
いつもの服を着ていると安心感はあるけれど、たまには冒険もしたいし、何歳になってもおしゃれを楽しみたい。
そんなことを考えていたときに、フリーランスのスタイリストとして活躍する千葉和子(ちば・かずこ)さんの装いを拝見しました。ベーシックな服で落ち着いた色合いを重ねながら、千葉さんらしさが感じられる洗練されたスタイルが素敵です。
どんなことを気に留めると、今の気分も取り入れつつ、自分らしいおしゃれができるのか、ご自宅を訪ねて伺いました。
モード好きから、ベーシック寄りに

千葉さんは〈イッセイミヤケ〉に勤めたあと、スタイリストになったそうですね。
千葉さん:
「両親が〈イッセイミヤケ〉の服が好きで、子どもの頃からよく見ていたんです。
地元・札幌で服飾を学んだことで、彼の服作りがどれだけ斬新か、そのすごさを改めて知りました。憧れが募り、就職して表参道店で販売員に。
その店は三宅さんご本人も週に1、2度はいらっしゃって、ディスプレイを一緒に変えるなどいろいろ教えてくださいました。宝物のような時間でしたね」

千葉さん:
「お客様のなかにスタイリストをされている方がいらして、30代前半のときにお声がけいただきました。仕事は充実していたけれど新しいことにチャレンジしてみるのもいいかな、と。
アナウンサーのスタイリングが多く、それまでの自分のテイストと違いすぎるので、務まるか不安でした。でもはじめてみたら、本当に楽しくて。
ただ、当時は26時撮影終了とか、そんな時間あります?というような働き方。これは長く続けられないかもしれないと思っていたタイミングで妊娠したこともあり、その仕事はやめることに。39歳でした」
専業主婦時代も、ファッションに助けられました

現在18歳になる娘さんは、子どもの頃は重度のアレルギーがあったと言います。
千葉さん:
「アナフィラキシーショックを起こしてしまったこともありました。喘息もひどく、ICUに入院するほど。働くことは考えられず、とにかく無事に子どもを育てたいとそればかりに。
子育てが大変だったときは、服を買いに行こうという気分にはなりませんでしたけれど、持っている服でおしゃれを楽しみたいというか、気分を上げるのを助けてもらっている部分はありましたね。
娘が幼稚園の頃はハットが流行っていたので、行事のときにかぶったり」

そんなおしゃれ上手ぶりは、きっと周りにも評判だったのでしょう。あるとき、子育て仲間からスタイリストを探している人がいる、と声がかかります。
千葉さん:
「娘が小学校高学年の頃です。
ブランクも長いし、私はプレスルームに足を運んで服を借りて、とアナログでスタイリングをしていたんですが、今度はデジタル上のスタイリング。自分にできるかな、と迷いましたが、やってみることに」
「今の気分」は小物で香らせて

千葉さん:
「最初は、スタイリングの仕方なんて忘れちゃったかも、と思っていたんですけれど、案外大丈夫だったのは、ベーシックなアイテムでのスタイリングで、仕事にもプライベートにも着回しの効く提案を考えることだったから。
好感度の高い知的なムードを目指したアナウンサーのスタイリングでの経験が生かせたんですよね。
トレンドを発信するようなスタイリングではなかったので。とはいえ、時代の空気感みたいなものはちょっと香らせつつ、自分の感性のままに作り込んでいました」

ここまでお話を伺い、ハッとしました。
シンプルでベーシックなのに、千葉さんがオシャレに見えるのは、ちゃんと “今” が感じられるからなのでは? それって、どうしたらいいのでしょうか。
千葉さん:
「服全体をがらっと毎年チェンジする必要はないかな、と思っています。ただ小物はそのときトレンドになっているものを取り入れると、鮮度の高い着こなしになる気がします」
▲最近のお気に入りは、レザーのバングル。「ネックレスやイヤリングはあまりつけず、バングルを重ね付けするのが好きです」
そもそもトレンドって、どうやったらわかるのでしょう?
千葉さん:
「昔はわかりやすかったんですよね。何か流行ると、みんな同じ格好をしていましたから。
最近はいろいろなものが混沌としていて、トレンドの幅が広いんです。
でも、不思議なんですけれど、流れみたいなものがある。ですから時間があるときに、雑誌とかでコレクションを見たり、ウィンドウショッピングをしたりすると、あ、このスタイル、このアイテム、このカラー、あっちでもこっちでも見るな、というのを感じられると思います。
去年と同じ服を着ていても、バッグや靴、スニーカーだけ今流行っているものを取り入れてみるなどすると、ちょっと変わっておもしろくなります。
定番のニットやストールも、素材感が違うものを取り入れてみたり」

千葉さん:
「たとえばこの〈ジル サンダー〉のストール、買ったのはもう5年くらい前で、当時はこういうボリューミーでふわふわなものって斬新だったんです。すぐに流行らなくなるかなと思いましたが、最近いろいろなブランドから出ていますね。
こういうふうにトレンドを取り入れてみると、そのなかで意外と長く使えるものがあって、それが自分にとっての新しい定番になっていくのも、おしゃれのおもしろさだと思います」
お気に入りを大事に。トレンドはほどよく。
▲メガネもたまに新調すると、フレッシュに。
トレンドをほんの少し取り入れることで、オーソドックスな組み合わせに新鮮味が加わることがわかりました。
千葉さん:
「次から次へと新しいデザインを着ないと取り残されてしまうような風潮は、よくないんじゃないかな、と思っていて。消費も必要ですが、行きすぎた消費社会が続くことにも懸念を抱きます。
ある程度年齢を重ねたら、服もすでにたくさん持っていますし、お気に入りを長く着たいという気持ちもある。
ですから、新しいものを取り入れるバランスと、ちょっとしたことで楽しむという姿勢が大切かな、と思います」

請われてスタイリスト業をリスタートした千葉さん。ブランディングにもチームで携わり、仕事は充実していたといいます。
7年経ち、役目を果たせたように感じたことと、ワーク&ライフのバランスも考え、2024年末に独立しました。
続く後編では、色で楽しむ着こなしのヒントやシルエットの大切さ、マンネリにならずに新鮮な装いを楽しむコツなどを伺います。
(つづく)
【写真】鍵岡龍門
もくじ
第1話(2月24日)
ベーシックな服だけどおしゃれ。千葉和子さんのセンスのひみつを伺いました。
第2話(2月25日)
シンプルな服を素敵に着こなしたい。自分のスタイルは、どう見つける?
千葉和子
「ISSEY MIYAKE(イッセイ ミヤケ)」に勤務後、アナウンサーを中心としたテレビキャストのスタイリングを手がけたのち、専業主婦に。40代後半から、大人の女性のためのブランド「SOEJU(ソージュ)」立ち上げに参画。2024年12月よりフリーランスとして活動を開始。
Instagram: @kazuu3678
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