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【スタッフコラム】あきらめるのをやめた日のこと。
バイヤー 山根
僕が旅に出た理由
19才の冬、僕は失恋しました。
そのショックは非常に大きかったようで、3ヶ月ほども思い悩んだ末に僕はひとつの答えを出しました。
「そうだ、旅に出よう」
そして20才の夏休み、僕は初めての一人旅に出かけたのです。
ノープランの旅の楽しさと、悩み
いつも一人旅の相棒はこのリュックでした。
今日のコラムではそんな初めての一人旅のときの話を綴りたいと思います。
期間は2週間。東京を出発し北海道まで行って、折り返し鹿児島まで行って帰ってこよう。決めたのはそれだけ。青春18きっぷを持って電車に乗りました。
旅を始めるなり、知らないおじいさんに話しかけられ電車でおしゃべりしたり、ふらり立ち寄った居酒屋で常連さん達と会話したりと、非日常な体験のオンパレード。
当時の日記によると「1日が1ヶ月分くらいの刺激だ」というくらい、想像以上のワクワクな旅行が始まったのです。
しかし雲行きが怪しくなって来たのは旅の中盤、四国に渡った頃でした。
「……すごくさみしい」
振り返ってみれば、楽しい出来事に恵まれたのは序盤まで。この数日変わった出会いもなく、いつのまにやら青春18きっぷを消費するためだけの長距離電車旅になっていました。
「僕はどうしてこんな旅をしているんだろう……」
ひとり見知らぬ土地にいることのさびしさ、楽しいことに出会えないつらさに僕は襲われていました。
たっぷりの不安や疲労を感じて泊まったのは、愛媛の小さな駅にあるビジネスホテル。僕はベッドに横になって考えます。
「途中で辞めるのも悔しいけど、このまま帰ってしまおうかな……」
頼ったのは天気予報でした
旅先でお世話になった人たちにサインをもらっていったギターのストラップ。今でも愛用中。
旅を続けるか、続けまいか。
いくら悩んでも自分じゃ決められそうにない……そこで僕は運を天に任せることにしました。
もし明日の天気が『晴れ』だったら旅行を続ける。『雨』だったら帰る。そう決めて眠りについたのです。
翌朝。目が覚めて、身支度をします。
なんとなく部屋のカーテンは締めたまま、ホテルの1階に降りて行きました。そして朝食スペースに置いてある新聞を手に取り、僕は恐る恐る天気予報欄を見てみました。
天気予報は、くもり時々晴れ。
微妙だよ!
と、ビジネスホテルの簡単な朝食を食べながらひとりで新聞に突っ込み、笑いました。
「まぁ、あきらめるのはいつでもできるか。行けるとこまで行ってみよう」
朝食を食べ終わる頃には、自然とそんな気持ちになっていました。
「まだ続けよう」と決めてから
オフィスの窓から見える空。この頃は曇り空ばかりでした。
どうせ続けるなら楽しく行こう。
ふと大分に引っ越した小学校の同級生のことを思い出しました。
何年ぶりだかわからないけど思い切って連絡をしてみたところ、会ってくれるとのこと。その返信に、言いようもないうれしさを感じたんです。
僕は愛媛から大分に渡るフェリーの上でこう思いました。
「同じ旅でも、前向きでいれば自分で楽しいことを見つけられるんだ」
「希望があるうちはあきらめないで続けてみよう」
そしてこう思えたことを大事にしようと、心に決めました。
この決断のおかげですごーく楽しい九州の旅が始まることになるとは、このときまだ知らなかったのですが。
それ以来なにかをあきらめたくなったとき、例えば仕事がすごく嫌になったときも、「この先には自分のやりたいことがある」「明日はなにか楽しいことを見つけてみよう」と気持ちを切り替え、あきらめることはありませんでした。
あきらめないようにしよう、そう決めた旅の日。あのときフェリーの甲板から見た空をずっと覚えています。船が向かう先の西の空は、雲が切れて明るくなり始めていました。
9月の雨上がりの空を見ると、あの旅の日のことを思い出します。
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