【私の人生を変えた読書】後編:暮らしの見方が変わる?本屋さんのおすすめする本2選

編集スタッフ 齋藤

例え家にいても、本を読むだけで日常から一歩外に出たように感じられる。本はそんな新たな感情や視点をくれる存在のように思います。

そこでこの特集では、大の読書好きである私・齋藤が、本を読む楽しさやおすすめの本を探ってきました。

前編に引き続きお話を聞いたのは、渋谷区・奥渋谷にオフィスと店舗を構える「SHIBUYA PUBLISHING & BOOKSELLERS(以下SPBS)」で、マネージャーを務める鈴木美波(すずき みなみ)さん。

▲学生時代のアルバイトから、SPBSに勤めている鈴木さん(右)

後編である今回は、普段から本のセレクトもしている鈴木さんに、おすすめを紹介してもらうことに。

自分だけの視点で選ぶとどうしても狭い世界になってしまうし、例えテレビで話題になっているベストセラーだとして、それが自分の好みに合うかはわかりません。それよりも、気になる人からのおすすめをぜひ聞きたい。

ちなみに普段は私、覇気のない主人公が出てくるアメリカやフランスの文芸本ばかり読んでいます。今回鈴木さんにおすすめしてもらったのは、まさにそんないつもの私だったら選ばない2冊でした。

 



いつもの暮らしの見方が変わる?
異国の台所事情


鈴木さん:
「これは、珍しいインドのキッチンについて紹介されている本。一見するととっつきにくそうなのですが、写真やイラストも多く、日本人の方が書いているから視点や驚くポイントに共感ができて、すんなり読むことができると思います。

紹介されているキッチンは意外とコンパクトですし、間取りも載っているんですが、日本では考えられないくらい使い方が自由なんです。壁の色や置かれている小物も鮮やかでステキなので、インテリアや暮らしのことが好きであれば、きっと楽しめますよ。

真面目な視点で読むこともできるんですが、私が気になったのは調理風景。床で食材を切る写真が多く掲載されていて、日本ではなかなかないなと思わずびっくり!」

▲南インドの家庭料理のレシピも載っています。

鈴木さん:
「そういえばキッチンって、実家や友人の家で見たことがあるくらい。知らない人の家のキッチンを覗ける機会自体が少ないのに、さらにインドの家庭を見せてもらうことはなかなかない経験です。

写真やイラストを、パラパラ眺めるだけでも楽しくて。自分の暮らしと比べてみればさまざまな発見もあって、さらに面白いと思います」

PICK UP !
ブルーシープ『南インド キッチンの旅』

 



詩はクスリになる?
谷川さんの詩の新しい読み方


鈴木さん:
「これも最近出たばかりなんですよ〜。有名な谷川俊太郎さんの詩なので、知っているものもあるかもしれません。

有名な方の詩集をなぜ今回あえて紹介したいかというと、劇作家の鴻上尚史(こうかみ しょうじ)さんが再編集しているから。それがこの本の画期的な点なんです。

たくさんある谷川さんの詩を『さみしくてたまらなくなったら』『生きるパワーが欲しくなったら』という風に、心情別に分けて収録してある贅沢な本。『家族に疲れたら』とか、正直、誰もがふとした瞬間に感じたことがあるのではないでしょうか。

自分の中の言葉にできないモヤモヤを言葉にしてもらえるだけで、救われることってありますよね」

鈴木さん:
「もし読んだことがある詩でも、こういう分けられ方をすると、また新しい視点で楽しめます。

ちなみに私は、収録されていた『ここ』という詩がすごく気に入ってしまって朗読したくなりました。音が良いので、口ずさむとさらに楽しそうと思わずにはいられません。

いつもの暮らしの中で、詩を読むモードにはなかなかなりにくいと思うんです。でもこの本には共感できるテーマの切り口があるから、読む人の気分に優しく寄り添ってくれる。隙間時間に読むのにも、ぴったりの詩集だと思います」

PICK UP !
大和書房『そんなとき隣に詩がいます』

 

偶然の出会いで、人生が変わることもある?

鈴木さん:
「私が小さい頃衝撃を受けた『はてしない物語』という本。この本に出会えたのは、たまたま担任の先生が教室に置いておいてくれたから。

ただそこに置くだけで、手にした人の人生を変えてしまうこともある。本にはそんな魅力があるように思うんです。

そんな本の魅力を届けるために私たちができることって、まだまだあると思っています。この仕事を通して、本を手に取る人が少しでも増えてくれたらうれしいです」

誰かが何気なく置いたり、そしてまたおすすめしてくれた本がきっかけで、自分では思ってもいなかった何かが生まれることもあるのかもしれません。

人生を変えてしまうきっかけは、何気なく手に取った本の中に隠されているかも……。

その可能性があると思うだけで、暮らしも読書ももっと豊かなものになりそうです。

 

(おわり)

【写真】鍵岡龍門(1、2、7枚目)


もくじ

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鈴木美波(すずき みなみ)

大学在学中から「SHIBUYA PUBLISHING & BOOKSELLERS」で編集、書店業務に携わり、2012年に店長代理、同年に店長に就任。現在は、SPBSマネージャーとして、同ブランドの管理・統括や新規事業・出店など幅広く手がける。

SHIBUYA PUBLISHING & BOOKSELLERS
HP:https://www.shibuyabooks.co.jp/


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