【私のワンルーム】第3話:原点は宝探しや漫画。巡り巡った好きを並べてできた部屋のこと
編集スタッフ 藤波
インテリアは大好きなのだけれど、だからこそ理想がどんどんふくらんで、今の自分の暮らしに物足りなさを感じてしまうことがあります。
賃貸のコンパクトな部屋をもっと好きになるべく、8.3畳の1Kで一人暮らしをしている遠藤美南(えんどう みなみ)さんを訪ね、部屋づくりのヒントを探っています。
第1話では、はじめての家探しや部屋づくりの過程、第2話では小さな部屋で心地よく過ごす工夫について聞きました。第3話では、遠藤さんならではの自由な飾り方について詳しく伺います。
好きに飾る。でもコーナー分けはしっかり
一つ一つどこのものか尋ねたくなるような、小さな宝物に囲まれた遠藤さんの部屋。
テイストは様々なのにどこか統一感があるように感じますが、飾るときに意識していることはあるのでしょうか。
遠藤さん:
「そうですね……並べ方はそこまで意識していなくて、かなり感覚的なのですが……こうして見渡してみると、部屋のなかのコーナーそれぞれになんとなくテーマがあるかもしれません。
大きな姿見の近くには衣類、サイドボードの上はフレグランスマッチなどの香りものを中心に。
ちなみに、キャンドルやパロサントを入れている小さな陶器は、同じシリーズを『SHARK ATTACK』でまとめて購入したので部屋中に色と形がちょっとずつ違うものがあるんです。金色のシールがかわいくて」
遠藤さん:
「リビングに入ってすぐに取り付けた『DRAW A LINE』の突っ張る収納は、髪の毛を整えるコーナー。
お気に入りの櫛やヘアアクセサリー、スタイリング剤をまとめて置いています。髪の毛とは関係ない小さなお気に入りもその時々で置くんですけどね」
遠藤さん:
「アクセサリーやメガネ、香水など、身支度にまつわるものは玄関のヴィンテージのサイドテーブルの上に。
小さなトレーに小分けにすることで探しやすく見た目がごちゃっとしないようにしています。テーブルの上には鏡を壁付けしているので、出がけにここで身支度がすべて整うようになっています。
とりとめもない好きなものに溢れている部屋ですが、用途はあっちこっちに散らばらないようになっているので生活しやすいです」
壁を味方につけると、こんなに広がる
▲緑の刺繍ラインが印象的な布は『ジャンヌ・バレ』で購入したもの
ずっと気になっていたのが、リビングに入って右側の壁。帽子や造花、不思議な糸、色んなアイテムが自由に飾られています。
この壁飾りの発想はどこからやってくるのでしょうか。
遠藤さん:
「この帽子ははじめは被ろうと思って買ったのですが、残念ながら大きすぎたので飾り帽子になりました。元々部屋についていた細長いピクチャーレールを取り外して、残ったネジ部分にそのまま引っ掛けているので、新しく穴を開けたりはしていません。
寒い季節には手袋を飾ったりもします」
▲中央の金色の糸は、新潟の織物店で売っていた帯や着物の糸の切れ端だそう
遠藤さん:
「他に飾っているのは、服飾学校に通っていたころから大切に持っていた宝物たちです。ほとんど代官山の『ジャンヌ・バレ』で買ったのですが、ヴィンテージのコサージュやラインストーンの見本帳など。かわいすぎて買ったけど、どうしよう……としまっていたものです。
ジップロックに入れている造花は隅の方でごしゃっとまとめて売られていて、一見ボロボロだけどよく見たらかわいい!と思って買いました。ピンク系とベージュ系で花びらを一枚ずつ仕分けして保存していたものを、この部屋に越してきてようやく飾ることができました。
マスキングテープでペタペタ貼っているのも、本当にたまたまです。やってみたら案外よかったのでこのままにしています」
▲さりげなくかけられたワンピースとつけ襟も、お部屋をぐっと素敵にしていました
遠藤さん:
「壁に何を飾ろう?と考えているというよりは、飾りたいものがありすぎて、でも全部は無理で、残ったのが壁だったという感じですかね。
実家にいた頃から大切にしまっていた宝物たちがこの部屋にきてやっと日の目を見ることができて嬉しいです」
家のあちこちにある寂しい壁。もしかしたら自分の好きを飾れる余地がまだまだあるかもしれないと思うと、少しワクワクした気持ちになりました。
小さな頃の宝探しが、今も続いて
学生時代から「かわいいけれど実用的ではない」宝物を集めていたとのことですが、遠藤さんの好きのルーツが気になりました。
遠藤さん:
「幼い頃からよく母とリサイクルショップに行っていました。母は食器を見て、その間私は一見ガラクタのようなものが数十円で売られている山からかわいいものないかな?って探して、それがすごく楽しかったんですよね。
そういう宝探しが今でも大好きで、ただ探す場所がリサイクルショップからフリマサイトに変わりました。
このペンギンのキャンドルは、フリマサイトでガラスや動物の置き物をなんとなく探していたときに偶然見つけたもの。ガラスでできた氷の台に蝋燭のペンギンがのっているのがたまらなくかわいいんです」
遠藤さん:
「三角形の小物入れは、モロッコ旅行で買ったもの。大小様々なサイズがあった中で、一際繊細で素敵でした。
何も入らないくらい小さな小物入れなのですが、その小さな空間に木や貝細工、縞々や葉っぱ、いろんな要素がギュッとなっている感じに心掴まれてしまいました。
私の部屋にはこういった異素材が組み合わさったアイテムがたくさんあるのですが、どうしてこういうものに心掴まれるんだろう?と考えたときに思い出したのが、学生時代に好きだった『sacai』というブランド。
一着のニットにレースとかシフォンなど色々な素材が詰まっているところが大好きで、その当時からミックスされたものに惹かれるようです」
遠藤さん:
「最近見つけた新入りのランプも、大理石の土台にガラスのランプシェードが乗ったものでした。
この部屋にあるものは、バラバラなようで案外共通点があって。自分でもあんまり意識していなかったけれど、小さい頃からずっと好きなものが繋がってて、たぶんストライクゾーンは結構狭いんだと思います」
これからも巡っていく自分の「好き」
遠藤さん:
「もう一つ昔から変わらず好きなものとして、さくらももこさんの作品があります。『ちびまる子ちゃん』や『コジコジ』など、漫画もアニメも小さい頃から楽しんでいて、今でもこの柄と色がぎゅぎゅっと詰まった漫画の表紙をたまに眺めてしまうんです。ここにも異素材の組み合わせ、ありましたね(笑)。
さくらももこさんは漫画家だけれどエッセイも書いて作詞もして、漫画だけにとらわれずに自由に活動されていたイメージがあり、そんなところにも惹かれていました。
もしかしたら、そういう生き方に憧れたことが巡り巡ってインテリアにも繋がっているのかもしれませんね。今ふと思いました」
今回取材に行って一番に感じたのが、好きを突き詰めることの清々しさでした。だからこそ遠藤さんのインテリアには型にとらわれない自由さがあって、思わず惹かれてしまうのでしょう。
もう一つ印象的だったのが、家具のサイズをイメージしたり、しっかり見極めてかしこく選びとっていたこと。そのバランスの良さこそが、小さな部屋でも居心地よく暮らすための秘訣かもしれません。
いつかは私も好きが巡り巡ったインテリアを見つけるために。まずは「賃貸だから」と自分を押し込めていた枠から一歩出て、自由に模索してみようと思います。
(おわり)
【写真】メグミ
もくじ
遠藤美南
都内在住。フリーランスで舞台や映像、広告の衣装製作を行う。インスタグラムでは、ワンルームでインテリアを楽しむ様子を発信。感度の高い物選びの視点が多くの人の心を掴んでいる。@mnmii___
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