【人生のまんなか】第2話:迷いながら、寄り道した40代

編集スタッフ 寿山

40代は、どんな景色が見えるのだろう?

そんな好奇心を膨らませていたとき、『自分に還る』という、50代の方の暮らしと仕事の話をまとめたインタビュー本に出合いました。

魅力的な6人の女性たちが、人生のまんなかを折り返して、どんな葛藤を抱えていて、どんな風に今の自分と向き合っているか。本のはしばしからメッセージを感じて、著者である石川理恵(いしかわ りえ)さんにお話を伺っています。石川さんは、どんな景色を見ているのでしょう。

1話目では、憧れの仕事に就くまでの奮闘や、走り続けた30代のお話を。つづく2話目では、40歳で立ち止まって、寄り道した話をお届けします。

1話目はこちら

 

40歳で大学に編入。もう一度学ぼうと思ったきっかけ

東日本大震災、そして40歳という節目をきっかけに「自分に何ができるだろう?」と立ち止まった石川さん。前々から興味のあった心理学を大学で学ぶことを決意します。

石川さん:
「ずっと興味はあったけれど、今更もう勉強なんか出来ないと思い込んでいました。ところが友人から『60歳になったとき、40歳なんて全然若いと思うかもしれないよ』と言われたんです。

その友人は絵を描くことと料理を生業にしていたのですが、手足などがだんだん動かなくなる病と闘っていて。体の不自由を抱えながらも絵を描き続ける姿をそばで見ていたので、その言葉がズドンと胸に響いたんです。それで通信制の大学に編入して、心理学の勉強をはじめました」

 

話せる場所があるのは、大切なこと

石川さんが心理学に興味を持ったのは、障害のある三男の子育て中のこと。同じような境遇にある親との交流がきっかけでした。

石川さん:
「知り合いに誘われて、同じ障害を持つ子どもの親が集まるピアカウンセリング(※)に参加しました。医師がいて、全員が1つのテーマに対して、感じたことを話す会です。

それぞれ自由に話しているだけなのですが、すごく相互作用があると感じました。人の気持ちを聞けば聞くほど自分がわかる。初めての経験で。

そのとき、話せる場所があるってすごく大事だと思ったんです。だから心理学を勉強して、私もそういう場をいつか作りたいと思いました」

※同じ背景を持つ人同士が対等な立場で話を聞きあうこと

 

悩んだときは、自分を俯瞰してみる

心理学の他にも、興味を持った授業が社会学の講義だったそう。

石川さん:
「私は夫の実家の花屋を手伝いながら、編集の仕事もしていたのですが、義父から『仕事をやめてくれないか』と相談されたことがあったんです。どうしたらいいんだろう?と苦しんだりもしたのですが、社会学を学んでみたら、義父が生まれた当時は、今と憲法も違っていたことを改めて思い出しました。

家のなかの物事は家長が決めるという家制度があったことなども含め、社会的な背景を学ぶことで、その時代ごとに常識や価値観があって、お互いの『当たり前』が食い違っていても仕方ないと、客観的に捉えることが出来るようになりました」

石川さん:
「どこかでずっと頭から消えなかったのが、私がフルタイムで花屋の嫁として働いていたら、義父も満足して、夫も苦労しなかったかもしれない。ああ、夫に悪いな、花屋に悪いなという思い。

一方で、子どもが病気で仕事が遅れるときは、仕事場に悪いとも思う。家庭では、苦手な家事に直面すると、私がもっと家庭的な女性だったらと、今度は家族に悪いと感じる。もうどこにも頭が上がらなくて自分を責めてきたけれど、社会学を学んで、思い込みや価値観の刷り込み、呪縛のようなものにも気付くことができて、気持ちがラクになりました」

そうして実体験を重ねながら学んだことで、新たな視点が増えた石川さん。感情に引っ張られることはままあるけれど、知ることで、人生を少し俯瞰できるようになったといいます。

 

仕事で認められなくても、幸せになれる方法があると気づいた

40歳で立ち止まり、大学に通い始めた石川さん。卒業まで編集業はセーブして、生計を建てるためのアルバイトを始めます。

石川さん:
「連載を1本だけ続けながら、派遣で週4日働きました。フリーランスの時は、締め切り前に徹夜するのが当たり前だったから、時間通りに仕事が終わるというのも新鮮で。

夜の時間に余裕ができたので、子どもが塾の日だけ、夫と近所の居酒屋に行くという楽しみもできて、それだけで満たされました。一日が平和に終わるのって、なんて心地いいのだろうかと。

ずっと好きな仕事で認められたいという気持ちがあったけれど、仕事で認められなくても、私は幸せになれるんだって。もしかしたら、職業がライターじゃなくても、幸せになれるかもって思えたことが大きかったです」

 

楽しく働きつづけるため、必要に感じたこと

一方、石川さんの派遣先はベンチャー企業で、業務の効率化を徹底している職場でした。同僚には20代が多く「普通ならこう」と決めつけるのではなく「もっとこうしたら、より良くなるかも」と、新しい仕組みを生み出す環境に身をおいて、たくさんの刺激を受けとっていたそう。

石川さん:
「経験は役に立つけれど、邪魔をすることもあるんだなって気がつきました。『こうするのが普通』という思い込みや、これまでの成功体験が足を引っ張るというか。新しいアイデアがうまくいくかどうかなんて、やってみないとわからないものだなあと。

40代でもフレッシュな仕事をし続けるためには、過去の経験に捉われすぎず、新しいアイデアを試すことがすごく大事だって、派遣の仕事を通してしみじみと実感したんです」

大学の勉強をして、派遣の仕事をしながらも、時間に追われない暮らしを送れたことは、すごくいい経験になったそう。もう前の生活には戻りたくないと感じるようになっていたといいます。

40代になってから、ようやくやりたいジャンルの仕事ばかりを任せられるようになっていたのに、この先の迷いが消えない……変な状態だったと石川さんは振り返ります。

(つづく)

 

【写真】佐々木里菜

 

もくじ

 

石川理恵

1970年東京都生まれ。ライター・編集者。雑誌や書籍でインテリア、子育て、家庭菜園などライフスタイルにまつわる記事、インタビューを手掛ける。近著に『自分に還る』人の気持ちが最大の関心ごと。生まれつき障害のあった三男が他界したことをきっかけに、通信制の大学で心理学を学んだ。現在、心の本屋をオープンすべく準備中。http://hiyocomame.jp

 

 

 


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