【ケの日のこと】正反対の夫と結婚して、8年が経ちました。
「家族と一年誌『家族』」編集長 中村暁野
第15話:8年目の記念日
先日、8回目の結婚記念日がありました。結婚記念日って気づいたときには過ぎているのが常だったので、今年はひとつ、忘れず済むよう何か計画してみることに。やんちゃざかりの1歳児がいるので、ちょっと特別な美味しいお店に食事へ……なんてことはハードルの高い我が家。さて、どうしたものかと考えながら、夫婦になった頃のことを思い返していました。
8年前、思いがけず娘がお腹にやってきて、わたしたちは結婚することになりました。妊娠を告げた時、ソファに座ったまま腰が抜けていた夫を思い出すと今でも笑えてきます。それでも長く一緒に暮らしていたので不安はなく、むしろタイミングがみつからなかったわたしたちにとって、よいきっかけになったと思ったくらいでした。ところが、そうして始まった結婚生活は、予想外に笑えないことの連続だったのです。
もともと夫とわたしは正反対の感性と性格です。わたしは心配性で計画性を持ってものごとを進めたいタイプ。そして気をぬくとネガティブ思考に陥りがち。一方夫は、直感と思いつきを信じてマイペースに行動したいタイプ。そしてどこまでもポジティブ。付き合っていた頃は面白がれていたこの違いが、夫婦になった途端ことあるごとにケンカの種になったのでした。
初めての子育てに不安だらけだった最初の数年。仕事が忙しくほとんど家にいない上にお気楽で、気持ちを理解してくれない(と感じていた)夫への不満と心労が募り、わたしがダウン。このままじゃダメになる、と関係も暮らしも見直そうと話し合いました。その結果、見直す!という直感のままに夫は勤めていたギャラリーのディレクターを辞め、企画も空間も作るアートディレクターとして独立したものの、来月も再来月も仕事なし、貯金もなし!という状況。おののくわたしを尻目に微塵も不安を感じない様子の夫は、夕焼けを見て「しあわせだな〜」とかつぶやいていました。それでもなんとか仕事が軌道にのりそうになったところで、急遽里山への引越しを決め、暮らしも仕事もまた大きな変化を迎えることとなったのが1年前のことです。
変化のたびに何度ぶつかったかわからない。わたしが苦しいと感じることは彼にとって苦しくないようだし、彼が不満を感じることがわたしには理解できない。「もうほんとにわからない」とお互い何度も言いながら、積み上げてきた8年間でもありました。
それでも。理解しがたい思考と感覚を持った夫だからこそ、山も谷も越えて、今があるような気がしています。一人だったらきっと、遠くからながめているだけだった山や谷にも、「よし、行ってみよう」。そう思うことができたのは自分とちがう視点を持った存在があったから。そう思うと、夫婦のわかりあえない部分って、困難さや落胆をもたらすこともあるけれど、同じくらいチャンスももたらしてくれるものなのかもしれない……と思ったりする最近です。とはいえ、実際ぶつかっている真っ只中では、毎度しんどさや怒りしか湧いてこないんですけれど(笑)。
まだまだ超えなければいけない山も谷もたくさんあります。いつのまにやら二人の子連れ旅。底力を出して!気をぬくと遭難するよ!と焦るわたしと、まあゆっくり行けば大丈夫よ、と呑気な夫。相変わらずな二人ですが、ここからまた「ケの日」を積み重ねていきたいと思います。
ところで、結婚記念日のお祝いには結局、手作りアイス屋さんのオーダーケーキをお願いしました(我々夫婦は大のアイス好き)。あらゆることが違うわたしたちですが、食の好み(だけ?)は一致しているのです。甘いアイスにほぐされて、喧々諤々、8年目もよろしくどうぞ、なんて思っています。
【写真】中村暁野
中村暁野(なかむら あきの)
家族と一年誌『家族』編集長。Popoyansのnon名義で音楽活動も行う。7歳の長女、1歳の長男を育てる二児の母。現在は『家族』2号の取材を進めている。2017年3月に一家で神奈川県と山梨県の山間の町へ移住した。http://kazoku-magazine.com
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