【木曜日になったら、純喫茶】チカラを抜きに…… 静かなひとり時間を過ごしたい珈琲店

難波里奈

これまで1700軒以上の喫茶店をめぐってきた難波里奈が、月1でおすすめの喫茶店をご紹介する連載 「木曜日になったら、純喫茶」 。

今月は「本当においしい珈琲が飲める名店をテーマにお届けします。

珈琲好きな店主が、ていねいに淹れた一杯。年始から一生懸命に突き抜けてきた自分へのご褒美に、純喫茶で静かなひとときを過ごしませんか?


自分へのご褒美に、静かなひとときを。
一杯の珈琲にこだわった純喫茶


ふと立ち寄った純喫茶で、かじかんだ指先をあたためるコーヒーカップ。そのぬくもりにほっとする、今日この頃です。

でも一方で、純喫茶で珈琲を飲むのはルールが分からないため敷居が高い、という方はけっこういらっしゃいます。

今回ご紹介するのは、JR大久保駅南口から53歩という距離にあり、雨の日でも濡れずにおいしい珈琲を楽しめる純喫茶。

線路沿いにある『珈琲店 ツネ』は昭和48年創業、「珈琲一筋」という店主の山田さんが始めて45周年目となりました。

元々こちらでは山田さんの友人がお好み焼き屋を営んでいましたが、体調を崩されて閉店する際に「ぜひこの場所を引き継いでほしい」と言われ、譲り受けたそう。

山田さん自らが設計した店内は、当時からずっと変わらない佇まい。

骨董品が好きで「茶色、木のぬくもり、煉瓦」と決めて創りあげたセンスは、時間を経てもまったく色褪せません。

「珈琲は中学生の頃から飲んでいましたね。母が好きだったため、よく赤坂の外国人居留地まで珈琲豆を買いにお使いしていました」と、山田さん。大人になってからも珈琲屋でアルバイトをし、まるでこの道に進むことは決まっていたかのようです。

珈琲へのこだわりや熱意は相当のものであるはずの山田さんですが、訪れたお客さんたちに自分の好きな飲み方を押し付けることはありません。

「珈琲はそれぞれが好きなように飲んでほしいのです。砂糖を3杯入れてもミルクをたっぷり入れても、その人が美味しいと思える飲み方が一番です。それでツネの珈琲を好きになってくれたら嬉しいですから」

山田さん曰く、珈琲を味わう上で大切なことは「味・コク・香り」の3つ。

お店を出た帰り道に、まだ舌の上で珈琲の余韻を感じられるくらいのコクがある一杯が理想だそう。

「珈琲豆の成分をいかに引き出せるかが我々の役目です。カップの大きさに合わせて適切な豆の量をきちんと使用することが大事だと考えています」

注文したツネブレンドを飲んでいる時に、コーヒーカップの縁が厚めであることに気がつきました。その理由は保温性を高めるため。

カウンター後方の左右には食器棚があり、そこには美しいカップたちが並んでいます。ストレート珈琲用のカップかと思っていたら、なんと常連の方たちのマイカップだったのです。

▲3ヶ月に一度以上の訪問があることを目安に置いてあるのだとか。

「コーヒーを飲みたい、と思った時に『そうだ、自分のカップがあるツネに行こう』と思ってほしいんです」なかには、人間国宝の陶芸家・鈴木五郎さんのカップも。

帰り際、山田さんからある質問を受けました。

「あなたは、いつもおいしいと思って飲んでいる珈琲が、ある時たまたま入ったお店で『なんか違う』と思ったらどうしますか?」

「もし好みではなかったとしても、これがこの店の味なのだ、と思って受け入れます」と答えると、「それが正解だと思います。おいしい、まずい、というのはなくて、味覚は人それぞれ違うのでその人に合わなかっただけのことなんです」とこの日一番印象的な笑顔で話す山田さんに深く頷くのでした。

「好きだから今まで続けてこられたのでしょうね。珈琲は鮮度が大切ですから、注文ごとに豆を挽いて淹れたてを好きなように飲んで頂けたら、それが一番うれしい」

高架の上を走る電車のガタゴトという音を聞きながら、肩肘張らずに楽しめるこだわりの珈琲。

その一杯を味わいに、今日の帰り道、大久保駅に下車してみてはいかがでしょうか?

珈琲店 ツネ
住所:東京都新宿区百人町1丁目24-16
TEL:03-3371-5383
営業時間:8:00〜19:00
定休日:無休

 


1月に行きたい純喫茶、こちらもおすすめ。


神保町 神田伯刺西爾
古本片手に、コク深い珈琲を

神田伯刺西爾 (カンダブラジル)
住所:東京都千代田区神田神保町1丁目7 書泉グランデ脇小宮山ビル
TEL:03-3291-2013

 

西荻窪 コーヒーロッジ ダンテ
禁煙の店内で珈琲の香りまで楽しめる

コーヒーロッジ ダンテ
住所:東京都杉並区西荻南3丁目10-2
TEL:03-3333-2889

【写真】岩田貴樹(最後2枚をのぞく)

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難波里奈

東京喫茶店研究所二代目所長。東京生まれ。会社勤めを続けながら仕事帰りや休日を利用して足を運んできた喫茶店の数は、なんと1700軒以上。ブログ
「純喫茶 コレクション」 をはじめ、著書 『純喫茶へ、1000軒』 (アスペクト)、『純喫茶、あの味』 (イースト・プレス) を通じて喫茶店の魅力を伝えている。他にテレビや雑誌などで幅広く活躍中。http://retrocoffee.blog15.fc2.com/

▽難波さんの著書はこちら

 


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