【繕う夜】A3サイズの範囲で楽しむ。明日の自分のためのナイトルーティン

【繕う夜】A3サイズの範囲で楽しむ。明日の自分のためのナイトルーティン

編集スタッフ 岡本

さあお楽しみの時間がやってきた。夜22時、やるべきことを終えて家族が寝た後にキッチンに立つと、そんな気持ちになるときがあります。

とっておきの紅茶を淹れてみようか、朝食用にフレンチトーストを仕込んでおこうか、久々に一杯飲んでしまおうか。

時間の制約もなく一人気ままに過ごせる自由さが嬉しくて、夜のキッチンを満喫したくなるのです。

当店の動画コンテンツ『夜な夜なキッチン』は、夕食を終えたころから就寝までの4つの習慣をお届けしている番組です。

たっぷり自分を労ったり、明日のためにいくつかの準備をしたり。これまで21名の方の夜をのぞかせていただき、朝の習慣と同様、今日をどう終えるかというところにもらしさが表れることを感じています。


そんな『夜な夜なキッチン』からお一人をご紹介。テキスタイルデザイナーの野口光(のぐちひかる)さんは、息子さんとの都内二人暮らしです。

野口さんのある日の夜を一緒に過ごしたら、家族や物との付き合い方など、夜の自由さも相まっていろいろな寄り道をしながらお話が広がっていきました。


得意なことは、A3の範囲くらい

夕食を終えたら二人並んで、まずは食器の片付けから。野口さんが洗ったら、息子さんが拭くという役割分担ができているようです。

その流れで明日のお弁当の準備に取り掛かります。

野口さん:
「最近になってよく感じるのは、私にできることってA3の範囲くらいだなということ。

立体とか空間、すごく広い範囲をデザインするのは苦手なんだけれど、目の前の小さな世界を考えるのは好きなんです。

お弁当箱はA5サイズくらいですからお弁当作りは、得意な方。これくらいの四角いものに細かい要素を詰めていく作業は私には向いてるなと思いますね」

自分の得意分野をサイズで表現する野口さんの言葉にチャーミングさが垣間見えます。こんなふうに物事を捉えてみたら、日々当たり前に目にしていることも少し違った角度から見ることができそうです。


お茶の時間とダーニング

野口さん:
「夜の制作のお供にはなるべくノンカフェインのお茶を淹れるようにしています。よく飲むのは黄色いパッケージのルイボスティー。

これは南アフリカで暮らす娘がお土産で持ってきてくれたものです」

2004年から14年ほど南アフリカで暮らしていた野口さん一家。

当時小さかった子どもたちにとっては英語が母国語のため、英語を話す子どもたちに日本語で返すという会話が今も続いているのだとか。

武蔵野美術大学を卒業後、イギリスにわたり、テキスタイルデザインを学んだ野口さん。ライフワークであるダーニングを始めたのは、子どもたちの宿題に付き合う時間がきっかけでした。

野口さん:
「宿題をしているそばにはいるんだけど、じーっと見られていたらいやかなと思って。

だから私も手を動かしながら、見ていないふりをして見ていようと。試しに編み物をしたら、編み目を数えたりして思ったより集中しないといけなかったんですね。

でもダーニングなら傷み方は人それぞれで正解がない。完璧を求めなくていい分、気楽にできました」

ダーニングは、傷んだ服を繕ってまた着続けることができる暮らしの知恵。イギリスの伝統的な『かけはぎ』のやり方を家庭でもできるように簡単にしたテクニックだと話します。

野口さん:
「子どもたちが小さいときはいろいろなところが破けてきますし、ダイニングテーブルに広げて気軽にダーニングをしていました。

それが今も続いている感じなのかな」


映画を流しながら、制作の続きを

ひと段落したところでお風呂へ。リフレッシュした頭で再び制作と向き合います。

野口さん:
「制作だけしているとすぐ眠くなっちゃうので、映画やドラマを流していることが多いです。

ロマンティックコメディやサスペンスなんかを流しているけれど、ストーリーを追うというよりも、眠気防止の役割の方が大きいかな。

仕事でやらなきゃいけないことに追われているときは、ふとジャムを煮たりチョコチップクッキーを作ったりする夜もありますね」

やり遂げたい気持ちはあれど、終わりまでの道筋をなかなか描けないとき、ひとまずキッチンに立つ。黙々と手を動かしているうちに、何かしらが完成している。

たとえ簡単なものでも、キッチンで得られる達成感に救われたことが私にもあるなあと、野口さんの言葉に重なる景色を思い出します。

野口さん:
「たとえば料理でも、残り物を次の日も美味しく食べられたら嬉しいとか、少し手を加えて味わい直すことができる、ということが小さい頃から好きだったように思います。

父も同じ車に40年ほど乗っていたり、壊れてもすぐに買い替えなかったり、そういう家庭で育ったからでしょうか。

ボロボロになると、一時『なんて古くさい物に乗っているんだろう』って蔑んだ目で見られることもあって辛いんだけれど、それを超えるとリスペクトの眼差しに変わるんですよね。

古くなった物に手を加えて使い続ける面白さを身をもって経験してきたので、気に入ったものは堂々と使い続けたいと思っています」

§

ダーニングを始めたきっかけや、物との付き合い方など、お話の端々に家族とのあたたかい光景が紐づいていた野口さんの夜の習慣。

動画には、記事で紹介しきれなかった心にぽっと明かりが灯るようなシーンとお話が詰まっていますよ。

約10分間、ぜひ寝る前のお楽しみにのぞいていただけると嬉しいです。

※この記事は2024年4月に公開した動画を元に制作しております。現在の暮らしとは一部異なる場合がございます。


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野口光

テキスタイルデザイナー。ニットブランド「hikaru noguchi」、社団法人日本ダーニング協会主宰。武蔵野美術大学を卒業後、イギリスの大学にてテキスタイルデザインを学ぶ。ダーニング教室やワークショップを開催し指導や発信を行う。最新刊は『はじめての靴下ダーニング』(日本ヴォーグ社)。
Instagram : @hikaru_noguchi_design 
Webサイト :「hikaru noguchi darning」https://darning.net/ 

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