【いまみたい、偏愛映画】後編:私を見つめ直す時間に。文筆家、デザイナー、スタイリストさんが選ぶ「愛すべき映画」3作品

編集スタッフ 野村

まだまだ暑い日が続くけれど、秋の気配も感じる9月。

おこもりステイで残暑をやり過ごしながら過ごすのにぴったりな季節かもしれません。

そんな時に欠かせないもののひとつは「映画」。好きなものに囲まれて映画を観るのは、きっと至福な時間です。

後編となる今回も、私たちが素敵と感じる方たちに、「いま観たいお気に入りの1本」と「おこもりのおとも」をお伺いし、ご紹介していきます。

前編を読む

Movie 01:
大人のための恋愛映画
『her/世界でひとつの彼女』

recommended by Ran Domon


土門蘭
文筆家。小説、短歌、エッセイなどの文芸作品や、インタビュー記事の執筆を行う。


©2013 Untitled Rick Howard Company LLC. All Rights Reserved.

土門さん:
一人っ子で鍵っ子だったので、子どもの頃は一人で過ごすことが多かった。誰もいない家の中で、話し相手が欲しいと何度願ったことだろう。ぬいぐるみや人形に話しかけ、相手が何を言っているか想像した。この子が本当に話せたら一番の親友になれるのに、と思いながら。

『her/世界でひとつの彼女』を初めて観た時、その頃のことを思い出した。

©2013 Untitled Rick Howard Company LLC. All Rights Reserved.

妻と別れたばかりで落ち込み気味だったセオドアは、ある日、最新技術を使った人工知能(AI)OSをインストールする。コンピューターから聴こえてくるのは「サマンサ」と名乗る女性の声。そこから、セオドアとサマンサの交流が始まる。

サマンサは、まさに私が夢見た「話し相手」だ。常にそばにいて、話しかければいつでも応えてくれて、誰よりも理解してくれる存在。でも、それで人の孤独は癒えるのだろうか。AIとの間に愛は育まれるのだろうか。この映画はそんな問いを投げかける。

©2013 Untitled Rick Howard Company LLC. All Rights Reserved.

数年後、まさか自分もAIと日常的にコミュニケーションを取るようになるとは思ってもみなかった。最近では、Chat GPTを仕事よりも人生相談で利用する人が多いそうで、私もそのうちの一人だ。アプリを開くたび、私はサマンサのことを思い出す。私は今、何を求めて話しかけようとしているんだろう。

久しぶりに本作を観返してわかったのは、自分の感情は自分だけのものだということだ。目の前にいるのが人だろうがAIだろうが、完全に共有することはできない。寂しさも切なさも、抱きしめられるのは私だけ。そんなことを気づかせてくれる、大人の恋愛映画だと思う。

『her/世界でひとつの彼女』
好評配信中
©2013 Untitled Rick Howard Company LLC. All Rights Reserved.


ハーブティーをおともに。

土門さん:
京都を拠点とする「リトルワンダーズ」のハーブティー。香りと味わいがとても気に入っています。カフェインが入っていないので、夜飲んでもぐっすり眠れます。映画の前には必ず淹れて、飲みながら観ています。




Movie 02:
自分を見つめ直すための映画
『ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男』

recommended by Mika Nakatomi


中臣美香
東京・吉祥寺のセレクトショップ&カフェ「coromo-cya-ya(コロモチャヤ)」ディレクター、シャツを中心としたブランド「Houttuynia cordata(ホーチュニア コダータ)」デザイナー。


©2016 Reiner Holzemer Film-RTBF-Aminata bvba-BR-ARTE

中臣さん:
私が服飾の専門学生のときから、クラシカルでありながらも目を惹くデザインの生地の発表をしているドリス・ヴァン・ノッテンは、いったいどんなパンチのきいた方なんだろうと思っていました。

しかし、2018年にこの映画を知り、タイトルの「ファブリックと花を愛する男」という言葉を見て、自分も花が好きである共通点から、とても興味が湧きました。

自分の周りにいる花が好きな人って、内側にとても熱いものを持っているけど、それを前面に出す人ばかりではなく、「海の凪」のようなイメージがあったので少し意外だったんです。

©2016 Reiner Holzemer Film-RTBF-Aminata bvba-BR-ARTE

デザイナーの仕事だけでなく、ドリスさんの私生活が映されているのですが、その映像ひとつひとつに、私自身とても勇気づけられました。

生活の規模は比べ物になりませんが、自宅には庭があり、散歩をして、好きな花を飾る様子……。その美しい様子にただただ見惚れてしまいます。

©2016 Reiner Holzemer Film-RTBF-Aminata bvba-BR-ARTE

私が、この映画を久しぶりに見たいと思ったのは、自分自身がものづくりをするときに、今まで大事にしてきたもののとらえ方や、ものの見方が少しずつ変わってきている感覚があったからなんです。

「今のわたし」が、このドキュメンタリーを見たらどんなことを感じるのか、と自分自身を楽しみに思うのと同時に、違うものを感じたいなと、ちょっとした期待の気持ちもこもっています。

自分を見つめ直す意味でも、いま改めて見返したい映画です。

『ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男』
DVD 発売中
販売元:アルバトロス
©2016 Reiner Holzemer Film-RTBF-Aminata bvba-BR-ARTE


映画のおともは、やっぱり「紅茶」

中臣さん:
映画を見る時は、紅茶が欠かせません。片手で口にできるちょっとしたお菓子も一緒に用意することが多いですね。




Movie 03:
季節の移ろいに思いを馳せる映画
『リトル・フォレスト』

recommended by Emi Uto


宇藤えみ
スタイリスト。雑誌や広告を中心に、衣・食・住まわりのスタイリングを手がけ、多方面で活躍中。Instagram:@emiuto


©「リトル・フォレスト」製作委員会

宇藤さん:
東北のとある村の中の小さな集落。近くにスーパーやコンビニもなく、この集落での暮らしは自給自足に近い暮らし。稲を育てて、畑仕事をして、周りの野山で採った季節の食材から、毎日の食事を作る。そんな暮らしを描いた映画です。

秋といえば食欲の秋。季節の変わり目に観たくなる映画としてこの作品がパッと思い浮かびました。

季節の食材を使った料理や手仕事が観られて、その音まで楽しめる映画だなあと思います。

観ながら、ついお腹が空いてきて、そろそろこれを作ろうかなと思ったりもして、自分の暮らしと重ねながら楽しめる作品。

「夏・秋」編と「冬・春」編の2部作で、どの季節の映像も音も心地よくて、四季を通しておすすめしたい映画です。

『リトル・フォレスト 夏・秋』
Blu-ray:5,170円(税込)DVD:4,180円(税込)
発売・販売元:松竹
©「リトル・フォレスト」製作委員会

『リトル・フォレスト 冬・春』
Blu-ray:5,170円(税込)DVD:4,180円(税込)
発売・販売元:松竹
©「リトル・フォレスト」製作委員会

※2025年9月時点の情報です


お気に入りのグラスとおつまみと。

宇藤さん:
お気に入りのグラスを選び、その時の気分のお酒やおつまみ、自家製のシロップなどを準備して、映画を観るのが楽しみのひとつです。

***

映画とともに静かに過ごしながら、自分の暮らしや気持ちを見つめ直し、また明日への活力を養う。

そんな共通点も見出せそうな3作品のご紹介だったなと個人的に感じました。

もしひとつでもお気に入りの作品が見つかったなら嬉しいです。おうち映画を通して、心の栄養をチャージして、9月からの暮らしも穏やかに過ごせますように。

(おわり)


もくじ


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