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【ケの日のこと】私ってこんな人間だった⁉︎ 今日も母の心はドラマティック

「家族と一年誌『家族』」編集長　中村暁野

第19話：母はドラマティック

先日のこと。都内で仕事の打ち合わせがひとつ終わった後、せっかくだからと1人でお昼をたべることにしました。向かったのは小さなインドカレー屋さん。なかなか子供連れでは行きにくい、カウンターがメインの店内に座り注文をしていると、隣の席に2人連れの女性が座られました。お子さんが幼稚園に行っている間の息抜きだというのが楽しげな会話から伝わってきます。そんな様子を感じつつも届いたカレーをしみじみ味わっていると、ふと1人の方が意を決したように「昨日わたし、キレちゃって……」と話しはじめたのです。

些細なことに必要以上に怒りが湧いて子供に八つ当たりしてしまった、という話の行方にわたしの意識もぐぐっと引っ張られる中「怒鳴る自分が怖くなっちゃった」と告白は続きます。聞いていらっしゃるもう1人の方もまた「わたしもある。むしろわたしの方がスゴイと思う……」と答えているところに「わかります、わかります」と、思わず加わりたくなってしまったわたしです。

我が家の子ども達は7歳と1歳。ずいぶん歳が離れているのにケンカが絶えず、しかもその内容はお風呂の鏡をどっちが先に覗くかなど、どっちでもいい〜！と言いたくなるようなことばかり。些細といえば些細なこと。そして姉としては弟へのヤキモチが、弟としては姉の真似をしたい時期という、どちらの気持ちも頭では理解できることなのです。それなのに、日々その些細なことが連続するとこちらの感情は爆発してしまう。怒りたくないのに怒らずにはいられない。そしてそうなる度、わたしってこんな人間だったの……？と驚いてしまうのです。

母親になって、もうすぐ8年目。一向に余裕は生まれず、忍耐と試練の日々は続いています。ですが、そんな子育てを通して、1人では出会うことのなかった自分を発見していることもまた確かなのです。

よそでは聞かせられないような大声を出してみたり、かと思えば愛しさがこみ上げ突然抱きしめては嫌がられてみたり。そんな自分は全く予想外だったのですが、予想外の自分を知る機会をもらったんだと思ってみれば、これもまたかけがえのない経験のひとつだと思えるような気もします。泣いて笑って怒って喜んで。全力で向かってくる子供達に、こちらも全力で向き合っている今。かつてなく感情に翻弄され、劇的な日々が続いています。

まったくもって大変ではあるのですが、こんな劇的な日々もきっと成長とともにあっという間に過ぎていく（と信じたい！）のかと思えば、今はこのドラマティックな「ケの日」を存分に味わうのも悪くない……のかもしれません。

悩めるお母さんたちの会話から、改めてそんなことを思ったお昼時。カレーを食べ終わり、お会計を済ませ、おふたりの背中に「お互いがんばりましょう！」と心の声をかけながら、子供達の待つ家路へ急いだある日だったのでした。

【写真】中村暁野