【ユーモアはそこにある】第3話:一人じゃ乗り越えられないことだって、あるのかもしれない

編集スタッフ 寿山

生きていれば、いいことだって、悪いことだって起こるもの。降ってわいたような悲しい出来事が起こったとき「どうして私なんだろう」と、思わずにはいられません。

でも、ただ落ち込むだけでは、いつまでも前に進めない。悲観するだけじゃなくて、自分なりに解釈することで、前に進める人になりたいと企画した今回の特集。

2話目に続き、目黒で洋服店「OWL(アウル)」を営む、山岸奈緒子(やまぎしなおこ)さんにお話を伺います。

 

悲しいのも、辛いのも、私だけじゃなかった

この1年間、事情を知った友人が奈緒子さんを元気付けようと、いろいろな場に誘い出してくれたそう。どんな誘いも断らず、積極的に出かけました。

そうすると、外出先で友人達がそれぞれに「私も家族と死に別れたときは……」と、自分のことを話してくれたのだとか。

奈緒子さん:
「みんな辛い別れを経験してるなんて、考えたこともありませんでした。パートナーや両親、娘さんや息子さんなど、大切な人を亡くした経験があると知ったんです。

口にしないだけで、誰でも何かを抱えて生きてるものですね。悲しいことも、辛いことも、人知れず乗り越えている人がまわりにもいると思ったら、『世界で1番不幸なのは私だ』なんて、後ろ向きな気持ちが少し吹っ切れたんです」

 

最後は「なるように、なる」

この1年間、まわりの人にアドバイスをもらうなかで、ふと思い出したエピソードがあるそう。

奈緒子さん:
「何年か前に夫と那須に旅行しようと、車で出かけたことがありました。夫は何を間違ったのか、関越道じゃなくて中央道に乗ってしまい、そのまま走り続けて、気がついたら諏訪湖まで来ていたんです。

仕方ないからホテルに電話して『すみません、道を間違えて諏訪湖まで来てしまって。申し訳ないのですが、今日の予約をキャンセルさせてもらえませんか?』と、お願いしました。今思うと厚かましい限りなんですが、さらに『長野の宿を知りませんか?』と尋ねて、教えてもらうまま、安曇野の旅館まで行って泊まったことがあったんです」

「予定とはまるっきり違う旅行になってしまったけれど、それはそれで楽しめました。そうやって、いつもどこかで “なるように、なる” と、夫婦でやってきたことを、この1年忘れていた気がします。

最近になって、ようやくまた “なるように、なる” と、思えてきました」

 

きっと、自分一人では乗り越えられなかった

とはいえ、夫の死を、まだ完全に乗り越えられたわけではありません。それでも、思っていた以上に笑いながら話せたことに驚いたといいます。

奈緒子さん:
「今もまだ、夫と暮らしている夢を見ることはあります。『朝ごはん、なんにしようか』と会話したところで目が覚めて、そのまま誰もいないベッドに向かって話しかけている。さすがにそういうときは、まだ辛いです。

でも、ご近所のおばあちゃんや友人たち、やさしいお客さまがいるから、また気持ちを立て直して仕事をしようと思える。きっと、自分一人じゃ乗り越えられなかったかもしれません。まわりに助けられて、この1年なんとか生きてこられた気がします」

 

ユーモアとは、前を向くきっかけをくれるもの

最後に、この企画はどうやって生まれたのかと聞かれて、私がずっと欲しかったティーポットを買ってすぐに割った話をしたら、奈緒子さんがこう言いました。

奈緒子さん:
「それはもう『お茶を淹れるのは、南部鉄器になさいな』と、ご先祖さまが言ってるのかもしれないわね(笑)。想像しただけで、すごくショックだけど……私だったら、割れたポットを粉々にして、破片を紙粘土でお盆にくっつけて、モザイクタイルみたいなトレイをつくるかな。お会計のとき、そのトレイでお釣りを渡して、お客さんと笑い話にしちゃうかもしれないよ」

そっか、そんな手もありますねと、最後にふたりで笑って別れました。

ユーモアってなんだろう?

ときとして、自分ひとりの力ではどうにも前を向けない、受け入れがたいことが起こります。

前に進みたいのかどうかさえ、わからなくなる。

それでも、不運を嘆くだけじゃあまりにも不甲斐ないし、大人だから解決したい。自分の力でどうにかしたい。そう、あがくほど視野は狭くなり、どこにも糸口が見当たらず、うなだれてしまったとき……

ふっと顔をあげて、前を向くきっかけをくれる。そんな考え方や解釈がユーモアなのかもしれません。

友達がいってくれた何気ない一言のこともあれば、自分が誰かにいった言葉のこともあるだろうし、ふと思い出した記憶のはじっこにあることも。誰もがきっと、持っているものなのでしょう。

たとえ、受け入れがたい不運や困難に直面しても、前に進めなくなったとしても。あせって無理に、先へいく必要はないのかもしれません。「よし、行こう」と、思えるときまで。

(おわり)


もくじ

【写真】鍵岡龍門

山岸奈緒子さん

岐阜県出身。動物好きで、7年前に自分でデザインした動物柄の布でオーダーメードの服を作る洋服店「OWL(アウル)」を目黒に開く。動物柄のほかにも、紳士服地を使ったものも。レディースにメンズ、子供服やバッグまで、幅広くオーダーに応えている。インスタのアカウントは@owl_meguro。http://owl705.blog.fc2.com/

 

 


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