編集スタッフ 栗村

毎朝、たまらなく愛おしい瞬間があります。

それは駅に向かう途中、犬の散歩をするおじいさんとすれ違う時。

まずキュンとくるのが、その見た目。少し背の低いおじいさんに、モフモフの犬。もうこれだけで愛らしさ満点の最強コンビなのですが、もっとたまらないのは、二人の歩くスピードです。

ゆっくりと歩くおじいさんのスピードに合わせてゆっくりと、でも楽しそうに歩く犬。その犬の優しさに触れて、さらにやられてしまいます。

それだけではありません。かわいいなぁと思って犬の顔をよくみると、なんだかおばあさんのような顔。そこで思うんです。「もしかしておじいさん、おばあさんに似ているからこの犬を飼うようになったのかな」とか、「もしかして、おばあさんはもういなくて、おじいさんは今、この犬とふたり暮らしなのかな」とか。

おじいさんと犬の関係性や、ドラマなんかを勝手に想像してしまって、朝からたまらない気持ちになります。

遅刻しそうな朝でも、仕事で頭がいっぱいの朝でも、あのおじいさんと犬をみると、なぜだかちょっと安心するんです。

他にも、文章にするには短すぎるけど、なんだか愛おしいなと感じる瞬間ってあります。例えば……

 

ダブル餃子定食と兄弟

先日の帰り道。兄弟らしき男子学生の会話が聞こえてきました。

兄：「あの餃子屋って行く？　クーポンあるんだけどいらない？」

弟：「いらない。あんまり行かないんだよね、近くにないから。1回くらいしか行ったことないかも」

兄：「うっそ！　そしたらダブル餃子定食食べたことないの！？　それはダメだ、あんなにコスパのいいご飯食べたことないなんて。行ったほうがいいよ。だからハイ、大盛り無料券」

そう言って、強引にクーポンを渡す兄。そして、それを不満気に受け取る弟。

そうそう、この雑なやりとりが、ザ・男子兄弟だった。自分には男子兄弟なんていないのに、それでもちょっとだけ学生に戻った気分になって、あのやりとりが無性に愛おしく感じられたのです。

あんな風にちょっと強引な人がいると、いろいろ巻き込まれて、いろいろ楽しいんだよなぁ。

 

町内ただいま選手権

いま住んでいる街に越して来てすぐのこと。

夕方、家でゆっくりしていたら、外から「ただいま！」と健やかな声が聞こえてきました。

あんなに健やかなただいまが言えるなんて、きっと「町内ただいま選手権」をやったら彼は1位だな。そして、あんなにいいただいまが言える子がいるこの街は、きっといい街に違いないと安心しました。

どれもなんてことない日常だけど、愛らしくて。忘れたくないから、そういう景色を一つずつ集めています。

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