【一年の終わりに】前編:元気をもらいたいときに立ち寄る、雑貨店を訪ねました。
編集スタッフ 寿山
もうすぐ2020年が終わります。
いつになく沢山の感情をくぐり抜けた今年。確かなことは一つもないけれど、一年は終わる。
つかの間でも、ホッとできたなら……
元気ですか?と、当てどもない話をしたくて。西荻窪にある雑貨店「Loupe(ルーペ)」の店主、出下厚子(いでした あつこ)さんを訪ねました。
小さな雑貨がもたらしてくれたもの
Loupeは、わたし寿山がパワーをもらいたいとき、つい立ち寄ってしまう雑貨屋です。
家で過ごす時間が長くなったばかりの頃、仕方がないと、あきらめの中でやり過ごしていたとき。抑揚のない生活に、喜びをもたらしてくれたのは、この店で買った「小さな雑貨」でした。
外出が制限されるなか、Loupeのオンラインストアで花柄のショッピングバッグを購入した私は、次の日から少しだけワクワクしながら、近所のスーパーへ向かうようになったのです。
一番必要じゃないもの、なはずなのに
もともと雑貨は好きで、家にもたくさんあるけれど、インテリアの飾りと捉えていたり、どこか人目を気にして選んでいる自分もいたり。今より距離がある存在だったかもしれません。
けれど、いざ自由に動けない状況になると、毎晩のように雑貨店のHPやSNSで好きなものを探す自分がいました。色のない暮らしで、少しでも心の栄養になるものが欲しかったのです。
どんなときでも、好きな雑貨があれば、生きていけるかもしれない。今更ながら気がつきました。
そんなおしゃべりの延長で、出下さんがあるエピソードを話してくれました。
出下さん:
「今年は皆さんそれぞれに大変な状況で、もしかしたら一番必要じゃないものかなと思ってたんです、雑貨って。
でもここ数ヶ月、『自分のために買いたい』とか『癒されるものが欲しい』とおっしゃって、買い物してくださるお客さまが予想外に増えていて。生活に直結はしなくても、やっぱり必要なものかもしれないと、改めて感じていました。
私も苦しいときに、助けられた経験はあるから。
子どもの反抗期がすごくて八方塞がりな気分のときに、毎日眺めていた雑貨があったんです。ちょっと間抜けな顔をした人形で、嫌なことを忘れさせてくれるなあと、そんなことも思い出していました」
いろいろなことが変わった一年
春先に2ヶ月ほど店舗を休業していた出下さん。その最中に始めたオンラインショップを、試行錯誤しながら運営しています。
出下さん:
「何もかもが手探りですし、若い方のようにうまくは出来ないんですけれど。始めたばかりの頃は、西荻に住む常連さんから、注文と一緒に長めのメッセージをいただいたりして嬉しかったです。
徐々に北海道や九州など、遠方の方からも注文をいただくことが出てきて、アイテムへの感想とか気持ちをコメントしてくださったり。こんな状況でも、雑貨について、いろいろな方とおしゃべり出来たことは楽しかったです。
やっぱりモノが好きだから、こんなの見つけたよとか、ここがかわいい!とか、共有したい気持ちがあるんですよね。私も、きっとお客さまも」
家と仕事場の往復でも、元気でいられたのは
お店を再開してからは、元気にしていましたか?
出下さん:
「お店を再開できるようになってからは、多くの方と同じように、家と仕事場を往復する毎日でした。
主婦でもあるので、朝のうちに近所で夕飯の買い物を済ませてから店へ行き、夕方まで働いて、家に帰ったら食事の支度をする。小さな範囲で完結する、シンプルな生活をずっと続けています。
生活リズムは一定でも、店に並べる雑貨を探していると、ワクワクするようなものに出合うことがあるんです。見たことのないものを見つけたり、バックグラウンドを知ったりしていくうちに、なんだか楽しくなってしまうから。そこからパワーをもらっていたのかもしれません」
雑貨にパワーをもらいながら、出下さんもなんとか元気にしていたと伺って、少し安心しました。
みんな、なんとかかんとか、やっている。
確かなことがなくても、それだけで少し力が湧いてくるから不思議です。
【写真】鍵岡龍門
もくじ
出下厚子
香川県出身。東京西荻窪にて雑貨店「Loupe」を営む。年に数回の企画展を行い、雑貨という括りで世界中のアイテムを扱っている。
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