【BRAND NOTE・群言堂編】第3話:今いる自分の「場」を楽しむには?松場登美さんに店長佐藤が聞きました。

群言堂のポリシーでもある「根のある暮らし」を自ら表現する、石見銀山生活文化研究所の所長である松場登美さんにお話を伺いました。 登美さんが職場での人間関係や子育てにおいて意識してきた「やってみせ」の加減。「心地良い」「おいしい」と心の内の声に正直になる直感能力の大切さとは。また「群言堂」の世界観を東京近郊でも体験できる店舗として湘南T-SITEをご紹介します。

編集スタッフ 長谷川

160307_09_gungendo_bn_102写真 平本泰淳(「gungendo」湘南T-SITE店パートのみクラシコム)

 全3話でBRAND NOTE「群言堂」編をお届けしています。

島根県大田市大森町。人口は400人ほどのこの町から、アパレルブランド「群言堂」などを全国へ展開する「石見銀山生活文化研究所」を、私たちクラシコムスタッフ4名が訪ねました。

つくる洋服や商品はもちろん、仕事や人生観にまで影響を与えているのは、石見銀山生活文化研究所の所長である松場登美さんが考え、実践する「根のある暮らし」。

みなさんの生活を体験させていただき、その考えに触れる中から「私らしく、豊かに暮らすためのヒント」を探っています。

(この記事は、クライアント企業さまのご依頼で製作する「BRAND NOTE」という記事広告コンテンツです)



 

「根のある暮らし」の第一歩を、松場登美さんにお聞きします。

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第3話では、群言堂のポリシーでもある「根のある暮らし」をみずから表現する、石見銀山生活文化研究所の所長である松場登美さんにお話を伺いました。聞き手は店長佐藤が務めます。

著書の言葉たち、他郷阿部家でのひと時、第2話での「娘世代」社員へのインタビュー。さまざまなかたちで松場登美さんの声に感じ入ってきただけあり、店長佐藤もどこか緊張ぎみ。

▲群言堂本店で見て気に入った「根々」の水玉ワンピースを着させてもらいました。

それでも話を進めていくうちに空気もほぐれ、時に泣きそうなほど感動したり、時に大きな勇気をもらったり。

私たちがそれぞれの場所で、それぞれの生活で、「根のある暮らし」を実践するための第一歩を教わります。

 

登美さんが必ず「しかる」のはどんな時?

 

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昨晩は、Gungendo Laboratoryの岩田さん、根々の多田さん、MeDuの久保田さんと、うちのバイヤー松田を交えてお話させていただいて。何を聞いてたかというと、主に登美さんのお話を(笑)。

 

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あら、そうなの。みんな、しかられた記憶が多いのではないかしら。

 

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それが仕事のことよりも、暮らしの場面で大事なことを教わった、と。登美さんは若い世代の方たちをいつも観察されているんですか?

 

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私はみんなの「母」だと思っているんです。だから、母はしかるでしょ。「しかる」と「怒る」は違いますよね。

仕事の失敗や売り上げがよくないとかでしかったことは一度もないけれど、もったいないことをしたりとか、感謝を忘れたようなことをしたときは必ずしかります。

今、66歳になりましたけども、戦後の貧しい時代から物が豊かになり始め、バブルの崩壊も見ました。自分が生きてきた経験から、貧しかったけども美しく、ある意味での「豊かさ」があった幸せな時代を次の世代に残したいと思ってるんです。

預金通帳の額が増えたり、会社の売り上げが伸びたりしても、これからの時代どう変化するかわからないから何の安心もない。いくらかのお金は必要だろうけれど、それよりも心穏やかな美しい暮らしがあれば大丈夫って信じられる。

 

厳しいことを楽しむ、母の背中を見て育った。

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そう思えるようになった背景には、若いころに夫の大吉さんと一緒に、自分たちの暮らしと商売をつくる荒波を乗り越えてきた経験があってこそなんでしょうか?

 

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そうね。たとえば、貧乏のどん底だったときに、でも大吉はよく家に友人たちを招いていたの。子どものミルク代も事欠いてるのにどうしようかと思って、隣でお米を借りてきて、冷蔵庫にある物を切りきざんで炊き込みご飯にしたりとか。卵がひとつあるから、これで何ができるだろうとか。

なんとか工夫して食べてもらえると達成感があって、とにかく考えるのが楽しかったんです。「つらい」と思わずに、その状況を受け入れて楽しむのですね。やっぱり母の影響があると思います。

 

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いろんなご苦労をしながらせっせと働いてはいるけれども、それを嫌だと思っていない感じが、子供ながらに登美さんの目には映っていた。

 

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そうそう、うん。うちの三女が幼稚園のころに、当時の私は事業が大変だし、親の介護もあって……という時に「お母さんばかり楽しいことをしてずるい」って言ったんです。それがね、うれしかったんです。「お母さんが大変」って思われるより、ね。

 

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私の子供も5歳なんですが、ふだんは髪を振り乱しながら育児に仕事にといろんな責任を果たす日々の中で、「厳しいことを楽しむ」っていうフレーズはすごく励みになります。

 

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娘たちにもそうだけれど、あまり教育とかしつけとかをしたことはないんですね。さっきの三女が、まだ小学校入ってすぐだったはずだけれど、「子供は親の背を見て育つんだよ」って言ってきて(笑)

なんちゅうことを言う子だと思ったけど、そうなんだろうなと思いますよ。だから、私が母の姿を見て学んできたように、みんなにも私のしていることをちゃんと見てほしいなと。

 

人を育てるためには「やってみせ」の加減が大事。

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ちょっと全文を覚えていないんですけど、格言として、言って聞かせる前にやってみせ……みたいのがあるんですよね。登美さんがおっしゃっていることって近いなぁ、と。

 

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それ、山本五十六の言葉ね。私は自分の部屋にも、仕事部屋にも、他郷阿部家にもその言葉を貼っています。最後の3行目がいいんですよ。

「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、ほめてやらねば、人は動かじ。話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず」

素晴らしいでしょう。

 

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3行目、知りませんでした!

涙が出ます、これは本当に……仕事でのスタッフへの接し方もそうですし、子育てにも通ずるところがあって。登美さんは人と接するときに、これを長い時間、意識してこられたんですね。

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常に心掛けようと思っているけど、私はやっぱりまだまだ人間ができていないから、なかなかうまくいかないですね。「やってみせ」にしても加減がすごく難しい。

 

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やってみせ過ぎちゃいけないってことですか。

 

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そういうこと。本人が気付いてやるまで見守ることも必要でしょう。だから子どもを育てるにも幼稚園、小学校、中学校、高校、大学と、その段階によって私たちがやらなきゃいけないことも変わる。

社員も同じです。この子にはこの段階、この子にはこの段階って、ものすごく難しいですよ。

 

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私は今、「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、ほめてやらねば人は動かじ」まででも精一杯な感じです。まったくできてないかも(笑)

 

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まだ若いじゃない。今できていたら大変ですよ、人生終わっちゃいますよ(笑)。私は90歳まで一応生きる宣言をしましたけど、その命日までにこの3行目ができればいいな、と思ってますけどね。

 

根のある暮らしを支える、3つの人間らしさ。

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その「やってみせ」のひとつが「根のある暮らし」なんですね。登美さんご自身は、どうやって体現しようと心掛けていらっしゃるんですか。

 

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言葉にするなら、宗教と、哲学と、芸術です。この3つはやっぱり人間にしか表現できない、人間独自の美しいものを求める部分として必要だと思うんですよ。

宗教と言うと最近は軽んじられがちだけど、私は感謝する気持ち、自然を見て感動する気持ちも、宗教心そのものだと思うんですね。誰かが亡くなっても他人事のようなことになってるけども、1つの命が生まれることも、その命が亡くなっていくことの大切さも宗教だと思うしね。

哲学って聞くとすごく難しく考えがちだけど、私が尊敬する内山節(うちやまたかし)さんが、とてもわかりやすくシンプルに哲学を説いていらっしゃいます。「哲学は学問として学ぶものではなくて、人間が美しく生きるためにある」。

芸術は、私は「美しさのモノサシ」という言葉をよく使うけども、「きれい」と「美しい」を使い分けています。人間の経済的な都合だけでつくられるものは、きれいかもしれないけれど美しくない。

この大森町には「美しい」風景や暮らしがあると私は思うんです。それはまさに芸術的な、創造的な暮らしです。

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だからこの宗教、哲学、芸術というものが、根っこになっていくと思うんですね。

とかく世間では、地上に芽が出たとか、花が咲いたとか、実がなったとか、そういうことしか目をやらないけど、養分を与えてそれを支えているのは根っこなんですよ。

だけど土の下だから、誰もそこに気が付かない。でも、それこそが大事なことかなと私は思います。

 

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私たちが「根のある暮らし」に近づくために、まず変えるべきことがあるとしたら、どこから手を付けるのがいいんでしょう?

 

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そんな大げさなことはないですよ。衣食住という暮らしの中で、お掃除するとか、食事を丁寧に作ってみるとか、お気に入りの服を着るとか、どれでもいい。

どこからかきっかけができると、何年かたって気が付いたら自分の世界ができていた、みたいになると思うんです。

そのためには、世の中の流行だとか情報に振り回されずに、「心地良い」とか「おいしい」って心の内の声に正直になることです。別に誰に学ばなくても、人間は本来、それを感じる能力をみんなが持っているはずですからね。

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「何をするか」よりは「なぜしたいか」を感じて、やり遂げることが大事なんだ!

 

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そう。私はとにかく行動して、しかもすぐやらないと気が済まないたちなんです。そうすると、答えが見えてきますよね。すぐには見えなくても、なんとなくぼんやりと見えたりとか。そうすると、次にすることがまた見えてくるでしょう?

そこで考えてばかりで、悶々としている人が多いと思うんです。だからまずは、なんでもやってみる。年を重ねないと見えてこない答えだってあるから、やっぱり年月はかかりますよ。

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今の若い人たちは考えすぎだし、出来すぎている。研修で群言堂へ来た子もいきなり「社会貢献したいです」なんて。その前にあなた自分の足で立ちなさいよって言いたいけれど、そういう子が多すぎるのよね。

頭でっかちになっていて、しかも知識も情報もいっぱい入るでしょう。それで結局、「自分」をなくしちゃうんだよね。もっとシンプルに、本能のままに動いたほうが、正直な自分になれるのかなと。人間はもっと野生化すべきだと思うの。

 

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野生化!

 

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昔、うちにもメタボな猫がいたけれど、真っ暗闇の中をだーっと走っても、ぶつかったことは一度もなかったから(笑)。野生化するとそういう直感能力が研ぎ澄まされていくんでしょうね。

それから、心の動くものを見つけて良い方向に持っていくためには、さっき言った宗教だとか、哲学だとか、芸術だとかの、人間がつくった「美しいものを求める部分」が必要だと思うんです。

 

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東京に戻っても、直感能力を磨いて、自分らしい「根っこ」のある暮らしをつくっていきたいなと励まされました。ありがとうございます。

 

東京近郊でも体験できます。「群言堂」の世界観。

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東京近郊にも群言堂本店の品揃えや世界観を体感できる場所があります。そのひとつが、今回お邪魔した「gungendo」湘南T-SITE店です。

印象的な土壁は、この店舗をオープンする時に、島根県から職人さんがやって来て仕上げたものだとか。ディスプレイ用の什器も島根県から来た古道具の数々が使われていました。

松場登美さんが大切にする、美しい暮らしや自然から生まれた洋服たちも豊富に並んでいます。

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器や台所道具、島根県産の食材などもあり、充実の見ごたえ。

「あっ、あのお塩!」となったのが、第1話でご紹介した塩むすびに使われていた「海士乃塩」でした。

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石見銀山生活文化研究所に勤めて5年目を迎える、店長の松本美紀さんにもお話を伺ってみました。

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旅から戻った私たちが真っ先に聞きたかったのは、松場登美さんの”想い”や”美しさのモノサシ”を、このお店でどのように表現しようとしているのか?ということ。

 

松本さん:
「この場所はパッと見たらお洋服屋さんかもしれないけれど、なによりお客様に『心地よさ』を体験して帰っていただきたいと思っているんです。だから、ありがちな『押しが強めの接客はしないように』とスタッフにも伝えています。

群言堂の洋服を手にとって見てくださるお客様には、洋服づくりの背景や想いみたいなものも、自然にお伝えできたらと思っています。ここで必ずお買い物をしなくても、気持ちが幸せになるような接客をしたいなぁ、と。

私もいつも群言堂の洋服を着ているんですけど、家にいる時も本当に気持ちいいんですよ。洋服に対するストレスがなくなると、生きること、暮らすことはきっと豊かになるはずと思えるようになりました。

そうそう、それから私、定年までこの会社に勤めたいともいつも思ってるんです。この職場をわたしの『根』にしたいんです」

 

答えてくれた松本さんの笑顔は、私たちが大森町で出会ったみなさんを思い起こす明るさに満ちていました。大森町と湘南、土地は変わっても、たしかに群言堂の根のつながりを感じました。

 

私たちが群言堂から教わったこと。

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今いる自分の「場」を楽しむ。

私たちなりに「根のある暮らし」を考えた時に浮かんできた言葉。それを確かめに島根県を訪れてみて、私たちはこの言葉に少しの自信を持てるようになりました。

楽しむために大切なのは、感謝や感動の気持ちを大切に、厳しさを楽しむために考えて動き、自分にとっての「美しさのモノサシ」を磨いていくこと。

暮らしを愛し、慈しみ、直感を研ぎ澄ませて生まれたものたちで、また誰かの暮らしを彩っていく。そのつながりが、群言堂という「場」に表れているのだと思います。

この連載をお届けしている頃には、石見銀山に植わるたくさんの梅の木も花開いているはずです。松場登美さんが「いちばん好き」という梅に包まれながら、今日も群言堂はものづくりを続けています。ちなみに、梅の花言葉は「忍耐」や「気品」なのだそうです。

 

群言堂のみなさんから見た、私たちの姿って?

今回のBRAND NOTEでは、石見銀山生活文化研究所とコラボレーションした企画も併せてお届けします。

第3話は群言堂のみなさんから見たクラシコムスタッフの様子なども語られた座談会。「そんなふうに見られていたんだなぁ」と、私たちも嬉しいやら、恥ずかしいやら……。

第2話でインタビューした女性社員と松場登美さんが、BRAND NOTEでご一緒した感想を交えた「振り返り座談会」。群言堂の「根のある暮らし」をより身近に感じるためのヒントが、会話のあちこちにも見えました。

以下のバナーより石見銀山生活文化研究所のサイトにて、ぜひご覧ください。

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