【30歳までのカウントダウン】前編:やりたいことが分からなかった、25歳のモヤモヤ期
編集スタッフ 岡本
30歳まで、あと何年だろう
「30歳まで、あと5年、4年、3年……」
私・岡本は、今年で27歳。年齢はただの記号だと思いつつも、そんなカウントダウンをしているように思います。
きっかけは、社会人になって2年目。仕事にも慣れ、すこし落ち着いた頃でした。
「この仕事をずっと続けるのかな」「他にもっとやりたいことがある気がする」「でもそれって何だろう?」と、不安や迷いを抱えるようになったから。
30歳までには、このモヤモヤを脱して、自分の生き方を「これでいい」と認めたい。けれど、そのために20代の今、何をすべきかが分からない。
クラシコムに転職する前の25歳のころは、とくに先が見えず、苦しくてたまらない日々でした。
そこで、いま輝いているあの人たちが、30歳までをどう過ごしてきたのか、お話を伺うシリーズ「30歳までのカウントダウン」を企画しました。
vol.1にご登場いただくのは、『BAILA』『LEE』など人気雑誌でスタイリストとして活躍する上村若菜(かみむら わかな)さんです。
まずはじめに、聞いてみたいことがあります。上村さん、25歳のときはなにをしていましたか?
上村さん:
「OLを辞めて飛び込んだファッションの世界で、じつは一度スタイリストという夢を手放しかけました。
人生で一番どん底に落ちたのが25歳で、このまま自分はダメになってしまうかもしれない、とまで思っていました」
現在はたくさんの雑誌で活躍中の上村さんにも、もがいていた時期があると聞き、驚きました。
今年31歳を迎える上村さんのこれまでを、前後編でお届けします。
充実していたOLライフ。「ここじゃないかも」のきっかけは?
上村さんの社会人デビューは、20歳。
短大を卒業し、シャンプーや食品に香り付けをする香料メーカーに、営業事務として入社しました。
上村さん:
「早く働いて自立したいという思いが強く、場所や給料などの条件だけで決めた職場でした。
ずっとこの会社で働いて、いつか結婚するんだろうな。
そんな風に思っていたので、このときはまだ、スタイリストになりたいという夢もありませんでした」
定時まで働いてアフターファイブを楽しむという、OLライフを満喫していた上村さんですが、勤め始めて1年が経った頃、ルーティンの毎日に違和感をおぼえるようになります。
上村さん:
「同じことの繰り返しで、このままでいいのだろうかという思いが、ふつふつと湧いてきたんです。
暮らしの中で楽しいのは週末だけ。一日の終わりにカレンダーにバツを書いて、いつも週末がくるのを待っていました」
やりたいことが、見つからない
現状を変えたい、そう思った上村さんがまずはじめにしたのは、自分と向き合うこと。なにか心が動くようなことがないか、アンテナを張り続けたと言います。
上村さん:
「自分にはなにができるだろうと、漠然と考えても答えは出ない。だからまずは、自分の “好き” を探すことから始めました。
花を見て綺麗だなと思えば、お花の教室に通ったり、食べることが好きだから、料理教室にも通ったり。他にも週2回くらいのペースで、いくつか習いごとを始めて……。
もうとにかく、手当たり次第に行動していました。
でも、自分と向き合うってなかなか難しい。いろいろ試したけれど、仕事にしたいほど強く、好きなものなんて簡単には見つかりませんでした」
自分と向き合うということは、ときになによりも苦しく、さらに不安を加速させる場合もあります。
理想があるのにできていない自分や、好きなことすら見つけられない自分……、こんなふうに弱いところが浮き彫りになってしまうから。
けれども上村さんは、心がモヤっとしたとき、あえて思い切り悩んできたと言います。
人生迷子から脱した、自分ノート作り
上村さん:
「悩んでいたときは、とにかくたくさん本を読みました。本屋さんに定期的に通って、平積みされているビジネス書や自己啓発本、著名人の自伝などが多かったですね。
なにか自分を変えるきっかけが、そこにはあるかもしれないと。藁にもすがる思いで」
答えを見つけるヒントになったのが、自分ノートでした。
上村さん:
「ある本に、『素直な気持ちや、心に残った言葉など、なんでもいいから思いついた時にノートに書きとめて “自分ノート” をつくる』というアドバイスがあって。
これならできるかもと、料理教室などに通うかたわら、用事がない平日の仕事帰りには、一人でカフェに寄って、手帳をひらくのが習慣に。
好きな本の一節とか、雑誌の切り抜きとか、最近買った気に入ってるものとか。
他愛もないことばかりでしたけれど、書き留めていきました。
当時は実家に住んでいましたから、一人になりたいというのもあって。じっくり考えるためにも、そのカフェでの時間は貴重でしたね。
そうやってしばらくノートづくりを続けて、ある日ふと読み返してみると、これだ!と思えるものが浮き上がってきました。それが洋服だったんです」
1年ちかくの年月をかけて、好きなものをやっと見つけた上村さん。あとは行動あるのみでした。
毎月買っていたファッション誌に登場する、憧れのスタイリストのアシスタントに、さっそく応募したそう。
このとき上村さんは22歳でした。
上村さん:
「当時、oggiなどの雑誌で活躍していた、髙橋リタさんのスタイリングにいつも釘付けで。
その時の私はOLだったこともあり、コンサバスタイルが好きでした。なかでも髙橋さんのコーディネートは、目に入った途端に彼女のスタイリングだって分かるんです。
パラパラとページをめくっていても、手を止める力がある人ってすごいと、素直に惹かれていきました」
スタイリストという目標に向け、強い気持ちで応募したものの、その後はしばらく音沙汰がなく不安な日々を過ごしたのだそう。
そして応募から約7ヶ月後、ようやく返事が返ってきました。
憧れの世界と同時にやってきた、人生最大のどん底
念願叶って始まった、スタイリストアシスタントとしての生活。師匠はもちろん、髙橋リタさんです。
夜中までかかる撮影に加えて、アルバイトとの両立。
多忙な日々でしたが、覚悟して飛び込んだ世界だったので、辛くはなかったと話します。
3年間にわたるアシスタント生活のなかで、変化を感じ始めたのは半年ほど経った頃。
上村さん:
「私はもともとお調子者タイプなんです。どこにいってもはじめのうちはうまくできる。短大やOL時代はそのままなんとかやり過ごせました。
でも、この業界ではそれが許されなかった。
アシスタントについて半年くらい経った頃、どんどんボロが出てとりつくろえなくなったんです。
挨拶や気遣いなど、社会人としての基本的なことから、洋服に関する知識まで、足りないところが徐々に浮き彫りになってしまって。
毎日がダメだしの嵐。自分の “できなさ” を痛いほど感じて、人としてもスタイリストとしても尊敬している師匠から『向いてないかもしれない』とまで言われました」
上村さん:
「スタイリストアシスタントになって2年が経とうとしている頃。24歳くらいですかね。師匠からのアドバイスで、一人暮らしを始めました。
朝早くから撮影に行って、終わったら夜通しアルバイト。そのままほとんど休むことなく、また次の現場へ行くという毎日。
自分としては必死なのに、師匠からはダメ出しばかりで、スタイリストとして成長している感覚がまったく持てませんでした。生活費を稼ぐのも大変で、休む時間もない。
前向きに考える思考も止まって、もうこのままダメになってしまうかもと、気持ちが完全に下向きになっていました」
ぎりぎりの精神力のなかで上村さんを支えていたのは、変わらずにある洋服への熱い思い。
けれども、ぴんと心が張り詰めた暮らしを続けていたある日、ぷつりとその糸が切れる瞬間がやってきます。
上村さん:
「打ち合わせに向かっている最中、ふと『もう無理だ』と心が折れました。
その日に必要な資料だけを出版社の受付に渡して、そのまま電話もメールも出ず音信不通に。
してはいけないことだったけど、ああしなければ自分を保てないところまで来ていたんだと思います」
このとき25歳、スタイリストアシスタントとしての毎日からついに、逃げ出してしまいました。
続く、どん底の日々。空回りの毎日の先に
上村さんの30歳までのカウントダウン。
20代前半は、好きなことが見つからない、せっかく見つけた好きなことはうまくいかない、という悩みの連続だったようです。
新人でもない、かといってベテランでもない。周囲の変化も著しい20代は、だれしも一度は自分について振り返るタイミングなのかもしれません。
後編では20代後半の日々を伺います。「もうダメかも」と諦めかけた夢と、上村さんがどのように向き合ってきたのか、詳しくお届けします。
(つづく)
【写真】タドコロミズホ
もくじ
上村若菜(スタイリスト)
女性ファッション誌「BAILA」「LEE」などを中心に活躍するスタイリスト。シンプル&ベーシックに、ほどよくトレンドを取り入れたスタイリングを得意とする。インスタグラムでのリアルな私服コーディネート(wakame_kami)も人気。
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