【大平一枝さん特別エッセイ】自己流ケアを卒業。敏感肌を見直す「一生モノ」の習慣って?

【大平一枝さん特別エッセイ】自己流ケアを卒業。敏感肌を見直す「一生モノ」の習慣って?

エッセイスト 大平一枝

大平一枝さんから届いた一通のエッセイ

今回お届けするのは、この続きです。大平さんが出会った、とある女性とのお話を綴っていただきました。

(この記事は、「ナチュラルサイエンス」の提供でお届けする広告コンテンツです)



 

 どうしても化粧品をひとつしか使えないという環境におかれたら、なにをつけますか──。
 私は陳腐な質問をした。
 ナチュラルサイエンス代表の小松令以子さんは、「乳液ですね」と即答した。

 私はたいそう驚いた。昔から乳液が苦手だったからだ。ベタベタして、なんとなく肌が覆われるような感触がある。そのわりに、どんな役目をするのか、効果がよくわからない。
 すーっと肌になじむ化粧水やジェル状のものは使うが、じつをいうとこの年になってもしばしばスキンケアでは、乳液の手間を省いていた。とくに夏はほとんど使っていない。
 そんな話を小松さんを含む女性数人の場で明かしたら、さすがに一同「えっ」という顔をしたので、初めて恥ずかしくなった。よほど無知でずぼらな話をしてしまったらしい。


 同社のもので最初に触れたのは、第1話「がんばってきた私の肌のこと」でも記したように、たまたま小松さんが持っていたベビーミルキークリーム※1である。
 次がオリゴミルク※2になる。
 これが、私の想像する乳液とはまったく違った。
 ベタつかない。匂いがない。はりつく感じがない。肌になじみ、優しくとけこんでゆくような、ありそうでなかった使用感である。

 私は少しずつ肌の手入れに興味を持ち始めた。
 知識が増えるにつれ、愕然とした。わかっているつもりでいたが、よくこの年まで知らずに来たものだと思う。

※1...ママ&キッズ ベビーミルキークリーム、※2...ママ&キッズ モイストオリゴミルク

▲皮膚科・小児科の協力のもと開発された、赤ちゃんから敏感肌の大人まで使える低刺激スキンケアブランド、ママ&キッズ。大平さん愛用のモイストオリゴミルクは左のもの。

 たとえば、使用量である。
 私は適当に人さし指ですくって、手のひら全体でざあっとのばす。
 ところが小松さんは、「それでは全然少ないのです」と言う。
 たっぷり手に取り、中央から外側、下から上へ円を描くように塗り、ハンドプレスする。……うん、そこまでは知っているぞと思ったら、その先が違った。
 乾燥が気になるところに乳液をちょんちょんと「点置き」し、重ね付けするのだ。けっこうな使用量で、そんなに使うのかと驚いた。

 そういえば小松さんは、乾燥した私の手を見かねてベビーミルキークリームを塗ってくださったときも、指一本ずつに点置きし、伸ばしていた。
 そうか私は、使う分量からして間違っていたのだ。肌の状態が変わらず、乳液の効果がわからないと思ってしまうのも当然である。

 洗顔時の湯温も「ぬるま湯にしてくださいね」と、小松さんは強調する。私はそもそも風呂の湯は熱いのが好きで、顔も髪もそれで洗っていた。
 熱いお湯は、肌を守る皮脂膜や天然の保湿因子や必要な脂質を奪ってしまうらしい。もちろん、「ごしごし」もいけない。
 こんなふうに、肌はじつは手入れの前後の時間や行為に含まれる正しい知識や、ちょっとした工夫によって大きく変わる。
 私はいつも肌を、化粧品になんとかしてもらおうと考えていたが、「使いかた、暮らしかた、習慣から見直すことも大切なんですよ」とのこと。

 彼女は、とりわけデリケートな肌を持つ赤ちゃんのために、毎月全国へ出向き、正しいスキンケアの方法を伝えるベビー向けセミナーまで開いているという。

 モノを “提供” するだけでない。買って終わりでも、売って終わりでもない。そこまで手間をかけ、頑張る理由はなんだろう。
 いつしか私の興味は商品から、小松さん自身の思考やナチュラルサイエンス社の企業としてのあり方に、移っていた。

▲ナチュラルサイエンス代表の小松令以子さん。写真右は、ナチュラルサイエンスのブランド「ママ&キッズ」の商品。人気のベビーラインの他に、妊娠中〜敏感肌の大人まで、成長に合わせたラインナップがある。

 小松さんは、自身と次男がアトピーで苦しんだ経験を持つ。あちこちの病院を訪ね歩き、30年前に出会ったのが小児皮膚科の医師だった。
 小児科、皮膚科と別々に存在する病院が多いなか、“小児の皮膚” を専門に診る、日本では数少ない専門家の存在に、救われた思いがしたそうだ。
 「肌荒れの赤ちゃんは小児科に行くので、皮膚科と出会う機会がないんですね。現場の医師として、数多くの小児の皮膚のデータを持ち、日々研究を重ねているその先生との出会いは、本当に大きなものでした」

 大学では化学を学び、その後大人向けの化粧品開発に携わったことはあるものの、乳児向けのスキンケア開発は未知の世界だった。
 「息子と同じように、肌トラブルに悩む赤ちゃんはたくさんいるはず。誰かがよい商品を作ってくれるならそれを買いたいけれど、ないから自分が作るしかない。この先生に指導をいただいて、作ってみよう」
 ナチュラルサイエンスの背骨となる、専門医との赤ちゃんの敏感肌研究は、こうして始まったのである。

「大人も赤ちゃんも使えるものを、と思ったのは、乾燥性のおとなの敏感肌と赤ちゃんの肌は、うるおいが不足し、バリア力が低いという点において同じだなと気づいたからです」(小松さん)
 なるほど、世界でいちばんデリケートな肌を持つ赤ちゃんにも使えるものは、たしかに敏感肌の大人にも使えるにちがいない。

 北海道と東京、私の訪ねたナチュラルサイエンスの工場はどちらも、手術室並みのクリーンな環境だった。そこでは、最新機器にすべてを頼るのではなく、各所に多くの人の目によるチェックが入っていた。人にしかわからない微細な違和感を見逃さないためだという。

 化粧品づくりに欠かせない水は、地元の水質日本一になった 倶多楽湖 ( くったらこ ) から北海道工場に引いている。

 敏感肌や肌が弱っている人たちでも使えるモノづくりの舞台裏を見た私は、もうひとつ印象的な部屋を見た。

 東京のコンタクトセンターだ。肌トラブルや悩みに応える、子育て経験豊富な専門スタッフが常駐している。
 それぞれ電話やメール、ZOOMやSNSを使って応え、個々の机には、山のような資料やデータが積まれていた。
 どんな悩みが寄せられ、どんなふうに応えたかは毎日共有し、「その回答が適切であったか」を、代表の小松さんもふまえ皆で確認し合うらしい。

 効率という視点とは真逆のようなスタイルである。
 そうまでする意義はなんだろう。サービスというひと言のためにこなせる熱量とは違うなにかを感じた。

 セミナー開催は16年間続けている。それらがデータの蓄積となり、モノづくりやコトづくりに生かされる。

 あるとき、彼女が額の肌荒れに悩む中学生と対面した。
 「部活を聞くと、剣道部だという。じゃあ額に当たる手ぬぐいを毎日変えてみてはとご提案しました。その後、額の肌荒れが減っていったとお聞きして。こんなふうに、やはりモノ作りと同時に、行動など “コト” への働きかけも両方必要なんですね」

 私は一年でモイストオリゴミルクを3本使い切った。
 まだ少ないのかもしれないが、乳液というものを3本も使い切ったのは初めてで、ちょっと感動している。
 点置きして、ていねいに指でなじませていく習慣も身についた。
 いいものを買って満足、ではなく、その前後の所作も含めて、お手入れは完成するのだということを身をもって理解した。

 また、自分の手のひらで肌をいたわるようにケアする時間に、心がゆるんでいくのを感じた。幼い子が親にそうされる瞬間は、もっと大きな安らぎに包まれることだろう。

 赤ちゃんも大人も使える敏感肌に着目した商品づくりを30年続けている。最初に作った薬用コスミソープの売上は2個だった。開発は3年を要している。
 つくづくロールモデルのない仕事である。
 ひとりの母親が、「自分と同じように苦しんでいる親や子どもの肌を良くしたい」の一心で始めた日々は、嵐やどしゃ降りもあったはずだ。
 それでもぶれずにやってきた小松さんの原動力とは──。
 「私、子どもといるときの自分がいちばん好きなんです。一緒にいるだけで“子どもの感性って素敵だな”と思う瞬間が毎回ある。私は心にたくさんギフトをもらって、耕しているだけかもしれません」

 目の前の小さな人たちに少しでも喜んでもらいたい。肌荒れに悩むおとなや、我が子の肌に心を痛めている人たちの気持ちを少しでも軽くしたい。少しでも、ひとりひとりの肌の調子が良くなってもらいたい。
 その一心で走り続けている人のシンプルだが強い理由だった。

▲ナチュラルサイエンスの敏感肌製品づくりに欠かせない水源である倶多楽湖にて。

 長いインタビューが終わった。
 自社工場や庭園、森の工舎のある北海道白老町の「ナチュの森」や倶多楽湖も一緒に旅した。

 人生の少し先輩なれど、知れば知るほど、子どものように無邪気で自然体の女性である。
 最後に彼女はつぶやくように、あるいはほっと一息つくように、こう語った。
 「私ね、赤ちゃんから使えるスキンケアのお仕事やらせてもらってよかったなあってしみじみ思うんです。子どもたちと一緒に未来を作れる。それがエネルギーになっているのかも」
 まっすぐなまなざし。穏やかな言葉の端々に、心の底からの感謝の情が滲む。
 私はすとんと腑に落ちた。企業ゆえに利益の追究という命題もあろう。ただ、それが原動力や最終目的だと、こういうモノづくり、コトづくりはきっとできない。
 子ども心を持ったおとなに久しぶりに出会った。


§


続く第3話では「スタッフの愛用レビュー」をご紹介します。

エッセイ内に登場する乳液
「ママ&キッズ モイストオリゴミルク」の詳細はこちら
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▶︎大平さんがお届けするナチュラルサイエンスのポッドキャスト番組、「親になっても、わたしは続く。」はこちらからお聴きいただけます。


【写真】井手勇貴(6,9枚目以外)


もくじ

大平一枝

エッセイスト。長野県生まれ。編集プロダクションを経て1995年独立。著書に『東京の台所』『こんなふうに、暮らしと人を書いてきた』(平凡社)、『新米母は各駅停車でだんだん本物の母になっていく』(大和書房)、『ふたたび歩き出すとき 東京の台所』(毎日新聞出版)、『注文に時間がかかるカフェ』(ポプラ社)ほか。一男(29歳)一女(25歳)の母。

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