【メイクで違う一日に】第3話:毎日に色をつける。わたしが、わたしのためにするメイク

商品プランナー 斉木

美容ライターの長田 杏奈(おさだ あんな)さんに、自分を大切に想う気持ちを育むためのメイクを、週に1話ずつ、全3話でお届けする今回の企画。

前回は、しっかりメイクをしなくても大丈夫。自分の肌に優しい、最小限のアイテムで仕上げるメイクをご紹介しました。

最終話となる今回は、「自分のためにするメイク」がテーマ。メイクを通して自分の「いいところ探し」をしてほしい、と話す長田さんに、自分らしいメイクとの付き合いかたについて聞いてみました。

 

メイクは、気分よくいるためのひとつの手段

毎日ゆったりと自分に手をかけられたら理想だけれど、スキンケアをする時間が取れなかったり、日常のあれこれに押し出されて、メイクが後回しになるときだってある。すっぴんの顔をマスクとめがねで隠して家を飛び出す……そんな日があっても大丈夫ですか?

長田さん:
「もちろん大丈夫ですよ。わたしはメイクが好きだけど、そうじゃない人だってもちろんいます。

でも例えば、メイクをしていないことで後ろめたさを感じたり、人前に出たときに『本当のわたしはこうじゃないんです。だって、だって……』と卑屈になってしまうなら、それは自分にとっても相手にとっても居心地が悪いですよね。

それなら3分でいいから、さっとリップを塗ったり、チークを塗ったりして、『よしっ、これで今日は気分よくいられるぞ』って思えた方が自分のこころが楽だと思うんです。おまじないのようなものですね」

 

自分をごきげんにするメイク、何から始めたらいいですか?

▲長田さんお気に入りの資生堂「PLAYLIST」シリーズと、繰り返し読んだという資生堂監修の書籍

とはいえ、いままで化粧は「自分の欠点を隠す」ためのものだったから、自分のいいところを探したり、自分が心地いいようにと思っても、何から始めればいいのかわからなくて……。

まず、何から試すのがおすすめですか?

長田さん:
「一番気持ちが上がるアイテムから試すのがいいと思います。

例えばネイルを塗ることが好きなら、そこから試してみる。チークをつけたとき『よしっ』と思えるなら新しい色を買ってみたり、つける位置を変えてみたり。

少々気恥ずかしくても、『自分いいね!イケてる!』って思う気持ちが一番大事だと思います」

長田さん:
「でも、個人的におすすめなのは “リップ” です。リップを塗っているだけでメイクをしている感じがぐっと増すんです。それは見た目もそうなんですけど、本人にも自覚のようなものが生まれる気がしていて。

ほんのり色づくティントリップ(※)や、前回紹介したマルチカラーなど、最近はいろいろなタイプのものが出ているので、自分の生活に取り入れやすいものがきっとあると思います。

わたしの場合、びっくりするような色のリップを『でもコレをつけて街に出ちゃうもんね!』と思い切って使ってみる、そういう冒険心を持ち続けたいと思っています。

毎日の自分の気分やそのときの天候に合わせて、今日はこれをこんなふうに使ってみようかな、そんなちいさな挑戦や好奇心を試すときが、わたしは一番楽しいんですよね」

※ティントリップ:ティントとは日本語で「染める」の意味。唇の水分量や状態に合わせて染み込むように色がつき、色落ちしにくいのが特徴のアイテム

 

「もし大好きな場所に行くなら……」そんな日のメイク、見せてください!

毎日の気分や天候、出会う人によってメイクを変えている長田さん。そのことを友人に驚かれたのが、Instagramでメイク日誌を始めた理由だったといいます。

最後に、「もし、今日はひとりで好きなところに行っていいよ!と言われたら、どんなメイクをして、どんなところに行きたいですか?」という質問を投げかけてみました。

二児の母でもある長田さんは、そんなつかの間の息抜きを、どんなふうに、どんなメイクで過ごすのでしょう。Instagramに投稿しているメイク日誌のように、ご自身の言葉で綴ってもらいました。

 

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(右上から時計回りに 1. ジェン ヌード リキッド リップ インフェイマス/ベアミネラル、2. キャプティベイティングパフォーマンス フルイドアイライナー 03/THREE、3. リップティファイナー M10/クリスチャン ルブタン、4. ミュゼル ノクターナル レアタッチアイムース EX (限定品)/ポーラ、5. ルナソル カラーリングソフトチークス 01 /カネボウ化粧品)

「疲れがたまると、深い緑色をした苔や植物が恋しくなる。ふらっと立ち寄れる苔スポットのひとつが、表参道の根津美術館。

心が鎮まる和の展示をさらっと見たあとは、庭に出て苔や植物を眺めながら散策へ。草木が香るしっとりとした空気を胸いっぱいに吸い込みながら歩けば、いつの間にか呼吸は深くなり、身も心もゆったりとほぐれてくる。併設の『NEZU CAFÉ』で、ガラス越しの緑を堪能しながら、抹茶と和菓子のセットで一息。

お抹茶を飲む予定があるときは、お茶碗にリップがべったりつくのが嫌なので、ヌーディやマットなリップが定番。自分の唇に馴染む色のリップライナーで、フォルムを整えてきちんとした印象に。

口元を引き算したぶん、目元に入れたニュアンスのあるモーヴカラー(藤色)のライナーがポイント。チークはさりげなく陰影を引き立てるよう、肌色に近いカラーをほお骨に添うように入れて。

喧噪(けんそう)と距離を置いてひと呼吸したい日の、静謐(せいひつ)なムードのメイク」

文:長田杏奈

 

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「直す」から「見つける」へ、メイクで知る新しい自分

▲取材時、長田さんにいただいたスティックアイシャドウに、ブラウンカラーの口紅を合わせるのが最近のお気に入りです

メイクをするとき、いつも鏡のなかの自分と目が合わないようにしてきました。自分のコンプレックスばかりが目についていたんです。

でも、取材以降、「自分を嫌いになるのは簡単だけど、最後に自分を守ってあげられるのも自分だけ。だから自分を大事にする気持ちが一番大切」という長田さんの言葉をお守りに、毎朝鏡の前でちいさな「いいところ探し」をするようになりました。

今までの、嫌いな部分をどうにか「直す」メイクより、いいところを「見つける」ためのメイクは、驚くほどわたしのこころをほぐしてくれました。

まだ、鏡にうつる自分に「よしっ」と思うときに、ほんの少しこそばゆいような気持ちがあります。でも、そうやって過ごすうちに、いつものあたりまえの景色がほんのり色づき、前よりも人に笑いかけることが増えたような気がします。

自分に手をかけるって、悪くない。メイクは日々を生き抜く大人の女性が、肌に触れながら、自分のこころにも触れる時間なのかもしれません。

(おわり)

【写真】鈴木静華(11枚目以外)


 もくじ

長田 杏奈(おさだ あんな)

美容ライターとして「MAQUIA」、「BAILA」、「SPUR」など多くの女性誌で記事を執筆。プライベートでは息子 (10歳)と娘(8歳)を育てる。趣味は美容、セレブ、女子プロレス観戦、北欧ミステリー、苔。Instagramは@osadanna。


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