【コンディションづくり】料理人・長谷川知子さん編 第1話:仕事と3人の育児。ひとりで抱え込んでいたら、続けられないから。
ライター 本城さつき
写真 衛藤キヨコ
環境の変化があってもなくても、どこか忙しなく、心身の調子も乱れがちになる時期は、誰にでもあるもの。そんな変化の時を気持ちよく乗り切るためには、「こうすれば大丈夫」と思える自分なりのメンテナンス法を身につけておくと安心です。
このシリーズでは、いろいろな方に心身のコンディションの整え方をうかがいながら、人それぞれの「整え方」を見つけるお手伝いができればと思います。
▲楽屋(ささや)の店内。白い壁と木目が優しい雰囲気。
今回は、東京郊外の東村山市で和食店「結う食 SASAYA-楽屋(ゆうしょく ささや)」を営む長谷川知子さんに、コンディションの整え方をうかがいました。
長谷川さんが得意とするのは、野菜を中心に旬の素材をたっぷりと使った、和のごはん。お店に伺うといつも、体の奥からじわりと元気が湧いてくるような滋味溢れるお料理と、朗らかな笑顔で迎えてくれます。
体が資本の料理人という仕事をしながら、3人の小さな子を育てるお母さんでもある彼女が、忙しい毎日を、健やかに、快適に過ごすコツはどこにあるのでしょう。日々の仕事、食へのこだわり、子どもたちとの時間や小さな楽しみ、と3回に分けてお届けします。
3回の産休を経て感じたこと。頼れるところは、感謝しつつ頼る。
▲JA直売所には、野菜だけでなく季節の花も並ぶ。
長谷川さんは、東京・西荻窪にある和食の人気店「のらぼう」で約4年間の修行を経て、2006年4月、世田谷区経堂に、夫婦で小さなお店「楽屋」を開きました。その後、2014年に東村山市秋津へ移転して現在に至ります。
世田谷の頃からずっと、地元の農家が育てた新鮮な野菜を中心に、その日の素材と対話をしながらメニューを決めてきました(野菜の話は、明日たっぷりと!)。
長谷川さんは、5歳、3歳の男の子、1歳の女の子、と3人の子育てをしながら、毎日お店に立っています。慌ただしい毎日だからこそ、ある程度決まったタイムテーブルに沿って動くことは、コンディションを整える大原則。1日の大まかなスケジュールを教えていただくと……。
「6時半に起きて朝ごはんを食べ、8時半には子どもたちを保育園へ連れて行きます。その足でJAの直売所へ。仕入れを済ませて、11時頃店に着きます。昼ごはんは、前日に出た野菜くずなどで作るまかないを。夕方まで仕込みをしたら、17時に保育園へお迎えに行きます。家に戻って子どもたちを父に預け、店へ戻って18時にオープン。帰りは日によって違いますが、22時を過ぎる頃には家路につきます」
予想通りの、目が回るような忙しさ! でも、1日はまだ終わりません。
「家に帰って、お腹が空いていれば夕ごはん。その後洗濯機をかけつつ、前日の分をたたみます。お風呂に入ったりこまごまとした用事を片付けていると、あっという間に夜中の2時頃になり、ようやく布団に入ります。横になる前にもう眠っている、という感じです(笑)」
▲ハンドケアは無臭の生絞りごま油。これなら料理の合間にも使える。
あっという間の1日ですが、人の助けを借りられる時は無理せず頼っているのが、長谷川さんの潔いところ。
保育園から帰った子どもたちはおじいちゃん(同居されている長谷川さんのお父さん)に預け、夜遅い時間のお店は、旦那さんとスタッフに託す。無理しすぎないことが、心身のいいコンディションをキープすることにつながっています。
「3回の産休と復帰を経て感じたのは、周りで支えてくれる人たちの、存在の大きさでした。楽しんで子どもの世話をしてくれる父、料理人としてどんどんたくましくなっていく夫、店のことを細やかにサポートしてくれるスタッフ。
自分ひとりですべてを抱え込んでいたら、とてもここまで続けて来られませんでした。仕事を続けられてありがたい、という感謝の気持ちが、子どもが増えるたびに大きくなっています」
働いている時間こそ、心が喜ぶものだけに囲まれる。
▲江戸中期(寛政期)の器。亡きお母さまから譲り受けたもの。
好きなものや、目にした時に心地いいものに囲まれていると、自然と楽しい気分になれるのは仕事場でも同じこと。お店の中は、お客様にとって気持ちいい空間を提供することはもちろんですが、自分も楽しい気分で仕事ができるように、長谷川さんの「好き」が散りばめられています。
木と鉄のコンビネーションで、ぬくもりと力強さを併せ持つ家具はそのひとつ。
「テーブル、カウンター用の椅子、カウンター上の吊棚は、鉄作家の友人に作ってもらったもの。鉄を木と組み合わせて、やさしさのある表情に仕上げてもらいました。かといって過剰な甘さもなく、どこかきりりとしているところがお気に入りです」
器は古いものが多く、江戸時代のものもちらほら。
「つい増えてしまうので、『あの料理を盛り付けたい』とイメージできたら買うことにしています。繊細すぎず、きちんと使えることも選ぶ基準。漆も好きでよく使います。器でもカトラリーでも、口に当たった時の柔らかさが、気分をほぐしてくれる気がするんです」
猫に教わったストレッチと、ていねいに淹れたコーヒーを1杯だけ。
▲コーヒーの香りが広がる至福のひととき。
自分をごきげんなコンディションに保つため、意識して続けている習慣は、起き出す前の全身ストレッチ。これは、実は飼い猫に教わったことだそう。
「何の気なしに見ていたら、ものすごく気持ちよさそうに伸びをしていて。あ、伸びてから起きるんだーと思ってマネしてみたら、本当に気持ちよかったんです(笑)。それから毎朝、布団の中でやるようになりました」
▲車ですぐ行ける距離に、おいしいコーヒー屋さんがある幸せ!
そして、もうひとつは、仕事前の1杯のコーヒー。
「ていねいに淹れる、というのがポイントです。昼ごはんを終え、さあこれから仕込み、という前に飲むのですが、手動のミルで1杯分を挽いて、ペーパードリップでじっくり落とす。豆は、埼玉の西所沢にある山田珈琲豆焙煎所のもの。中煎りから深煎りが好みです。
手で挽くようになったのはこの1年ほどのことですが、ていねいに淹れると1杯で心が満たされて、飲みすぎないということに気づきました。以前は、日に4〜5杯は飲んでいたので……。挽き終わってミルのふたを開けた時、ふわりと立つ香りが、心を緩ませてくれます」
こうして今日も続く、長谷川さんの仕事と育児の日々。いろいろな工夫を毎日ちょこっとずつ、が、コンディションをこまめに整え、忙しい日常を軽やかに乗り切るコツのようです。
明日は、長谷川さんにとっての「核」ともいえる、食べることへのこだわりについて、おうかがいします。
(つづく)
長谷川知子(結う食 SASAYA-楽屋店主)
埼玉県出身。東京・西荻窪「のらぼう」を経て、2006年4月世田谷区に夫婦で「楽屋」を開く。2014年に東村山市へ移転。地元でその日の朝に収穫された野菜を使って、誰もが安らぐ料理を作り続ける。http://u-sasaya.sakura.ne.jp
ライター 本城さつき
東京都出身。出版社勤務を経て、現在はフリーのライター・編集者。雑誌や書籍でライフスタイル系の記事を手がける。食の分野では、お店の取材、生産者さんの取材を中心に、レシピも少々。食以外では、雑貨、グリーン、旅なども担当している。
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