【訪ねたい部屋】第2話:イケアで理想のキッチンをカスタマイズ。

ライター 長谷川未緒

気になる方のお住まいを訪問し、素敵なインテリアとその人らしさの関係を紐解く特集「訪ねたい部屋」を全3話でお届けしています。

今回は、菓子作家として活躍する吉田菜々子さん宅に伺っています。第1話では、イギリス留学時代に影響を受けたビンテージ家具やDIYによるインテリアづくりについて、お話を聞きました。

第2話では、仕事場でもあるキッチンを中心に拝見します。

 

お菓子づくりのプロが、キッチンで愛用しているアイテム

吉田さんは、広告や雑誌などのお仕事のほかに、スコーンやアイシングクッキーなどをイベント等で販売しています。

自宅で作った食品を販売する営業許可を受けるためには、さまざまな施設基準を満たす必要があり、吉田さん宅には、なんとキッチンがふたつあります。

吉田さん:
「保健所の検査に通るためには、仕事用と家庭用とを分ける必要があります。なので、もともとあったキッチンを仕事用に、ダイニングスペースには新たに家庭用のキッチンを作りました」

▲仕事用キッチンから、家庭用キッチンを見たところ。

仕事用にしたキッチンには、冷蔵庫がふたつ。そのうちのひとつは、吉田さんがひとり暮らしをはじめたときから長年愛用している『Miele(ミーレ)』のものです。

吉田さん:
「母から『家電はいいものを使いなさい』と言われて買ったんです。

うちにあるものの中で、冷蔵庫がいちばん高価かもしれませんが(笑)、母の言うとおり、いいものを買ってよかったです。

家電って何年も使い続けますし、家の中での存在感も大きいですよね。だから最初から、性能もデザインも気にいるものを選んだほうが、結局は満足できると思います」

流しとは別に設置した手洗い設備の上には、たくさんのクッキー型が収納されています。

吉田さん:
「前はボックスに収納していたのですが、探しづらくて、何かいい収納法はないかな、とずっと考えていました。

あるとき100円ショップでこのファイルを見つけて、これだ!と。まだ整理途中ではありますが、ファイルに入れて立てて収納したことで、目当てのクッキー型がすぐに見つかり、格段に使いやすくなりました」

細々としたキッチンツールの整理にも便利そうです。

 

引き出しや扉をカスタマイズできる、イケアのキッチン

▲ 窓がないため、少しでも広く見えるようにと置かれた鏡。

もとはダイニングスペースだった場所には、イケアのシステムキッチンを設置しました。木製の作業スペースがナチュラルな印象です。

吉田さん:
「いろいろ見て、イケアに決めました。サイズがちょうどよかったこともありますが、引き出しの数や扉の開き方などを細かく選べるところが使いやすくていいな、と思ったんです。

この家は賃貸なので、引っ越すときには元に戻す必要があります。設置しやすく、取り外しやすい組み立て式なのも、高ポイントでした」

作業用に置かれたテーブルもイケアのものです。掃除のときなどに動かしやすいよう、DIYで脚にキャスターを取り付けています。

吉田さん:
「もとは木材そのままだった天板に、白いペンキを塗りました。システムキッチンの作業スペースも、このテーブルもどちらも木だと、ナチュラルすぎてしまうと思ったので。

キャスターは、ひっくり返して電動ドリルを使って付けています」

イケアのものは、デザインがシンプルで価格帯も手に取りやすいので、こうしたアレンジが気軽にでき、汚れなどを気にせず使えるところがいいのだとか。

吉田さん:
「買い換えるとなるとコストがかかるし、探そうとすると気に入るものは意外と見つけづらいんですよね。

そういうときに、DIYというほど大げさなことではないんですが、あきらめずに何かできないか考えるのは、楽しいですよ」

 

リサイクルショップでもピンとくるものは見つかる

自宅用につくったというキッチンで、ことさら目を引いたのが、ホーロー製のガステーブルでした。

吉田さん:
「リンナイのガステーブルで、10年くらい前にリサイクルショップで見つけました。

古いので、ガスがつきづらくなっているのですが、買い替えたくても同じデザインのものがもうなくて」

見つけたときは埃をかぶっていたというこのガステーブル。なんでもないリサイクルショップで、そんな状態でも「かわいい」と思えることこそが、吉田さんらしさなのかもしれません。

そういうセンスは、どう培ってこられたのでしょうか。

吉田さん:
「昔からインテリアの雑誌や本を見ることが大好きだったんです。写真をたくさん見ているうちに、自分が好きなものがわかってきますので、真似できるところを真似したり。

あと、インテリアに関して、『完成』と思ったことがないんですよ。もっとよくなるはず、といつも思いながら、納得がいくまで好みのものを探したり、アレンジしたりしています」

 

ずっと使える家具を選ぶための基準

リビング・ダイニング・キッチンが仕事場にもなっている吉田さんにとって、隣室がくつろぎスペースになっています。

吉田さん:
「家のつくりとしては、本来は寝室なのでしょうが、リビング代わりに使っています。

ソファに座って、スツールの上にトレイを乗せて簡単な食事を済ませることも多いですね」

ソファは、吉田さんがひとり暮らしをはじめたころに買い求めたもので、茶色の布張りが気に入って、ずっと使っているそう。

吉田さん:
「ひとり暮らしの家には大きすぎましたが、どうしてもほしくて。でもこうしてずっと使っているので、やっぱり買ってよかったです。

結婚前は、家具屋さんが開けるんじゃないかというくらい、家具をたくさん持っていましたが、この家に越してきたときに、ずいぶん処分したんです。

安いから買っておこうとか、そこそこの気分で買ったものは、結局は捨てることになりました」

たくさん買ってたくさん処分もして、トライ&エラーを繰り返して、いまのインテリアにたどり着いた吉田さん。

第3話では、リビング代わりの部屋のつづきと、断捨離中のクローゼット収納の話、寝室のインテリアについて、お話を伺います。

(つづく)


もくじ

吉田菜々子さん

海外で目にしたケーキやパッケージの可愛さからお菓子をデザインすることに魅了され、シュガークラフトを学ぶ。2007年より活動を開始、雑誌やイベント等でシュガーケーキやアイシングクッキーなどの菓子制作に携わっている。現在アトリエを代々木上原に構え、シュガーアートを制作中。http://thumb-and-cakes.com

 

ライター 長谷川未緒

東京外国語大学卒。出版社勤務を経て、フリーランスに。おもに、暮らしまわりの雑誌、書籍のほか、児童書の編集・執筆を手がける。リトルプレス[UCAUCA]の編集も。ともに暮らす2匹の猫のおなかに、もふっと顔をうずめるのが好き。

【写真】滝沢育絵


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