【スタッフコラム】最高に愛おしい、ウソの終わりについて。
編集スタッフ 二本柳
大の大人が全力でウソをつく日。子どもが想像力を爆発させる日。クリスマスは、なんてへんてこで、なんて愛おしいイベントでしょうか。
私も例に漏れず、クッキーとホットココアを準備して、サンタの労働をねぎらう子どものひとりでした。
私の実家は、25日の朝ではなく24日の夜、寝る前にプレゼントに気づくシステム。子どもの部屋は二階だったので、夜中に階段をそろりそろりと登る瞬間は、それはもう心臓がはちきれそうなくらいドキドキしていたことを今でも鮮明に覚えています。
サンタと鉢合わせたらどうしよう、プレゼントは届いているだろうか……。賑やかなリビングとは一転、キーンと冷たい静寂、真っ暗な部屋。そこに、きらりと光る包装紙を見つける。
……来ていた!さっきみんなでケーキを食べていたあの時間、サンタはたしかにこの部屋に来ていた!!それは子どもにとって神秘ですらありました。
今でも、よくもまあ上手にだましてくれたな……と感心してしまいます。一足はやく親を疑いはじめた4歳上の姉と、二人体制で監視していたのに。階段に座りこんで見張ったこともありました。でも毎年、これは疑いようがない!とサンタの存在を確信させられるのだったし、姉にいたっては「やっぱりね。鈴の音が聞こえたもん」と想像力が尽きることはありませんでした。
でも問題は、その奇跡は必ず終わりを迎えるということ。
厳密に何歳のときだったかは覚えていないけれど、その何年かの人生で最も悲しいクリスマスだったことは間違いありません。
いつものようにベッドに置かれたプレゼントを見つけたとき、すでに心は冷めていました。その日の昼に、同じ包みを発見していたから。中身は、まさに希望通りの代物だったのに、どうしてもイライラが隠せない。あの時の怒りと悲しみの入り混じったような、複雑な感情は不思議なくらいよく覚えています。
今思うと、その1〜2年前から心のどこかでサンタがいないことを知っていたのかもしれません。でも家族の「お約束」が終わる日がくるのが怖かった。いつまでも「サンタを信じる子ども」でいたかった。上手にウソをついてくれている間は、その「お約束」は守られていたはずなのに……
自分が「サンタを信じる子ども」から「サンタはいないと知っている ”子ども” 」に成長する、その変化に動揺していたのでした。
その頃、「もう戻らない時間」という存在を知って、しばらく泣きました。姉とサンタへ手紙を書いたあの夜も、みんなで出かけたあの夏も、ひとつとして同じ日はやってこない。二度と時を遡ることはできない。「時」といものはなんて残酷なんだろう、はやく教えてよ!という絶望でした。
あれから何年たったでしょうか。そろそろ私もサンタに化けていいような歳になってしまいました。
私にはまだ子どもがいないけど、親になる日がきたら、やはり全力でサンタになろうと思います。そして、いつかはサンタも気が緩むので、子どもは枕に顔をうずめて泣くかもしれない。それでも、クリスマスのウソは愛おしいと思うのです。
「お約束」の終わりは、切ない成長痛の記憶になりました。
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