【はたらきかたシリーズ】古道具店「LET ‘EM IN」店主・原尊之さん 第3話:その人「らしさ」は、きっと誰もが手にできる。

編集スタッフ 長谷川

151103letemin_work_19聞き手・文 スタッフ長谷川、写真 廣田達也

この連載では、東京・国立にある古道具店「LET ‘EM IN(レットエムイン)」の店主、原尊之(はらたかゆき)さんの働き方を伺っています。

第1話ではインテリアショップ勤務と開店準備に至るまでを、第2話では古物市場で得た気づきや物の見方をお聞きしました。最終話となる今回は「空間としてのお店の良さ」から伺っていきます。



 

お店だからこそ、物の魅力が伝わることもある。

LET ‘EM INをオープンするまでの4年間、原さんは主にネットオークションで商いをしていました。ミュージシャンに強く憧れを抱いていた原さんが「お店というステージ」を持ちたいと考えたことは第1話で振り返りましたが、その想い以外にも、お店ならではの魅力も感じていたようです。

原尊之さん:
「オークションで売れるものって、わかりやすいんです。たとえば、有名ブランドものとか。僕が扱う名もないちょっとしたものって、なかなか売りにくくて。

今もオークションには出品していますけれど、お店で売れるものとは明らかな違いがあります。実際の場を作って、そこに並べることで、やっと魅力が伝わるものもあるっていうのは思っていましたね。お店を出すことでそれがより伝わるとか、集まった時にこそ魅力を発揮するとか。セレクトの妙、とでも言いますか」

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第2話でお聞きした、他の業者が見向きもしないものを原さんが競り落とした話を思い出すと、納得感のある考えです。さらに原さんはお店を自分が良いと感じる空間としてまとめようともしています。

原尊之さん:
「これは店を開いてより意識するようになったのですが、僕がインテリアの雑誌とかを見ていて、今でもグッとくるのは “いろんな要素がミックスしている空間” なんです。置いてあるアイテムの幅がすごく広いというか。

たとえば、モダンな家具の下にペルシャ絨毯が敷いてあり、上にはシャンデリア、壁には鹿の剥製までかかっているみたいな。要素が混ざって、その人にしか出せない空間がそこにあるというのを目にすると高揚感があるんです。

同じような提案をしたい時に、店という場がないとやりにくいと思うんですよね。ウェブでもある程度はできるのかもしれないですけれど……店で出す方がより表現しやすいかなと今は捉えています」

 

パーソナルな何かを体感したいから、人はお店を訪れる。

原さんは、実店舗のLET ‘EM IN、ネットショップとしてのLET ‘EM IN、そしてキッチン付きイベントスペースの「room103」と表現方法をいくつも手にしています。

おそらく原さんは、“何を成し遂げたいか”で方法を選んでいるのでしょう。ただ、すべてに通ずるのは「明確な想い」があることです。

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原尊之さん:
「今、人が店へ行くのは、やっている人の“パーソナルな何か”が体感したいからじゃないかなと感じています。そうでないと、ネットショップで買うのも、お店で買うのも関係がないですよね。

これからお店を開こうとするなら、人へ伝えたい何かしらの強い想い、“ベースや核になるもの”があると、お客さんも惹きつけられて来てくださるのではないかなと思います」

原さんにとってのベースは、第2話でお聞きしたLET ‘EM INの店名の由来などにも現れています。

僕も「なぜか気に入っているお店」を思い浮かべてみたら、あの店主の仕事ぶりと笑顔がいい、街の人に愛されているのが伝わるからと、パーソナルな良さに惹かれているところがいくつもありました。

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自然体で、人より上手にできる何かを考えてみる。

原尊之さん:
それに、何より自分が幸せに過ごすために、働いて生きているわけじゃないですか。僕は自分だけが楽しいのよりも、周りにいる人たちがみんな楽しそうなのを見ると、もっと楽しく感じられるところがあって。そのために自分は古道具屋として、正しくちゃんと70歳くらいまで、自分ができることはなんだろうと。

要は、自分はどういうスタンスで生きるのがいいのか。いちばん自然体で、そして人よりも上手にできて結果が残せることは何かを、必死に考え続けるんです。

だから僕は古道具店を続けているし、消極的な選択でもいいから降って来た話に乗っかるとか、開かれた感性を信じるとか、そういう結論に行きつきました。

自分を知って、自分の内面の言葉に、ちゃんと誠実に忠実に従っていった結果、いくつかの小さな転機が重なって、LET ‘EM INもまだ7年半ですけれど続いている。

でも、この僕の考えは、たぶん僕にしか当てはまらなくて、万人に共通する答えでは絶対ないと思っています。良し悪しの話ではありません。あくまでもその人のやり方にあった、バリエーションのうちのひとつということです」

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その人「らしさ」は、きっと誰もが手にできる。

さて、あらためて最初の質問を振り返ってみます。

原さん、どうすれば「らしさ」を持てるのですか。

答えは原さんの言葉たちに、はっきり表れていると思います。

自分の感情を言葉にして落としこむこと。感覚を錆びつかせないように広げ続けること。良い物も悪い物も取り入れること。自分の核になる強い思いを持つこと。そして、自分のやり方にあったバリエーションをつかみとること。

LET ‘EM INらしさは、原さん「らしさ」につながっているからこそ生まれ、感じられるものでした。

言い換えれば、自分の中から生まれた考え方や感性が「らしさ」につながり、その人ならではの魅力が生まれてくるのでしょう。当たり前といえば当たり前。でも、なぜか忘れて、自分の「外」に答えを求めてしまう。いつも答えは「内」にあるんですね。

それを正すためのレッスンを、僕は原さんの働き方から教わりました。

(おわり)




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