毎日の暮らしのなかに、静かに、でも確かな気持ちよさをもたらしてくれる道具があります。
私がずっと気になっていて、ついに我が家に迎え入れたのが、松野屋の「ソルガムロングほうき」です。
実はほうきを手に取ってみようと思うきっかけになったのが、当店のオリジナル番組『うんともすんとも日和』で、松野屋の松野弘さん・きぬ子さんご夫妻を取材させていただいたことでした。
それまでの私にとって掃除といえば、休日にまとめてやるちょっとしたイベントのようなもの。けれど、お二人の暮らしぶりを拝見して、ほうきという道具への興味がぐっと湧いてきたんです。
不便は便利、便利は不便?
取材のなかで特に心に残っているのが、弘さんの「不便は便利、便利は不便」という言葉でした。
一見すると、現代の掃除機に比べてほうきは手で掃く手間のぶん、不便に思える道具かもしれません。でも、電気を使わず、電源を入れる手間もなく、使いたい時にサッと手に取れる。音が静かだから、時間帯を気にせずいつでも使える。
そう考えると、実はほうきの方がずっと軽やかで便利なのかもしれない。便利さを優先する中でついおいてけぼりになっていた、手を動かして部屋を整える楽しさに気づかされた瞬間でした。
そこで私も、弘さんの「朝起きてすぐにほうきをかける」という習慣を真似してみることにしたんです。
いざやってみると、朝にほうきを動かす所作そのものがとても清々しくて、背筋が少し伸びるような感覚になります。 何よりシャシャシャっと音をたてながら、掃除をしていく時間が心地いいのです。
少しだけ不便に思える道具だからこそ、自分の手をかけたぶんだけ部屋が整っていく時間が、どこか愛おしく思えます。それに、それが今の自分の暮らしにも無理なくしっくり馴染んでくれたことが、なんだか嬉しかったんです。
掃除機では届かなかった場所も
これまでは一週間に1〜2回、まとめて掃除機をかけていた私。けれど、日常的にほうきをかけるようになって埃って思いのほか溜まっているんだなと驚きました。
掃除機ではヘッドが引っかかってかけづらい、床の巾木(はばき)のちょっとした溝や、ドアストッパーの裏側などの細かい隙間。そこをほうきでなぞってみると、綿埃がかき出されてきたんです……!(掃除できていたつもりだったのでショックでした)
掃除機だと音と勢いで一気に吸い込んでしまうので気づきにくいのですが、ほうきだと埃をただ払うというよりは、隙間から「かき出している」ような感覚に近いかもしれません。
特に和室は、畳の目に入り込んだゴミが見えづらいこともあって、ほうきをサッと走らせてみたら、「えっ、こんなに埃が溜まってたの!?」と思わずびっくり。
使われている「ソルガム」という素材はイネ科の穀物・サトウモロコシで、頼もしくしっかりしているので、床を掃くたびに「シャッ、シャッ」と音が鳴るのも気持ちいいんです。
▼「シャッシャッ」の気持ちよさをお伝えしたくて動画も撮ってみたので、ぜひ音ありでご覧ください
ちょっとした瞬間に手に取りたくなる道具
この「ソルガムロングほうき」、使い心地を後押ししてくれるのがロングタイプの柄。かがむ必要がなく、掃除を始める時の「よっこらしょ」という重たい気持ちがまったくありません。
身長155cmの私が使うと、ちょうど腰を曲げずにすっと立ち姿のままで掃ける長さ。体に負担がかからないからこそ、億劫にならずに続けられています。
また、ほうきは一日のうちで「使っていない時間」の方がずっと長い道具ですよね。だからこそ、インテリアに馴染むデザインかどうかも大事なところ。 松野屋のほうきは素朴ながらどこか洗練されていて、フック部分に使われている革のワンポイントがさりげなくてお気に入りです。
穂先が傷まないように、和室の入り口の壁に画鋲を刺して掛けられるようにしていますが、目立ちすぎないけれど、通るたびに「あ、ここにあるな」と存在を感じられて、自然と手を伸ばしたくなる佇まい。
出しておけるから、気になった時にサッと手に取れる。サッと手に取れるから、部屋も気分もいつでも心地いい。そんな静かでうれしい変化を、このほうきが我が家にもたらしてくれています。
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