【はたらきかたシリーズ】デザイナーで2児の母・田中千絵さん 第3話:楽しい大人に、子どもは「未来の自分」を重ねる

編集スタッフ 長谷川

150804ct_workstyle00041聞き手・文 スタッフ長谷川、写真 飯田えりか

ワーキングマザー・田中千絵さんの工夫。

さまざまな方の「仕事」や「働きかた」をお聞きする連載「その『働きかた』が知りたい」。Vol.4は、デザイナー・田中千絵さんにお話を伺っています。

表現方法を問わず、精力的に活動される田中千絵さん。中学1年生と小学3年生の息子さんを育てるお母さんでもあります。


もくじ


 

連載第3回は、ワーキングマザーとしての顔にフォーカスして、子どもに家事を手伝ってもらうコツなどを教えてもらいました。

 

家族の「お仕事チェックリスト」で家事を分担する

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田中家では、家事はみんなで分担制。そこにも工夫がありました。

まずは、自作の兄弟のスケジュール表&忘れ物チェックリスト。「私が忘れちゃうからやってもらうの」と田中千絵さんは笑いますが、子どもが自らやることをクリアしていきやすいようにする仕掛けになっています。

荷台に持ち物が書いてあり、クリアしてシールを貼ると車になる。田中千絵さんらしい遊び心のあるデザインですね。

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こちらが本邦初公開(!)という、田中家の家事分担表。

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1週間の家事から、兄弟はできること、やりたいことを話し合いながら分担していき……

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あとは、田中千絵さんがExcelで整形して、週ごとにアップデートしていきます。基本の家事に加えて、ごはんの支度まで分担表には含まれていました。

 

「冷やし中華のきゅうりを切らない」が、子どもに手伝ってもらうコツ。

仕事を抱えて時間も少ない中で、子どもが「やりたい!」と言ったときに、「自分でやった方が早いし…」なんて、やきもきすることもあるはず。上手に手伝ってもらうにはどうすればよいのでしょう。

田中千絵さん:
「まずは、我慢ですね(笑)。それから、子どもに言われる前に、できることを作ってあげておくんです。

たとえば、冷やし中華をつくるとすれば、きゅうりを切る作業をわざと残しておく。子どもが言ってきたら『じゃあ、きゅうりを切ってくれる?』ってお願いします。そのときに他のものは出来上がっていて、あとはきゅうりを切ってくれたら、『一緒に盛りつけてみようか!』みたいにする。

これならあまりトラブルなく、用意の滞りもない中で、お互いにストレスになりませんよね。それに、盛り付けだけでもやると、子どもは案外に『やった感』がいっぱい出るから、それでもう十分なくらい。

ちなみに、盛り付けはわざと大きなお皿にするのがオススメです。見栄えがきれいだし、こぼさないし、余白があると子どもが自分でレイアウトも考えるきっかけになると思います」

つまり、子どもが来ることを想像した上で、いかに効率的に家事をやるかがポイント。できることが増えていけば、結果的に家事も任せられるようになって自分がどんどん助かっていく。

田中家の家事分担表は、このくり返しを経て、生まれたものなんですね。

 

楽しい大人の姿に、子どもは「未来の自分」を重ねていく。

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田中千絵さんは、仕事などを通じて知り合った人を招くホームパーティーを、1年くらい前から開いているのだとか。そのホームパーティには兄弟もそろって参加します。

田中千絵さん:
「いろんな世界で働いている、面白い人、楽しい人たちをお招きしてごはんを食べたりしています。子どもには事前に『今日来る人はこういう人で、こういう仕事をしているから、いろいろ話してごらん』って伝えておきます。

結局、恥ずかしくて聞けずじまいだけれど、とりとめない話でもしていると、なんとなく子どもは大人からダウンロードしているんですよね。話もとっても面白くて。

私は、楽しい大人と会わないと、子どもは『自分が何になりたいか』の目標が立てられないと思っているんです。私たち夫婦以外の仕事もいっぱい知ってほしいし、職業の話を大人になってから聞いて、映像や資料を見せられてもわからないじゃないですか。

でも、その職業の、自分の何かに触れるものを持っている人に出会ったら、『あぁ、あの人は素敵、ああいう仕事をやっているんだ』って思えるはずですから」

自分の仕事にも生きる交友を深めながら、子どもにも新しい引き出しを与えてあげる。デザイナーを本職にするワーキングマザーならではのアイデアといえそうです。

そして、ホームパーティのあとに、子どもたちは「お礼状」を書くのが決まり。内容は何でもよく、子どもの思ったことと「ありがとう」を伝えるのが目的です。見せてもらった二つ折りのカードには、メッセージと一緒に切り絵が。

田中千絵さん:
「子どもって大きな面を塗るのに飽きちゃうんですよ。だから、短時間でパパパッとカードを仕上げるには切り絵がちょうどよいです。紙を貼るとそこそこきれいに見えるし、飽きないし、失敗したらすぐはがせばいいですからね」

 

「田中さんとご飯を食べたいな」って思われるお母さんでいたい。

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子どもが成長するにつれて、親離れも起きていきます。むしろ大切なのは、しっかりと親の側が「子離れ」をすることで、「子離れがなかなかできないとしたら、自分の好きなスタイルを見失っているからかも」と田中千絵さん。

自分の好きなスタイルを守るために、田中千絵さんはやるべきことをすっかり済ませて、しばしば「夜遊び」にも行くのだそう。

田中千絵さん:
「私は、田中さんとご飯を食べたいなって思われるお母さんでいたいんですね。家の中で洗濯しなきゃいけないからいないと困るって存在意義じゃなくて、外からのニーズが必ずある、それだけの魅力があるという状態にしておきたくて。

自分以外の世界が好きで、それを知っているお母さんがいれば、子どもは『なにそれ?』って思うし、その世界をのぞきたくもなってくるでしょうから。

そうしていると、子どもは年齢を重ねていけばいくほど『うちのお母さんは、なんだか面白い』っていう感じでも見てくれているみたいです。私にとっては仕事も夜遊びも、正常に外とつながっていくためのことなんです。

子どもをほったらかして出るのとは違います。整えてから出る、ということですよね。整えてから遊びに行くのだとすれば、悪妻かもしれないけど、賢母ではある。

私にとっては仕事や夜遊びだけど、好きなものなら、雑貨でもなんでもいいんです。とにかく明日の洗濯のことも忘れて、『お母さん以外のもの』でいられると、『よし!洗濯また頑張るか』みたいになれますし、ストレスが少なくて済みますよ」

 

時には「もうやらないから!」と言うことも大事。

そして、これから父になるかもしれない僕を含め、世の中の男性にとって背筋が伸びるメッセージも……。

田中千絵さん:
「女の人って、たぶん、地続きになっているのが苦手。子育てもそうだけど、生まれた時って、おしめ、ミルク、何とかって、ずっと24時間、2時間おきにつながっているの。このまま終わらない感じがあって、すごい苦痛でストレスになるんですね。

ちゃんと『お母さん以外のもの』っていう逃げ道があれば、心のバランスが取れやすくなる。ツライときは『お箸出してくれないならご飯つくらなーい!』って言ったり(笑)。そこを我慢して重ねちゃうと『あの人は大丈夫なんだ』ってなってしまう。

お父さんには、『お母さん以外のもの』になれる時間を作ってあげてほしいと思います。夜だって、お父さんとお母さんが必ずそろっている必要はなくて、お父さんがいればそこそこできることもあります。

だから、夜泣きや発熱みたいな子どものトラブルには、お父さんもぜひ対応していただきたい(笑)。お母さんがいないからって、電話して呼び出すようなことはしないでね」

……はい。肝に銘じておきます。

 

子育てと働くことは、良いめぐりを生むと思うんです。

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大学を卒業後、フリーランスでデザインなどの仕事を始めた田中千絵さん。子育てをするようになってから、新たな仕事の楽しみも見えるようになってきたといいます。

田中千絵さん:
「子育てをして、チームワークって面白く感じるようになってきたんです。幼稚園のお母さんたちで卒園アルバムをつくるとか、お兄ちゃんが弟の勉強を見てあげるとかも、チームをつくるプロセスですよね。

子育てでやったことに何事も無駄はないです。それを積み上げているお母さんだからこそ、できるような仕事っていっぱいあるはず。

それぞれの苦労やタイミングはあるけれど、子育てと働くことは、良いめぐりを生むと思うんです。

何より、お母さんが働いていると、子どもが『考える』じゃないですか。お母さんが家を空けている間はどうしようとか。逆に、お母さんが子どもに任せることもありますよね。それって、お母さんが子どもに対して、信頼を渡す練習になるんじゃないかな」

では、田中千絵さんはどんな「子育ての積み重ね」をしてきたのでしょう。連載最終回となる第4話で伺います。田中千絵さんのInstagramで人気の、弟さんがつくる朝ごはんシリーズ「#がんちゃんごはん」の裏側も聞きました。

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