【伸びしろのあるふたり】後編:「まだまだ私、大丈夫みたい」と思えたら、世界がとっても広がった(金 × 木下)
ライター 長谷川賢人
ふだんはせわしなく、仕事と向き合うクラシコムのスタッフたち。ゆっくり、じっくりと、お互いのこれまでを振り返って話す時間は……実はそれほど多くありません。
でも、あらためて話してみると、人となりがもっとわかったり、新鮮な発見が得られたりするもの。そこで、スタッフ同士でインタビュー(というより、おしゃべり?)してみる機会を持ってみることにしました。
今回は、クラシコムの「人と組織にまつわること」を様々に担う「人事企画室」の金と、コスメの商品開発やアパレル・雑貨の仕入れに携わる「MDグループ」の木下が登場。
それまでの経験を踏まえて、40代でクラシコムへ転職してきた二人。クラシコム入社後には培ってきた「自分のやり方」を変えたり、書き直したりする機会も多くあったといいます。ただ、その過程で、「自分にはもっと可能性があったんだ!」とも気づけたのだとか。
そんな “伸びしろのあるふたり” ですが、クラシコムで働いていくなかで、あらためて自身に「変わったこと、変わらないこと」もあるのでしょうか?
後編は金が主に聞き手となって、木下に色々と質問してみました。
ボールを「転がし始めること」を楽しめるタイプ
金:
当店の舞台裏をお届けするコラムで、以前は「隠れ店長室」と呼ばれるくらいに何でも取り組んできた木下さん、最近はどんな仕事を?
木下:
店長の佐藤さんのスケジュール管理は続けていますが、主な仕事はオリジナルコスメの開発です。担当者が産育休に入ることになって、初めは「代打」でしたが、そのまま引き受けることに。もう4年目になります。
あとは、2023年6月にMDチームになって、仕入れも担当しています。初めてアパレルの展示会へ行きましたし、人生でお洋服を仕入れることがあるなんて(笑)。びっくりしながら、新しいチームで、新しい仕事に取り組んでいます。
金:
入社直後はまさにコロナ禍で、クラシコムもフルリモート勤務になり、環境の整備やルールづくりも担ってくださっていましたよね。あとは、ドラマの制作現場にも。
木下:
前職までの経験も踏まえて、「できること」をやっていったら今がある、という感じです。私自身は、ある仕事を深く知って肩書きを持つ人、「プロフェッショナルになりたい願望」もあるんです。でも、性格なのか、いつもいろんなことをつまんでいて。
▲左:スタッフ木下、右:スタッフ金
金:
木下さんからは、いつもプロフェッショナルな雰囲気を感じますよ(笑)。
木下:
たぶん、堂々としているだけです(笑)。
振り返ると、「誰かのサポートする」という業務が得意なのと、「物を作る」ということは、一貫してやってきていると思います。作るものが変わっても、過程が近しいものは勘所が働くことがありました。
「新しく立ち上げる」というのもよくやります。経験のない中でボールが回ってきて、ひとまずはこのボールを「そろそろと」転がしてみる。それを楽しんでやれるタイプなのかもしれません。オリジナルコスメの開発も全く経験はなかったけれど、自分なりの「コスメって何だろう?」を考えながら、面白いものにしていこうと思えたんでしょうね。
正確に説明できなくてもいい。「違和感」は伝えて大丈夫
金:
そう聞くと、クラシコムでも過去の経験を生かせている印象ですが、仕事で葛藤することもありました?
木下:
葛藤、ありましたよ。「このコスメが何本も売れてヒットしたね=がんばったね」とはならないので、貢献できたのか不安になることはありました。
旗振り役がいたとしても、うまくいって「その人が偉い」ともしません。商品が発売するまでには、ストア編集チームがページを作ったり、メディア編集チームがコンテンツでバックアップしてくれたり、いろんな人が関わりますからね。
金:
関わる全員が同じゴールへ向かって動いていき、結果として商品がお客さまに喜んでいただけるように感じます。
木下:
そうそう。だからこそ、ミスをした時に誰も責めない。みんなで考えたことだから、「悪かったことがあれば検証しよう」という土壌があるのは安心感につながっていて、私にとっては新鮮な感覚で働けています。ただ、それを体感できるまでは悩ましかったです。
金:
何か印象的な出来事があったんですか?
木下:
ある時、コンテンツで公開する予定のビジュアルが、自分としては少し違和感があったんです。でも、制作も進んでいたしうまく言い出せず、良いですね!と伝えてしまって。結局は直前になって、佐藤さんに「すみません、実は不安を抱えていまして……」と打ち明けたところ、それならばと調整することになりました。より良いページができましたが、みんなには迷惑をかけてしまいました。
この一件の振り返りで、私が「意見するのを遠慮しました」と話すと、「もっと信頼していいんだよ。正しくなくても、うまく言えなくてもいいから、『私はここが自分のイメージと違う』とだけ伝えてね。そこからみんなで一緒に考えるから」と言われて。それって衝撃だったんですよ。これまでは「意見を言う時は、予想できる結果を踏まえて理路整然と、端的に言いなさい」と教えられてきましたから。
金:
その感じ、すごくわかります。でも、クラシコムでは違和感くらいでOKですよ、と。
木下:
自分が正確に説明できない限りは「個人的な感想」に留まるから、たとえば「変えることでコストがこれくらい下がる」といった数値で表せない限りは言ってはいけない、と身に染み付いていました。クラシコムは、個人の意見をすり合わせることに、もっと重きが置かれているんですよね。
ただ、それゆえに葛藤もあって。初めの頃はキャッチボールができず、相手と感覚を擦り合わせるのに時間がかかりました。たとえば、「赤」を選ぶ時に、相手が思う「赤」を、私は「真紅」だと捉えているかもしれません。感覚の擦り合わせができていないと、感性的な意見を伝えても、お互いに迷路に入ってしまうんです。でも、クラシコムではチームのみんなを信じて、意見の手前にあるモヤモヤしたところから伝えていかないといけないと考え直しました。
金:
どうしてそう思えたんですか?
木下:
クリアするには「信頼の貯蓄」が必要なんだと思ったからです。みんなと同じ感覚が持てたらしっかり表すとか、異なる意見を出してみたらより良く進んだとか、そういったことを繰り返して、やっとみんなとの間に信頼が貯まっていく。キャッチボールもスムーズになり、もっと自分らしく発言できるようになっていきました。
金:
「信頼の貯蓄」か……。確かにみんなも新しい分野で試行錯誤、木下さんも初めてづくしで悩ましそうです。
弱みを見せられるのも、「健やかさ」の一つだと
金:
でも、意見の手前にあるモヤモヤって、伝えるのがちょっと勇気がいりませんか?
木下:
クラシコムに入社して変わった部分の一つに、自分の弱いところや、だめだと思っていることに向き合えて、どこか許せるようにもなったことがあります。これまでは「健やかさ」って、ずっと安定して強いことだと思って生きてきたような節があって。
金:
わかります。クラシコムのメンバーは、自分が葛藤していたり、コンディションが悪かったりしたときの自己開示が上手なんですよね。私も入社してすぐは驚きました。弱みを見せるのは「頼りないと思われる行動なんじゃないか」と考えていたけれど、みんなを見ていると、自分もすごく頼れます。
木下:
そうそう。だから私も、これまでの「結論を先に述べるべき」という考えから、もう少し手前の感想やまとまりのない意見から、ちゃんと話すように切り替えました。みんなが言葉と感情にまつわる「動機」や「意味」を伝えるのが上手だから、私もそれを含めて開示していこうと。
ただ、それは培ってきたコミュニケーションの方法が全く意味をなさないわけでもありません。今は、自分なりの「物事を早く転がせる進め方」と「みんなから納得してもらえる伝え方」のハイブリッドを目指して、心地良いやり方に挑戦しているところです。
金:
私が考えた「アンラーン」とも通じているところがありそう。過去の自分も未来にちゃんとつながりますよね。
木下:
その方が、ちゃんと自分も変われるし、また新しいものを身につけられるという発見があったんですよ。やっぱり、年齢も40歳を過ぎてくると、だんだん価値観が凝り固まってくるし、「もう変われないんじゃないか」という不安も出てくるじゃないですか。
それでも、クラシコムで自分より年下のメンバーに囲まれながら新しいことにチャレンジしたら、新たな感覚も掴めるし、理解もできる。みんなが受け入れてくれているのは大きいですが、「まだまだ私、大丈夫みたい」と思えた時に、世界がとっても広がった気がして、安心しました。
ミーハーなんだ、と思えたら全てが腑に落ちました
金:
木下さんが、これから先に「やりたいこと」はありますか?
木下:
なるだけ健やかにいたいです。あとは日々、ご機嫌でありたい。「機嫌よくある」という価値はクラシコムに来てから、よく身に染みました。
金:
事業も組織も健やかなことが、お客さまへのより良いサービスに繋がりますもんね。
木下 :
仕事としては「求められれば何でも!」というのは変わらないですね。あるとき、MDチームのメンバーに「木下さんってミーハーですよね」って言われたんです(笑)。私自身、その考えがまったく頭になかったから、言葉を返せないくらいに新鮮で。
ところが、「私はミーハーだ」と思った瞬間に、実は全てが腑に落ちたんですよ。ミーハー心があるからいろんなことにトライできるんだなって。私も未だに成長できるという嬉しさがあるし、学ぶこともいっぱい。本当に、人間修行ですね。
【写真】川村恵理
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