【おしゃれのつくり方】滝口和代さん〈前編〉今日の主役は何にする? コーデを楽しむ「色合わせと重ね着のコツ」
編集スタッフ 岡本
「今日はなにを着よう?」と考えながらクローゼットの前に立つと、その日の天気や予定が瞬時に頭を巡ります。
自転車に乗るからスカートは避けよう、寒そうだからブラウスよりニットにしておこう。
いつからから「好き」や「着たい」よりも、今日1日をそつなく乗り切るための洋服選びが日常になっていました。もちろん快適に過ごすために大事な視点だけれど、以前はもう少しワクワクした気持ちを持ち合わせていたような気がします。
自分にぴったりな着こなしのヒントをもらうために、おしゃれな人のマイスタンダードを聞いてみたい。そんなふうに思って、ある人にお話をお聞きしました。
ブランド「fofofofa」や「nest Robe」など長年アパレル業界に携わる滝口和代さんは、自身のSNSでもコンスタントにコーディネートをアップしています。
個人的にも大好きな滝口さんの着こなしは、見ているだけで元気をもらえる色合わせや絶妙なバランスの重ね着など、ファッションってこんなに楽しい!と思い出させてくれる存在です。
前編では、コーディネートを組み立てるときに大切にしている滝口さんのおしゃれの基準をご紹介します。
マイルール 01
「今日着たいメインアイテムを決める」
滝口さん:
「これ着たいな、今の気分に合うなと感じられるアイテムを選ぶところからコーディネートを考えています。
例えばオーバーオールは長年愛用しているものがいくつもある、特にお気に入りのアイテム。私は背が高い方なので、ちょうどいい丈のパンツを見つけるのが難しいなとよく感じていて。
なので肩のベルトで調整がきくオーバーオールは手に取りやすいんです。
主役アイテムが決まったら、色や丈のバランス、カジュアル度合いなどを見ながら、合わせるものを決めていくのがお馴染みのステップですね」
カジュアルに着るなら……
滝口さん:
「このオーバーオールは、昔ながらのワークウェアとしての良さを持っているデザインなので、フリルブラウスやストラップシューズなど女性らしさのあるアイテムを合わせてカジュアルになりすぎないようにバランスをとりました。
ロゴTシャツにフリルブラウスと、どれも存在感のあるアイテムばかり。結構主張がつよいので、ごちゃつかないように青系で揃えています。
こういったゆるっとしたシルエットのボトムスを着るときは、コンパクトな羽織りを合わせることが多いです」
▲ロゴTの文字も青色。主張がつよいアイテム同士でも、色を絞ることでチグハグな印象になりにくいそう。
おめかしモードなら……
▲ジャケット(Toss!) / サロペット(fofofofa)
滝口さん:
「オーバーオールを主役に、おめかし気分な日はこんなコーディネートがいいですね。
カジュアルコーデでは青×白をベースにしていたので、今回は黒×白のモノトーンにしてみました。
水玉とボーダーで違う柄を合わせているけど、なんとなく統一感があるのはモノトーンのおかげだと思います。
洋服がかっちりめなので、足元はスニーカーであえてカジュアルダウンさせて、肩に力が入りすぎないように」
マイルール 02
「色のトーンを揃えると、統一感UP」
滝口さん:
「流行に左右されないベーシックカラーも好きですが、カラフルなアイテムも同じくらい大好き!
差し色としてワンポイント加えるときもあれば、逆に色ものアイテムで揃えるときもあります。
そんなときは色のトーンを揃えてあげると統一感が出ますよ。トーンと言っても、淡い色合いのペールトーン、鮮やかなビビッドトーン、落ち着いたグレイッシュトーンなど、種類はさまざまです。原色などの強い色って合うの?と思うかもしれないけれど、ビビッドトーン同士の色合わせならきっと合うはず。きっと虹みたいに目立つファッションになると思います。
色合わせコーディネートの第一歩としては、まとまった雰囲気が出やすい淡いトーンを選ぶのがおすすめです」
滝口さん:
「パープル、ブルー、ピンク、イエローと色数は多いけれど、ペールトーンから外れたアイテムがないからそれぞれが溶け合ってやさしい雰囲気になった気がします。
全身を色ものアイテムで合わせるのは難しい……と感じる場合は、デニムなど自分が普段から着慣れているコーディネートをベースに、インナーや靴だけを色ものに変えてみるなど、小さい範囲から試すとハードルが下がりますよ。
意外にシチュエーションも大事。
家の白い壁の前で見て『カラフルすぎ?』と思っても、街中に行くと馴染んで自然な着こなしに見えることもあるんです」
滝口さん:
「イヤリングはビビッドな赤を選んで。これはペールトーンではないけれど、顔周りにワンポイント加えたいなと思ってつけました。
統一したトーンから外れたアイテムを身につけるときは、アクセサリーなど小ぶりなものを選ぶと主張しすぎないのでおすすめです」
マイルール 03
「重ね着は2色まで」
滝口さん:
「この季節ならではの楽しみなので、普段から重ね着コーディネートはよくしています。
基本的に、洋服は2色くらいに抑えて靴などの小物でワンポイント添えることが多いですね。
首元やサイドにスリットが入っていると重ね着しやすいので、そういったデザインを見つけると自然と手にとっている気がします」
▲ニット / ブラウス(nestRobe)
滝口さん:
「襟元や袖口、裾などからちらっと見せる重ね着は、合わせるアイテム同士の丈が重要。なので、同じブランドで組み合わせると丈がちょうどいいことが多く、簡単ですよ。
フリルがついていたり柄物だったり、ハードルの高いアイテムも重ね着のインナーとして着ればさりげなく取り入れられます。
重ね着って難しい〜とよく言われるのですが、色柄物を取り入れやすいから、実は新しいおしゃれを試すチャンス。
秋冬の特権なので、ぜひ楽しんでみたいコーディネートです」
新しいコーディネートに変わるたび、好きなアイテムや着こなしのポイントを楽しそうに話してくれる滝口さん。
私も頭の中でクローゼットを開き、真似っこできそうなコーディネートを想像しているうち、ファッションに対するワクワクした気持ちを思い出してきました。
***
洋服を着たあとの滝口さんを見ていると、鏡の前で全身を確認しながらあちこち手直ししています。
裾や袖の具合がちょっと変わったり、合わせる小物を入れ替えたり、この時間にもおしゃれの秘密が詰まっているような……。
そこで続く後編では、着こなしが変わる微調整のコツについてお届けします。
【写真】滝沢育絵
もくじ
滝口和代
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