
インスタグラムや雑誌のスナップ、街中で、思わず目を惹かれるのは、シンプルな服を自分らしく着こなしている先輩たち。
特集【おしゃれなあの人に、会いに】では、まさにそんな先輩のおひとりである千葉和子さんに、センスの裏側を尋ねています。
前編ではトレンドをほどよく取り入れ、鮮度の高いおしゃれを楽しむヒントを中心に伺いました。続く後編では、着回しのポイントやその人らしい装いの作り方などをお聞きします。
前編はこちら
定番服こそ、シルエットと色選びは慎重に

どの家のクローゼットにもありそうなオーソドックスな服ながら素敵に見えるのが、千葉さんの装いです。
千葉さん:
「やっぱりベーシックなものこそ、シルエットが大切だと思います。素材やパターンのちょっとした違いで、太って見えたり、足が短く見えたりしちゃうんですよね。
どうせ着るなら、実物以上に素敵に見せたいじゃないですか(笑)。
ちょっと落ち感があるパンツはすっきり見えるなど、自分なりに発見を楽しめるといいと思います」

色の選び方も、定番のものほど少しのこだわりでぐっとおしゃれに見えるのだとか。
千葉さん:
「白、黒、グレー、ネイビー、ブラウンなど、私も定番色が好き。ですが、たとえば同じブラウン系でも、ちょっとくすんでいるようなものにしたり、グレーでも濃い色は持っていたら、今度は薄い色にしたり。
買うときは、なるべく持っていない色を選ぶようにしているかもしれません。
とはいえ、私の場合、ベースはブラウンやベージュが多く、地味目なんです。小学生の頃、茶道を習っていて、お道具の色の渋さが大好きで。習いに来てらっしゃるマダムたちのお着物も素敵で、そういう色の取り合わせが染み付いている気がします」
差し色で楽しむ着回しのコツ

上質な定番の服を長く着続ける。そんな姿勢にあこがれますが、飽きてしまうことも。そんなとき、千葉さんはどうされているのでしょうか。
千葉さん:
「スペースには限りがありますし、お金だって無限ではありませんから、いかに着回すかですよね。
私の場合は、色合わせを楽しむようにしています。今日の服なら、白いシャツを挿し色ととらえて効かせてみました。まだ寒いですが、少し春の気配もほしい。白が入ることで、軽やかで爽やかな雰囲気を作ってくれる気がします。
ブルー系なんかはクールだったり知的なイメージになりますし、パステル系はふんわりと柔らかなムードを作ってくれますよね。赤系ではポジティブでエネルギッシュな印象もプラスできます。
色の持つ印象を気分やシーズン、予定などに合わせて楽しんでみるのはおすすめです」
▲ブルーの手袋を差し色に。
▲ブラウンの手袋なら、調和のある装い。
千葉さん:
「また、前編でも小物でトレンドを取り入れる話をしましたけれど、色遊びも小物ならばやりやすいのでは? たとえばバッグや手袋で、アクセントにしてもいいし、なじませてもいいですよね」
「着てみたい」という気持ちを大切にする

ベーシックカラーがクローゼットの基本ながら、たまにカラフルな色にも惹かれるといいます。
千葉さん:
「お店で鮮やかなオレンジ色のブラウスを見かけ、すごくかわいいなと思って。でもこんな色、20代の頃は着たこともあったけれど、しばらく着ていないし、恥ずかしいな、と思って帰りかけたんです。
ところがエスカレーターに乗っても後ろ髪をひかれて、試着だけでもしてみようと。
着てみたら、歳を重ねて疲れた顔も元気に見える気がしました。意外と大丈夫じゃない?となり、娘になんて言われるかな、と思いながら買って帰ったところ、『珍しいね、新鮮! なんか良いことがあった人みたい』って。
娘の意見は忖度なしでストレートなので、そう言ってもらえたことはうれしかったです」

千葉さん:
「じつは色だけではなく、デザインでも似たような経験がありました。
私はふだんパンツスタイルが多いんですね。スカートを穿くときも、割とストレートのロングで、パンツのようなシルエット。
あるときクローゼットの整理をしていて出てきた台形スカートがあり、そういえば最近、こういうのが流行ってるな、と穿いてみたんですよ。
その写真をインスタグラムに投稿してみたら、反響が大きくて。『穿いてみたいと思っていたので、勇気が出ました』といったコメントもいただきました」
▲千葉さんのインスタグラム(@kazuu3678)より
千葉さん:
「こんな格好をするのはおかしいかな、といつも同じ格好で安心しちゃうけれど、いつもと違う自分に挑戦するのも、いいですよね。
今って、肌質や髪の色でカラー診断をして、あなたはこれが似合いますよとか、骨格でこういうシルエットを着てくださいとかあって、理論的に似合いやすい傾向を知ることができます。
迷ったときの指針になる一方で、いろいろな診断を受けても何を着ていいのかわからないというお悩みをときどき耳にします。
人はそれほど単純ではなく、ライフスタイルや時代性も含めて考える必要もありますし、メイクや髪型、着こなしで覆ることもあるように思うんです。
そんなときは、好きとか着てみたいとか、気持ちを大切にするといいのではないかな、と思います。
実際に自信を持って着ている人や、『好き』が伝わる装いをしている人は、似合って見えることが多いように感じますし、素敵だなと思います」
好きなものが、時間をかけて「スタイル」になる

千葉さんのように、自分らしいスタイルは、どうしたらできるのでしょうか。
千葉さん:
「私はその人が好きなものを着ていれば、時間とともに、それがその人のスタイルになるのかなと思ってます。気持ちって大事ですよね。
実際に着てみないとわからないですから、トライしてみること。自己表現を楽しむことが、自分らしさにつながるのではないでしょうか。
私自身のことでいえば、奇をてらわない何気ないシルエットながら、作り手の思いがこもっているような服が好きなんです。
たとえばきょう着ているこのセーターは、ウールにカシミアが入っているけれど、すごく強くよった糸で、見た目はコットンっぽい。こういう強いこだわりのある素材には、ぐっときます」

千葉さん:
「こういう好きなものがあって、それを着ていると自然と私のスタイルになっていくのがいいな、と。
とはいえ、あまり自分ではこれが自分のスタイルと決めなくてもいいのかな、とも思っています。年を重ねると、肌の質感や髪の色も変わりますし、合うものや気分も変化することがあるので。
以前は似合わないと感じていた色やデザインが、自分が変化したことで似合うようになったりもします。
そのときどきで、自分がときめくものに出会えたら着てみたいなぁ、と。変化を受け入れて、ある程度柔軟におしゃれを楽しめると豊かだなと思います」

上質でベーシックなアイテムを自分らしく長く着続けているイメージがあった千葉さんは、変化や挑戦も楽しんでいる様子。そしてそんな冒険心があるからこそ、シンプルな装いも、素敵に見えるのかも、とも。
千葉さん:
「やっぱりおしゃれって楽しいことで、気持ちも上がるじゃないですか。好きな服を着ていると、自信も湧きますし。
そういう洋服の良さを十分取り入れて、自分はこうと決めつけず、自分を開いて、いろいろとチャレンジしていきたいな、と思っています」
(おわり)
【写真】鍵岡龍門
もくじ
千葉和子
「ISSEY MIYAKE(イッセイ ミヤケ)」に勤務後、アナウンサーを中心としたテレビキャストのスタイリングを手がけたのち、専業主婦に。40代後半から、大人の女性のためのブランド「SOEJU(ソージュ)」立ち上げに参画。2024年12月よりフリーランスとして活動を開始。
Instagram: @kazuu3678
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