【ケの日のこと】夕飯作りのモットーは「無駄なく、手早く、ノンストップに」のはずでした。
「家族と一年誌『家族』」編集長 中村暁野
第32話:ケの日の夕飯
平和に一日を終えたいわたしにとって、最後の山場と呼ぶべきもの。それが夕飯の支度です。チチチ!というコンロの点火はゴングさながら。無駄なく、手早く、ノンストップに、をモットーに勝負は始まります。
2歳になったばかりの息子は夕方保育園から帰ってくると大抵腹ペコ。空腹はフキゲンの元となり、2歳のフキゲンは素早く対処しないと大爆発に繋がってしまう。なので、いかに早く「いただきます」に持っていけるか。勝負はそこにかかっているのです。
わたしは家で仕事をすることが多いので、昼ごはんを作る時に夜の支度もしてしまうか、外に出かける日は朝のうちに作ってしまうこともあります。お米を水につけ、野菜と水をいれた鍋はストーブの上に置いてスープに。オイルと塩をふったゴロゴロ野菜とお肉は鉄鍋に蓋をしてコンロに。そのまま数分放置して、だいたい火が通ったところで支度は終了。あとは夕飯直前に最後の火を入れ、お皿に盛るだけです。
それでもその数分が待てず、大騒ぎになることもしばしば。なので、手間をかけた沢山のおかずとか、出来たての美味しさとか、そんな食卓から程遠い我が家の夕飯に溜息が出ることもありますが、一生続くわけじゃなし、子供が小さい今はこれが精一杯。と、どこか割り切った気持ちで日々を過ごしていたのです。
ところが先日、8歳になる娘が帰宅後に「ピザをつくりたい!」と言い出しました。しかも、ママは絶対手伝わないで! 子供だけで作るから!と。
小麦粉とヨーグルトとベーキングパウダーで作る発酵なしのピザ生地は我が家の定番で、いつも作る様子を見ている娘は子供だけでできると言い、横に立つ息子の袖もまくりあげています。8歳と2歳のピザ作り……。自分が作るより遥かに大変なことになるだろうし、そもそも夕飯はもう出来ている……。それでも結局は、作りたいという熱意に負け見守ることにしました。
2人は冷蔵庫や食材のある保存棚を何度も開けたり閉めたり、手も作業台も床も粉だらけにしたり、どちらが生地を伸ばすかで揉めたり、具のチョイスが不思議だったり……。何度も訪れる危機に手を貸そうとするわたしを拒み(玉ねぎのスライスだけは目に沁みるのがいや、との理由でわたしが担当することとなりましたが)焼きあがったピザをテーブルで切りわけるまで、2人で協力し、やり遂げたのでした。お腹が空いていただろう息子も夢中になって愚図りもしませんでした。
▲スコーンにアーモンドを乗せる息子
無駄なく、手早く、ノンストップに、がモットーの「ケの日」の夕飯とは全てが真逆。
その日の夕飯を食べ始めたのは普段より1時間半も遅い時間だったけれど、料理を作る楽しさ、出来上がる喜び、一生懸命作ったものの美味しさ、そんな気持ちを思い出させてもらいました。時々こんな日があったらいいな、なんて思ったわたしの気持ちを知ってか知らずか、以来娘はしょっちゅう「夕飯作る!」と言ってきます。
……しかし娘よ。最後の片付けまでがごはん作りというものよ、とその度散らかりつくす台所を片付けながら思うのでした。
【写真】中村暁野
中村暁野(なかむら あきの)
家族と一年誌『家族』編集長。Popoyansのnon名義で音楽活動も行う。8歳の長女、2歳の長男を育てる二児の母。2017年3月に一家で神奈川県と山梨県の山間の町へ移住した。『家族』2号が1/14に刊行。現在販売中。http://kazoku-magazine.com
感想を送る
本日の編集部recommends!
冬のファッションアイテムが入荷中!
冬のときめきを詰め込んだニットカーディガンや、ポンチ素材のオールインワンなど、冬ものが続々入荷しています
乾燥する季節に頼りたい、お守り保湿アイテム
新作のフェイスマスクや北欧から届いたボディオイルなど、じっくりと自分を慈しむのにぴったりのアイテムも揃っています
【期間限定】WINTER SALE!
当店オリジナルの雑貨が、最大20%OFF!冬のおうち時間にぴったりのアイテムも揃っていますよ
【動画】夜な夜なキッチン
縫って、編んで、お気に入りの景色を作る(「HININE NOTE 」スタッフ・彩さん)