによる、雑誌『ミルクジャポン』での連載。毎月、1つの色にまつわるアイテムをセレクト。思い出を振り返るコラムと共にに、その色をテーマにしたハンドメイド作品の楽しみ方も紹介している。( https://instagram.com/chietanaka/ より)
田中千絵さんは武蔵野美術大学を卒業後、フリーランスとして仕事をはじめ、「ツモリチサト青山店」や「BEAMS」のウインドウ・インスタレーションの作品群が話題に。
その後、グラフィックデザインやテキスタイルといったデザイン全般、「SHIPS」×「mammoth」などの子ども向けワークショップ、雑誌『Milk Japon』への連載、ピンクリボンデザイン大賞の審査員など、表現方法にこだわらない活動を続けています。
さて、お話を聞いて、あらためて実感。田中千絵さんの仕事と子育てへの向き合い方には、目の覚めるような想いやアイデアがあふれていました。
今回の連載は、田中千絵さんの3つの顔、「デザイナー」「ワーキングマザー」「お母さん」のそれぞれに、1話ごとにフォーカスしてお届けします。今回は、映画でいえば予告編。印象に残った言葉たちをピックアップしてみました。詳しくは、第2話から掘り下げていきますね。
もくじ
子どもと一緒に不動産屋へ。家族みんなで見つけた秘密基地。
閑静な住宅地の一角にある、田中千絵さんのアトリエ。大きな窓からは桜の木が顔をのぞかせ、光もたくさん入ります。お子さんの学校やご自宅も徒歩圏内にあり、暮らしと仕事が近い距離にあるようにしました。
現在、田中千絵さんは、夫である映像ディレクターの森野和馬さんが設立した株式会社ストライプファクトリーに所属。ここは夫婦の仕事場としても活用しています。
▲森野さんがアパレルブランド向けの映像作品で使った台。かわいいので、もらってきたそう。
このアトリエに決めるまで、時間の許すかぎり、家族そろって物件めぐりや引っ越しの相見積もりをしたのだとか。
田中千絵さん:
「子どもを巻き込んだのは『部屋はいろんな観点で、自分の居心地がいい場所を直感で探していく』ものだと知ってほしかったからなんです。
いずれね、一人暮らしの部屋探しをするときが来ますから。引っ越しも『ここはコピー機を運んでくれる、あっちはだめだ』なんて相見積もりを子どもとやりながら(笑)。それに、みんなで賛成して選んだ部屋だから、絶対に集まりたい基地みたいになるかなって」
メリハリをつける、基本のスケジュール
子どもたちが保育園だった頃からの名残もあり、10時から16時くらいまでがワークタイム。打ち合わせやアポイントは日中に詰め、執筆や制作など自宅の作業はよる時間帯にやることでメリハリをつけているのだそう。
田中千絵さん:
「16時くらいには下の子が戻ってくるので、そのタイミングで迎えてあげます。
できないときは、机の上にバーっとコミュニケーションメモを残しておきます。『洗濯取り込んでおいてね!』『宿題』『帰ったら電話』みたいにやってほしいこと、それから『お母さんは17時くらい、お兄ちゃんは部活で遅いから、それまでに終わらせておいてね』みたいに」
大人目線だけにならず、余白をつくるデザイン。
田中千絵さんのデザインワークは、どこかあたたかみを感じる、手仕事の香りがするものが多くあります。
なくてはならない仕事道具は、お気に入りの文房具たち。そして、“子どもと一緒に楽しく作っていきたい”という気持ちも、その雰囲気をつくるのに一役買っています。
▲スカーフブランド〈ditto〉とのコラボレーションアイテム
田中千絵さん:
「ストイックにどんどん作っていくデザイナーの方もいらして、でも私はそれができないし、子どもと一緒に楽しく作っていきたいっていうスタンスが自然なんですね。
よく子どもたちと一緒にものづくりをします。私がもともとのベースは考えているのだけど、たとえば、がんちゃん(弟さん)がイラストのドローイングをして、私がその絵をコピーして並べて、スカーフのパターンをつくったり。
ちょっとあったかみがある、人懐っこさのあるような雰囲気は、そういう作業中の楽しい感じが作品にも出てくると感じています。
それに自分たちで楽しく作っていないと、誰かに提案はできないと考えているんです。お受けした仕事は必ず楽しさと面白さをのせて返すっていうのを基本にしています」
仕事道具など、デザイナーとしての田中千絵さんには、連載第2回でフォーカスしていきます。
お母さんがなんでもやらない。お手伝いで基礎体力をつける。
「生活の基礎体力を渡すのも、親がしてあげられること」
とあるインタビューで、田中千絵さんが答えていました。田中家では、お手伝いも分担表をつくって、家族みんなで手分けしています。
田中千絵さん:
「それぞれができることをシェアしていくような関係の方がいいなって思っているんです。
子どもにとっても、洗い物やごはんづくり、洗濯をたたむ、しまうなどの日々の積み重ねは、ぜんぶ自分が大人になったとき、絶対に使う“筋肉”になるから。
思春期になってからだと、私の言うこともぜったいに突っぱねるようになるはずなんです。だから、そこまでに朝ごはんや簡単な夜ごはんは作れるレベルに持っていければ、その思春期を超えて大人になってからも『そういえば、ああいうの作ってたな』ってなれば、意外とつくれるはずだから」
とはいえ、子どもがやることで時間がかかってしまったり、お手伝いをサボったりすることもあるはず……田中千絵さん流の「お手伝いをしてもらうコツ」や「怒り方」も聞いてきました。第3話、第4話にてお届けします。
同級生の目線で、「気づく」アンテナを育てよう。
インタビューのとき、何度もでてきたフレーズが「気づく」という言葉。田中千絵さんが、子育てに限らず、大事にしているポイントです。
田中千絵さん:
「子どもは『やりなさい』って声をかけられることに反抗がすごいじゃないですか。大人だってそうだけれど(笑)。
だから、その強制を外して、なるべく行動に移せるように育てるようにしています。気づいて動いてくれた時には、特に褒めますね。褒められると、次はもっとやってあげようって思うし、人間の心って案外、そんなもので。お手伝いの中身はいくらでも修正したり、練習したりできますから。
私の場合は、なるべく子どもの後ろに立って、やりやすい環境を作ってあげるサポート役になるようにしています。
子どもが『行きたい!』とかの興味を持ってたら、『うそうそ、私も行く!』みたいに一緒に自分も楽しんじゃう。それから『意外と面白かったね』『私はここがわかったけど気づいてた?』と感想を共有しながら、同級生っぽい目線で話をしています。
気遣いもそうだと思いますが、人と深め合ったり、何かを見たり、それを伝えたりするのは、コミュニケーションの練習であり、自分の視野を広げる練習であり。そのついでに、私も自分になかった引き出しが増えていけば面白いかなって」
他にも、第3話では、子どものやる気を伸ばす方法や、Instagramの活用術など、田中千絵さんの子育てアイデアもまとめています。
それでは、第2話、デザイナー・田中千絵さんのインタビューに続きます。
もくじ
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