【スタッフコラム】思い出し笑いができる旅は、きっといい旅。
お客様係 中川
旅に出ると、きれいな景色に心打たれたり、おいしいご飯に感動したり、たくさんの思い出ができますよね。
でも一番濃く思い出すのは、予想外に起きたハプニングだったりします。
初めて行った海外旅行のことで一番思い出すのは、楽しみにしていた宿の予約日を間違えてしまい泣いたこと。
友人数名で行ったヨーロッパ旅行では、お土産を買いすぎてトランクが重量オーバーしてしまい、空港で必死に荷物を整理したこと。
もちろんその時は本当に真面目で必死で笑えないのですが、今では思い出す度に吹き出してしまう笑い話です。
そういえば、私の一番古い旅の記憶も、こういう予想外の出来事でした。
20年前の、旅の記憶
それは約20年前、父・母・姉・私の家族4人で、1週間ほど旅行に出かけた時のこと。
当時私は小学3年生。
計画は「とりあえず東京から関西方面に向かって、最後は京都に行って帰ってこようね」、以上。
道中何をするか、どこに泊まるのかは全く決まっていませんでした。
両親は行き当たりばったりな旅が好きなのです。
「予定のない旅、かっこいい!」と私もワクワク。
でも旅の途中、不穏な空気が漂い始めました。
父の運転する車が停まったのは、人ひとりいない静かな道。外は街灯もほぼなく真っ暗。
母は助手席から外にでて、オレンジの街灯に照らされた電話ボックスへ小走りに入って行きました。
片手には分厚いタウンページ。公衆電話に小銭を入れてダイヤルをプッシュ、少し話してお辞儀をして受話器を置き、またを小銭を入れて…を繰り返しています。
母は今晩泊まる宿を探していました。そう、夜になってもまだ宿が見つかっていないのです。
とりあえず車を走らせて、「ここだ!」と思ったところで宿さがししようと思っていたそうですが、8月の京都はどこも予約でいっぱい。
父と母の焦りを察して、今日寝る場所ないの?私たちどうなるの?と、とっても不安になったのを覚えています。
母が電話ボックスから笑顔で出てきて「見つかったよー!」と言った時は、心の底から安心しました。
忘れられない、謎のお茶
到着したのは、謎めいた雰囲気の古い宿。
薄暗い灯りに照らされた宿の看板は、一部が剥がれ落ちて宿の名前がわかりません。
その怪しげな雰囲気を感じ、安心した気持ちは一気に消えまた不安に逆戻り。
案内されたいびつな三角形の小さな部屋は、天井に洗濯ロープが張り巡らされ、たくさんの洗濯バサミがぶら下がっていました。
赤いバンダナを頭に巻いた宿のおじちゃんが急に部屋に入ってきて、「はいどうぞ~」と手渡されたのは2リットルのペットボトルのお茶。
ウェルカムドリンク、だったのでしょうか。
飲んでみると、今まで一度も出会ったことのない甘苦~いお茶。今でも舌がその味を覚えています。
謎のお茶に狭い部屋、窓の外は真っ暗な知らない街。
当時私は普段から夜に一人でトイレにも行けないような子どもでしたから、もうそれはそれは相当ビビっていました。
その日の夜は、無計画に旅に出る父と母を少し恨めしく思いながら、きっと今は夢の中だ、さっきのおじちゃんとお茶は幻だ、と思い込むようにして眠りにつきました。
父と母は面白い宿だと笑っていたので、大人から見たら「少し古い個性的な宿」くらいだったのだと思います。
年を重ねても、昔の記憶は当時の自分の感覚のまま覚えているから不思議です。
旅の思い出は、意外なところに
でも、1週間ほどの旅程の中で、ちゃんと覚えているのはこの夜の出来事だけ。
きっと、一番想像していなかった経験だったからだと思います。
それは家族みんなも同じようで、たまにこの日の事を思い出しては、「宿が見つからなかった時は焦ったよね」「あの宿はなんて名前だったかな?もう一回行ってみたいね」と笑いあっています。
20年経っても鮮明に覚えていられることなんて、そうないもの。
そんな出来事に遭遇できたことが、この旅一番の収穫だったかもしれません。
*****
もうすぐ夏本番。
旅にでるのもいいけれど、家族や友人と昔の旅を思い出して笑いあうのもいいかもなぁ、と思っています。
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