【インテリア特集】第1話:築40数年の味わいを生かしたリフォーム
ライター 嶌陽子
岩﨑朋子さんの自宅を訪ねました
東京・世田谷区等々力で、家具と雑貨の店「巣巣」を営む岩﨑朋子さん。
家具デザイナーでもある岩﨑さんがデザインした無垢材の家具や、上質で実用的な雑貨が並ぶお店は、今年で14年目。わざわざ遠方から訪れるファンも大勢います。
また、10数年前、ふとした縁で出合ったラトヴィアの手工芸品に魅せられて以来、毎年、ラトビアの夏の野外マーケットを訪問。そこで買い付けて来る、かごやラグ、日用品も人気です。
今回は、ほっとする雰囲気の中に遊び心も感じられる、岩﨑さんのご自宅を、全4回にわたってご紹介します。好きなものの飾り方や、収納法など、真似したくなるアイデアも満載です。
どうぞお楽しみに!
(※登場するアイテムは、全て私物です。過去に購入したものを紹介しているので、現在手に入らないものもございます。どうぞご理解、ご了承いただけると幸いです)
第1話
築40数年の味わいを生かしたリフォーム
一目見て「100点」と惚れ込んだ部屋
築42年。
岩﨑さんが、8年ほど前に出合った今の住まいは、かなり年代物のマンションでした。
色々と物件を見て回ったという中、このマンションのどこに岩﨑さんは惹かれたのでしょうか。
岩﨑さん:
「味のある古いマンションを自分好みにリフォームし、自分でデザインした家具を置いて楽しみたいと思い、中古マンションを買うことにしたんです。
最初に10軒くらいのマンションを見ましたが、どうもピンときませんでした。間取りとか作りとか、言葉で説明できるものではなく、実際に見に行った時に感じる『自分との相性』が、私にとっての唯一の基準だったんです。
今の家に内見に行った時、一目見て、『100点だ!』と思いました。まわりに木がたくさんあって、敷地内にも大きな桜の木があって、すごくいい雰囲気だなあって」
42年間、一度もリフォームされていなかったというのも、こだわってリフォームしたいと考えていた岩﨑さんにとっては魅力でした。
ドアは新ししいものに付け替えず、ペンキを塗っただけ。何ともいえない、ほのぼのとした佇まい。
ガラスの引き戸も、元々あったものを残した。時を重ねた木の風合いがやさしい雰囲気。
リフォームにあたっての岩﨑さんの方針は、「年月を経て味が出ている部分は残す」というものでした。
大きく変えたのは、水回り(浴室、トイレ、キッチン)を新しくしたことと、寝室以外の部屋の床をフローリング材にしたこと。フローリング材は、床暖房対応の国産ヒノキ材にしたいと思い、インターネットで探して自ら注文。大工さんに張ってもらいました。
岩﨑さん:
「資材は大工さんに注文してもらった方がよい場合もあるので、確認してみるといいと思います」
<リフォーム前>
<リフォーム後>
ヒノキ材は適度な柔らかさがあり、湿気も吸ってくれる。「ほのかに香りもして、気持ちいいです」
シンプルなリフォームで、コストも抑えて
その他の大きな改装は、天井や壁などをペンキで塗装したこと。それ以外は、間取りも含め、なるべく元々あったものを生かすようにしました。
「古いマンションでも、全てを新しく取り替えれば、部屋の中は新築同様になります。でもこの部屋は、せっかく長い年月を積み重ねてきたのだから、その落ち着きや風合いを生かしたいと思って」と岩﨑さん。
その言葉通り、この家には、どこかほっとする、やさしい雰囲気が漂っています。
また、特にドアといったパーツを丸ごと新しく付け替えるのは、費用もかなりかかるのだそう。
岩﨑さん:
「私の場合、そういった大がかりなことや、特別凝ったことをあまりしなかったので、費用も抑えられました。シンプルなリフォームだったから、『もっとこうすればよかった』という後悔もないですね」
DIYしながら、プチリフォームを楽しむ
以前は、家具作りの勉強もしていたという岩﨑さん。家の中にも、自分でDIYしたものが色々ありました。
上の洗面台も、実は岩﨑さんの手づくり!
市販の洗面台に気に入ったものがなかったため、自分でデザイン。杉材を注文してカットして送ってもらい、組み立てました。
そこに、カタログで探した外国製の洗面ボウル、そして水栓をはめ込んでもらったそうです。(洗面台の上の鏡つき戸棚は、以前「巣巣」で販売していたオリジナル商品です)
つい最近、新たにリフォームした場所もあります。
デッドスペースとなっていた四畳半の空間。工務店に依頼して、押し入れの棚の一部と扉を取り外し、趣味と瞑想のための部屋にしました。
壁にかけられた絵は美術家・永井宏さんのもの。
壁のペンキは自分で塗ったそう。使ったペンキはアメリカのブランド「ベンジャミン・ムーア」。3000種類以上の色がある中から、今回選んだのは、「アップル・ブロッサム」という色だそうです。
岩﨑さん:
「ペンキで家具や壁を塗るのって、欧米ではわりと気軽にやってるみたいですよね。
私も時々やりますが、楽しいですよ!
自分の好みの色を気軽に部屋の中に取り入れられるし、しばらく経って気分が変わったら、違う色に塗り替えもできますし。
壁などの大きなスペースに塗るのが難しいと感じるなら、まずは小さな家具から始めてみるのもいいかもしれませんね」
住み始めてから8年ほど経った今も、気分や状況に応じて、プチリフォームやDIYをしている岩﨑さん。今でもじっくり、マイペースに、家との付き合いを楽しんでいるようです。
使うほどに気持ちいい、木の家具の魅力
ひときわ存在感を放つダイニングテーブルは、十数年前から使っている。
「巣巣」で人気の、オリジナル安楽椅子&オットマンと、色使いがきれいなラトビア製の裂き織りマット。
落ち着いた雰囲気の岩﨑さんの自宅に、しっくりと馴染んでいるのが、無垢材の家具。
「巣巣」を始める前に働いていた家具店のもの、自身でデザインしたものなどが、どの部屋にも置いてあります。
リビングに置かれていたのは、岩﨑さんがデザインしたCD用ラック。あまり詰め込み過ぎないことで、ゆとりのある雰囲気に。
岩﨑さんは、 無垢材の家具の魅力を、こう語ります。
岩﨑さん:
「本物の木は、触っているだけで気持ちいいし、元気をもらえます。家の中に、ひとつでも木の家具があると、帰ってきた時にほっとするんです。
何十年も使えるし、使えば使うほど、ツヤが出たり、肌触りがよくなったりと、味わいが増してくるんですよね。
『家具を買うのはハードルが高い』という場合は、木のカトラリーや雑貨などを一つ買ってみることから始めてみてもいいと思います。使ううちに、天然の木の良さを実感できると思いますよ」
「巣巣」オリジナルの木製フレームミラー。現在販売しているのは、フレームがより細くなったもの。
ここで、岩﨑さんに木の家具とのつき合い方に関して、気になっていたことを質問してみました。
Q: 一口に「木」といっても、チークやウォルナットなど、色々な種類がありますが、どんな基準で選べばいいですか?
A: それぞれに良さや特徴はありますが、あまり種類は気にせず、自分の直感で「好き」と思ったものを選べばいいと思います。また、家の家具を全部同じ素材で統一しようと思わなくても、気に入ったものを選んでいれば、自ずと統一感が出ますよ。
Q: 木の家具のお手入れは、どのように、どのくらいの頻度ですればよいですか?
A: あまり神経質にならず、触ってみて「カサカサしてきたな」と思った時に、市販されている専用の蜜蝋ワックスを塗れば大丈夫!
Q: 新築の部屋やモダンな雰囲気の部屋に、風合いのある木の家具を置くと、何となくちぐはぐな雰囲気になってしまう。そんな場合は、どうしたらいいのでしょう?
A: 好きなラグなどの敷物を敷いて、その上に家具を置くなど、クッション役を果たしてくれるものを間に入れると、うまく馴染んでくれるかもしれません。
寝室にあったのは、子どもの頃から使っているという、原点のような木の箪笥。何度もペンキを塗り替えたりして、使い続けている。
ところどころ色がかわったり、小さな傷がついていても、それが味になるのが、木の家具のいいところ。
この家に流れている、心地よい「気」は、数々の木の家具から生まれているように感じました。
次回は、リビングルームを中心に、岩﨑さん流「好きなものの飾り方」をお届けします。
どうぞお楽しみに!
(つづく)
【写真】木村文平
もくじ
こちらも合わせてご覧ください
岩﨑 朋子
シンプルで機能的な家具や雑貨を集めたお店 「巣巣」 店主。「鳥が巣をつくるときのように、気に入った家具や雑貨を集め居心地のいい空間をつくり上げてほしい」という思いから、店内には無垢材など上質の天然素材でできた家具や雑貨が並ぶ。巣巣の家具デザインも担当している岩﨑さんご自身がデザインした巣巣オリジナルの家具や、アジアのアンティーク家具も。お店は月曜定休、東急大井町線等々力駅より徒歩10分。http://www.susu.co.jp/
ライター 嶌陽子(しま ようこ)
編集者、ライター。大学卒業後、フリーランスでの映像翻訳や国際NGO職員を経た後、2007年から出版社での編集業務に携わる。2013年からフリーランスで活動を始め、現在は暮らしまわりの記事や人物インタビューなどを手がける。執筆媒体は『クロワッサン』(マガジンハウス)、『天然生活』(地球丸)など。プライベートでは1児の母として奮闘中。
▽岩﨑さんの著書はこちらからご覧いただけます。
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