【バイヤーのコラム】引っ越しと忘れられない思い出。
編集スタッフ 松田
5年間暮らした家から引っ越しました。
先月末、引っ越しをしました。
クラシコムに勤めはじめて3年半が過ぎ、そろそろもう少しオフィスに近い場所へ、と決めた引っ越し。
バタバタと荷造りをしながら、この家で暮らした、5年間のことを思い返していました。
エレベーターがなくて、毎日5階まで上るのが大変だったこと。
階段を上った先にほんの小さく見える東京タワーをみるたび、「東京で暮らしているんだ」と実感したこと。
ベランダからみえる朝焼けや空を、飽きずに何枚も撮影したこと。
友達を呼んで、おつまみと大好きなビール片手に、夜更けまでおしゃべりしたこと。
いつも賑やかだった商店街の風景。
などなど、思い返されるのはどれも日常の出来事ばかり。中でも一番忘れられないのが、お隣に住む「おばあちゃん」とのことです。
忘れられない思い出。
頻繁にというわけではないけれど、実家の青森から送られてきたリンゴや枝豆をお裾分けしたり、逆にビールやお菓子、おいしい焼き海苔を頂いたりして、そのたびにほんの短い会話を交わすご近所さん。
綺麗な白髪をキュッと結わえた小柄なおばあちゃんは、いつもとびっきりの可愛らしい笑顔で話しかけてくれて。
おしゃべりするだけで、なんだか気持ちがまぁるく温かくなったのを覚えています。
そんなおばあちゃんが大好きだったので、ご近所付き合いでお話するのが本当に楽しみでした。会う口実(主にはお裾分け)ができるたび、「わーい、隣のおばあちゃんにもお届けしよう!」とウキウキして訪ねました。
わたしを娘か孫のように思ってくださっていたのか、訪ねるたび「最近寒くなったけれど、身体はだいじょうぶ?元気にしてる?」と、私たち夫婦のことをいつも心配してくれました。
▲近くの公園で毎年行われていた灯籠流し。毎年のように観に行きました。
夏の夜は、寝室の窓を開けていると、たまに隣のおばあちゃんの部屋からラジオの音が聞こえてきました。
あるとき、「夜眠れない日はね、いつもね、ラジオを聞いているの。ご迷惑かけちゃいけないって、なるべく音は低く掛けているつもりなのだけど、うるさかったらいつでも言ってね。ごめんなさいね」と声を掛けてくれたこともありました。
けれど、そんなラジオの音は、なんだか不思議と心地良くさせてくれことを覚えています。
引っ越しが決まったとき、隣のおばあちゃんとお別れしなくちゃいけないことを思うと、切なくて胸のあたりが少し苦しくなりました。
引っ越しの前日、いままでの御礼を伝えなくちゃと、お茶菓子を手に訪ねると、
「身体に気をつけて、これからもずっと旦那さんと仲良くね。今まで本当に良くしてくれて、ありがとう。さよならは寂しいから、お元気でねって言うわ。お元気でね。お元気で」
瞳を涙ぐませて、その小さな小さな手で私の両手をギュッと握ってくれました。
思わず私も泣きそうになりながら、「もしよかったら、お手紙や葉書を送ってもいいですか? おばあちゃんも、どうかお元気でいてくださいね」と伝え、最後にもう一度握手をしてお別れしました。
******
新しい家に引っ越して一ヶ月が経ちます。
探り探りではありますが、家や街の良いところ、好きなところが少しずつできてきました。
前に暮らしていた家みたいに、いろんな思い出ができるといいな。
そして、夜眠れない日はラジオをつけて。暑中見舞いには、おばあちゃんにどんな絵葉書を送ろうか、どんなことを報告しようかを楽しみに考えている、この頃です。
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