【新連載|ケの日のこと】偉大なぬくもり
「家族と一年誌『家族』」編集長 中村暁野
第1話:偉大なぬくもり
先日、娘の七五三がありました。無事にここまで育ってくれたことに感謝した「ハレの日」でした。
振り返ればあっという間の7年間。なんでもない毎日こそがかけがえのない宝物……のはずが、なんでもない毎日を繰り返すハードさにへこたれることも多い7年でした。
子供達がまだ幼い故、物事が思うように進まない。これが目下の悩みで、今日もついつい「きみたちといると何にもできないよ」とボヤいては「子供と暮らすってそういうもんだよ、ママ」と、娘に諭されてしまったわたし…。
情けなさとやるせなさに、さっそくまたへこたれそうになりました。でも、毎度小さなことでへこたれてしまう、そんなわたしを持ち直してくれるのもまた、小さなことだったりします。
せわしない中だからこそ感じられるささやかなシアワセだってある、と思えば人生も家族も毎日も、きっとハレとケの両方あってこそ。へこたれては持ち直し、またへこたれては持ち直す。そう、『ケ』の日だって悪くない。
例えば、もう少し寝ていたい……と願いつつ、虚しく起き上がるしかない、そんな『ケ』の日の朝に見つけたシアワセについてです。
ぬくぬくがくれた、毎朝の静かな誓い
朝、それはわたしが一日で一番追い詰められる時間です。
右肩と左肩にそれぞれぴたりとくっついている0歳の息子と7歳の娘を起こさないようベッドを抜け出し、暗い部屋のカーテンを開け、ストーブをつけ部屋を暖め、二人が起きてしまう前に洗濯機を回し、お弁当と朝食を作りたい。余裕があれば洗い終わった洗濯物も干しておきたい。
だけれど朝食を作っている途中で息子は起きて泣いてしまうし、朝食が出来たと呼んでも娘と夫は起きてこない。ようやくテーブルに全員座ったと思ったら息子がお茶をこぼす、娘が食事を中断して踊りだす……。というように、大抵のことはスムーズにいかず、予想外の事件が起きる。時間が迫る。わたしの忍耐力を試されているかのような、一日で一番追いつめられる時間。そんな時間のささやかなシアワセに、昨冬ついにわたしは巡り会ったのです。
それは温めたタオルで顔を蒸す、「スチーム洗顔」をすること。
スチーム洗顔に出会って以来、起きてすぐ、薄暗いキッチンに立ちガスの青い炎を見ながらヤカンでお湯を沸かす日々を送っています。シュンシュンとお湯が噴き出しはじめたら火を止め、流しの桶にタオルを置いてお湯を注ぎ、マグカップにも注ぐ。白湯を一杯ゆっくり飲んだ後、よく絞った熱いタオルを顔にのせてフウ~と一息。
もともと顔をぱしゃぱしゃ洗うのが大嫌いで、洗わなくていいってところに飛びついた洗顔方法だったのに、地獄に仏、渡りに船……って大げさじゃなく、この一息のなんとも言えない心地よさは、自然とわたしをゆるめてくれるようになりました。せわしない朝、きゅっと引き締めることはあってもゆるめるなんてこと、長年意識もしてきませんでした。顔の上のタオルが冷めるまでのあいだ呼吸を整えながら心と身体をゆっくりゆるめていく。ちいさいけれどおおきな変化です。力をぬいてゆっくりと一日をスタートしよう、そんなふうに思えるようになったのです。
たとえいつもより早く息子が泣き出そうとも、5回起こしても夫が布団から出てこなくとも、用意した朝食に娘が文句を言おうとも、今日こそ動じず過ごしてみせよう。ぬくぬく誓う決意は、今のところ毎日玉砕しているけれど、それでも毎朝信じる気持ちを芽生えさせてくれる。
スチーム洗顔のぬくもりは、偉大な偉大なぬくもりなのです。
【写真】馬場わかな(1枚目)、中村暁野(2枚目)
中村暁野(なかむら あきの)
家族と一年誌『家族』編集長。Popoyansのnon名義で音楽活動も行う。7歳の長女、0歳の長男を育てる二児の母。現在は『家族』2号の取材を進めている。2017年3月に一家で神奈川県と山梨県の山間の町へ移住した。http://kazoku-magazine.com
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